貴JAの販売事業