●続・最近の野次馬
2010.03.26 Fri
▼コミックス・コードの話、まだ続いた(スマン):
スマン、まだコミックス・コードの話が続く。
山本弘氏(検索してみたら、ウチのブログで2度ほど話題にしてましたね)が自身のブログで、まあ、例の「非実在青少年」絡みのエントリを書いておりまして。
「非実在青少年」規制:目に見える形で反論を提示する [ 山本弘のSF秘密基地BLOG]
で。
その文中で、コミックス・コードについて触れられてた箇所があったよ、と。
けど、微妙に事実誤認がない? と思ったので、ちょいと突っ込んでみようという、そんなエントリ。
エントリの冒頭に、「トラックバック、転載はご自由に」と書いてあるので、遠慮なく該当箇所を引用してみる。
以下は前掲のブログのエントリより抜粋。
さらにアメリカのデータを見てみよう。
アメコミ・ファンならご存知だろうが、アメリカでは1949年ごろから反コミックス運動が高まった。当時のコミックスには、残酷なシーンやセクシャルなシーン(斧で切断された首、目をナイフでえぐられようとしている女性、ムチで打たれている女性、きわどい衣裳で踊る女性、下着姿で縛られた女性などなど)が多く、それが青少年に悪影響を与えると騒がれたのである。出版社やニューススタンドには「俗悪なコミックスを売るな」という抗議が殺到。一部の地方では、大量のコミックスが学校の校庭などに集められて燃やされた。
1954年、合衆国議会の少年非行対策小委員会は「コミックブックと非行」と題するレポートを発表、青少年に悪影響を与える可能性のある表現を規制するよう、コミックス出版界に勧告した。
これを受け、全米コミック雑誌協会は「あらゆるコミュニケーション・メディアの中でもっとも堅苦しい」と彼ら自身によって評されたコミックス・コードを制定した。1954年8月26日のことである。
(中略)
暴力表現や性的な表現にきびしい規制が設けられた結果、コミックス界全体から活力が失われた。そのため、読者の多くがコミックスを買わなくなった。コミックス・コード制定前、コミックス誌は650タイトルもあり、毎月1億5000万部も発行されていたのだが、ほんの数年で半減してしまった。多くの出版社がコミックスから撤退した。フィクション・ハウス社やベター社など、倒産した出版社もいくつもある。
その結果が上のグラフである。アメリカの指標犯罪(凶悪犯罪や窃盗犯)の件数をグラフにしたものだ。
まさに一目瞭然! コミックス・コードが施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!
Wikipediaの解説にもあるように、80年代頃からコミックス・コードを破る作品(『ウォッチメン』や『バットマン/キリング・ジョーク』など)が次々に出てきて、現在ではほとんどコードは形骸化している。
以上、引用終了。
※文中にある「上のグラフ」「Wikipediaの解説」は、まあ、オリジナルのエントリを見てください。
まず、ウチの前々回のエントリで、「コミックス・コード(だけ)によってコミック業界は壊滅的なダメージを負った」という認識はすげぇ極論じゃね?という結論に至ったオイラ的には、
暴力表現や性的な表現にきびしい規制が設けられた結果、コミックス界全体から活力が失われた。そのため、読者の多くがコミックスを買わなくなった。コミックス・コード制定前、コミックス誌は650タイトルもあり、毎月1億5000万部も発行されていたのだが、ほんの数年で半減してしまった。
って文章は「それはどうだろうか」と思うのですよ。
いや、コミックス業界から活力が失われたのは事実ですよ。でもそれは、TVが一般家庭にも普及したんでみんながコミックを読まなくなった、なんて影響もあるわけで、「活力が失われた」原因をコミックス・コードだけに還元するのは極論でしょう、と。
あと、
コミックス・コードが施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!
って一文ですが。
そのね、そもそも、「(コミックス・コードによって)コミックス界全体から活力が失われた」んなら、コミックブックという文化がアメリカの社会全体に与える影響ってのは、非常に小さくなってしまってるのでは? と、素朴に思うワケですよ。
故に、そんな影響力のないメディアが、アメリカの犯罪発生率に与える影響なんて、テンで小さくなってるのではと。
だから、
「コミックス・コードが施行されて以降、アメリカの犯罪発生率はむしろ増えている!」
とか言われましても、
「それはたまたま1954年の前後にアメリカの犯罪発生率が増えてるだけで、実はコミックス・コードは――ていうかコミックという文化自体は――、それらの発生率になんら影響を与えてないんじゃ?」
とか、素朴な疑問を抱くだけなのですが、どうでしょうか。
ていうか、
「( )が施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
って一文って、( )内に、1954年にアメリカの文化史で起きた重大な事項(できれば、犯罪に関係がありそうなもの)を適当に入れ込んでも成立すると思うですよ。
「世界初のトランジスタ・ラジオが発表された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
とか、
「ラジオドラマ版『ローンレンジャー』が最終回を迎えた54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
とか(いまいちですね、すみません)。
追記:
山本弘氏はその後のエントリの方で、今回引用しているエントリに関して追記やコメントへの返信等を行ってますが、そちらの方で、上記のコミックス・コードと犯罪発生率の下りに関して、伝えたかったことをまとめています。下記の引用文が、まぁ、一番わかりやすいですね。
重要なのは、「コミックス・コードができたにもかかわらず、犯罪は増加した」という事実です。すなわち、コミックスの影響よりはるかに大きな、犯罪増加の要因があったに違いないのです。
だから犯罪を減らすには、コミックスの表現を規制するより、まずその要因の方をどうにかしなきゃいかんだろ……という話なんです。[「目に見える形で反論を提示する」:Q&A]
と、いうことで、上の方で、オイラが
「それはたまたま1954年の前後にアメリカの犯罪発生率が増えてるだけで、実はコミックス・コードは――ていうかコミックという文化自体は――、それらの発生率になんら影響を与えてないんじゃ?」
とかツッコんでますが、このツッコミを山本弘氏にしても「うん、だからそう言ってる」って言われるだけですね、という。
オリジナルのテキストの方にその旨をもっときちんと明記してくれないかしら、というのは行間を読めないオイラのグチですね、はい。
追記終わり。
あと、
フィクション・ハウス社やベター社など、倒産した出版社もいくつもある。
の一文。
その、1950年代にコミック事業から手を引いた出版社は多いと思いますが(オイラの大好きなフォーセット・コミックスもその1つですね)、「倒産」にまで追い込まれた出版社って「いくつも」あったのか? と、思うのですが。
例としてあげられてるフィクション・ハウス社にしてもコミックス・コードその他の影響で、出版事業から手を引きはしましたが(この件に関しては、コミックス・コードが与えた影響はかなり大きいと思います)、「倒産」はしてないでしょう、と。
……他方、ベター社というコミック出版社のことは、寡聞にして知りません。すみません。
――Better Publications社ってのはありますが、同社はコミック出版社じゃなくてパルプ雑誌の出版社だし、そもそも1943年以降Standard Magazines社に社名を変更しているので、多分違う。
でもってラスト、
Wikipediaの解説にもあるように、80年代頃からコミックス・コードを破る作品(『ウォッチメン』や『バットマン/キリング・ジョーク』など)が次々に出てきて、現在ではほとんどコードは形骸化している。
とありますが、
文中で提示されているWikipediaのリンク先で、「80年代頃からコミックス・コードを破る作品」について全く解説されてないのは、いかがなものかと。
そもそもコミックス・コードを破る作品って、1970年代からじゃなかろうか(Wikipediaの解説にもその旨書かれてますが)。
以上。
一応、いいわけガマシクいっておくと、別にオイラは都条例に賛成する立場じゃないですから。
ただ、かつて「自国の文化の優秀さを誇るために、他国の文化を不当に貶めるのは許せない。特にその批判が、無知と偏見によるものである場合には」として、『日本型ヒーローが世界を救う!』を批判していた山本弘氏が、アメリカの文化に対して、ツッコまれるようなことを書いてるのはなんだかなぁ、と思っただけで。
スマン、まだコミックス・コードの話が続く。
山本弘氏(検索してみたら、ウチのブログで2度ほど話題にしてましたね)が自身のブログで、まあ、例の「非実在青少年」絡みのエントリを書いておりまして。
「非実在青少年」規制:目に見える形で反論を提示する [ 山本弘のSF秘密基地BLOG]
で。
その文中で、コミックス・コードについて触れられてた箇所があったよ、と。
けど、微妙に事実誤認がない? と思ったので、ちょいと突っ込んでみようという、そんなエントリ。
エントリの冒頭に、「トラックバック、転載はご自由に」と書いてあるので、遠慮なく該当箇所を引用してみる。
以下は前掲のブログのエントリより抜粋。
さらにアメリカのデータを見てみよう。
アメコミ・ファンならご存知だろうが、アメリカでは1949年ごろから反コミックス運動が高まった。当時のコミックスには、残酷なシーンやセクシャルなシーン(斧で切断された首、目をナイフでえぐられようとしている女性、ムチで打たれている女性、きわどい衣裳で踊る女性、下着姿で縛られた女性などなど)が多く、それが青少年に悪影響を与えると騒がれたのである。出版社やニューススタンドには「俗悪なコミックスを売るな」という抗議が殺到。一部の地方では、大量のコミックスが学校の校庭などに集められて燃やされた。
1954年、合衆国議会の少年非行対策小委員会は「コミックブックと非行」と題するレポートを発表、青少年に悪影響を与える可能性のある表現を規制するよう、コミックス出版界に勧告した。
これを受け、全米コミック雑誌協会は「あらゆるコミュニケーション・メディアの中でもっとも堅苦しい」と彼ら自身によって評されたコミックス・コードを制定した。1954年8月26日のことである。
(中略)
暴力表現や性的な表現にきびしい規制が設けられた結果、コミックス界全体から活力が失われた。そのため、読者の多くがコミックスを買わなくなった。コミックス・コード制定前、コミックス誌は650タイトルもあり、毎月1億5000万部も発行されていたのだが、ほんの数年で半減してしまった。多くの出版社がコミックスから撤退した。フィクション・ハウス社やベター社など、倒産した出版社もいくつもある。
その結果が上のグラフである。アメリカの指標犯罪(凶悪犯罪や窃盗犯)の件数をグラフにしたものだ。
まさに一目瞭然! コミックス・コードが施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!
Wikipediaの解説にもあるように、80年代頃からコミックス・コードを破る作品(『ウォッチメン』や『バットマン/キリング・ジョーク』など)が次々に出てきて、現在ではほとんどコードは形骸化している。
以上、引用終了。
※文中にある「上のグラフ」「Wikipediaの解説」は、まあ、オリジナルのエントリを見てください。
まず、ウチの前々回のエントリで、「コミックス・コード(だけ)によってコミック業界は壊滅的なダメージを負った」という認識はすげぇ極論じゃね?という結論に至ったオイラ的には、
暴力表現や性的な表現にきびしい規制が設けられた結果、コミックス界全体から活力が失われた。そのため、読者の多くがコミックスを買わなくなった。コミックス・コード制定前、コミックス誌は650タイトルもあり、毎月1億5000万部も発行されていたのだが、ほんの数年で半減してしまった。
って文章は「それはどうだろうか」と思うのですよ。
いや、コミックス業界から活力が失われたのは事実ですよ。でもそれは、TVが一般家庭にも普及したんでみんながコミックを読まなくなった、なんて影響もあるわけで、「活力が失われた」原因をコミックス・コードだけに還元するのは極論でしょう、と。
あと、
コミックス・コードが施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!
って一文ですが。
そのね、そもそも、「(コミックス・コードによって)コミックス界全体から活力が失われた」んなら、コミックブックという文化がアメリカの社会全体に与える影響ってのは、非常に小さくなってしまってるのでは? と、素朴に思うワケですよ。
故に、そんな影響力のないメディアが、アメリカの犯罪発生率に与える影響なんて、テンで小さくなってるのではと。
だから、
「コミックス・コードが施行されて以降、アメリカの犯罪発生率はむしろ増えている!」
とか言われましても、
「それはたまたま1954年の前後にアメリカの犯罪発生率が増えてるだけで、実はコミックス・コードは――ていうかコミックという文化自体は――、それらの発生率になんら影響を与えてないんじゃ?」
とか、素朴な疑問を抱くだけなのですが、どうでしょうか。
ていうか、
「( )が施行された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
って一文って、( )内に、1954年にアメリカの文化史で起きた重大な事項(できれば、犯罪に関係がありそうなもの)を適当に入れ込んでも成立すると思うですよ。
「世界初のトランジスタ・ラジオが発表された54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
とか、
「ラジオドラマ版『ローンレンジャー』が最終回を迎えた54年以降、アメリカの犯罪は減るどころか、急カーブを描いて上昇しており、1980年には3倍にもなっている!」
とか(いまいちですね、すみません)。
追記:
山本弘氏はその後のエントリの方で、今回引用しているエントリに関して追記やコメントへの返信等を行ってますが、そちらの方で、上記のコミックス・コードと犯罪発生率の下りに関して、伝えたかったことをまとめています。下記の引用文が、まぁ、一番わかりやすいですね。
重要なのは、「コミックス・コードができたにもかかわらず、犯罪は増加した」という事実です。すなわち、コミックスの影響よりはるかに大きな、犯罪増加の要因があったに違いないのです。
だから犯罪を減らすには、コミックスの表現を規制するより、まずその要因の方をどうにかしなきゃいかんだろ……という話なんです。[「目に見える形で反論を提示する」:Q&A]
と、いうことで、上の方で、オイラが
「それはたまたま1954年の前後にアメリカの犯罪発生率が増えてるだけで、実はコミックス・コードは――ていうかコミックという文化自体は――、それらの発生率になんら影響を与えてないんじゃ?」
とかツッコんでますが、このツッコミを山本弘氏にしても「うん、だからそう言ってる」って言われるだけですね、という。
オリジナルのテキストの方にその旨をもっときちんと明記してくれないかしら、というのは行間を読めないオイラのグチですね、はい。
追記終わり。
あと、
フィクション・ハウス社やベター社など、倒産した出版社もいくつもある。
の一文。
その、1950年代にコミック事業から手を引いた出版社は多いと思いますが(オイラの大好きなフォーセット・コミックスもその1つですね)、「倒産」にまで追い込まれた出版社って「いくつも」あったのか? と、思うのですが。
例としてあげられてるフィクション・ハウス社にしてもコミックス・コードその他の影響で、出版事業から手を引きはしましたが(この件に関しては、コミックス・コードが与えた影響はかなり大きいと思います)、「倒産」はしてないでしょう、と。
……他方、ベター社というコミック出版社のことは、寡聞にして知りません。すみません。
――Better Publications社ってのはありますが、同社はコミック出版社じゃなくてパルプ雑誌の出版社だし、そもそも1943年以降Standard Magazines社に社名を変更しているので、多分違う。
でもってラスト、
Wikipediaの解説にもあるように、80年代頃からコミックス・コードを破る作品(『ウォッチメン』や『バットマン/キリング・ジョーク』など)が次々に出てきて、現在ではほとんどコードは形骸化している。
とありますが、
文中で提示されているWikipediaのリンク先で、「80年代頃からコミックス・コードを破る作品」について全く解説されてないのは、いかがなものかと。
そもそもコミックス・コードを破る作品って、1970年代からじゃなかろうか(Wikipediaの解説にもその旨書かれてますが)。
以上。
一応、いいわけガマシクいっておくと、別にオイラは都条例に賛成する立場じゃないですから。
ただ、かつて「自国の文化の優秀さを誇るために、他国の文化を不当に貶めるのは許せない。特にその批判が、無知と偏見によるものである場合には」として、『日本型ヒーローが世界を救う!』を批判していた山本弘氏が、アメリカの文化に対して、ツッコまれるようなことを書いてるのはなんだかなぁ、と思っただけで。
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まあ、その辺ツッコむと
「じゃ、ウチの情報の正確さはどの程度まで信頼できるのか」
という自問自答に陥っちゃうわけですが。
とりあえず、「書きたいことありき」で、なおかつ使命感に駆られて
「すぐに書かないと!」みたいな立場におかれると、
資料の精度を確認せずに牽強付会気味になるんだろうな、と。
山本弘氏にせよ、、『日本型ヒーローが世界を救う!』にせよ。
上から目線になりますが、もって他山の石としたく思いますね。
*
読みました?
その事も書かないとフェアじゃないと思いますが。
*
初めまして。コメントありがとうございます。
コメントをいただきましてから、くだんのエントリを確認しました。
山本氏としては補足の方で
>「表現規制と犯罪の発生の間に因果関係がある」とか「規制すれば必ず犯罪が増える」とは主張しない。
と明言しているのに、うちのエントリの方で
>「コミックス・コードが施行されて以降、アメリカの犯罪発生率はむしろ増えている!」
のくだりで、山本氏があたかも「表現規制と犯罪の発生の間に因果関係がある」
かのように書きつつ、それに対してツッコミを入れているのがフェアではない、
といった認識でよろしいでしょうか。
よろしいようでしたら、後で、エントリの方にその旨追記しておきます。
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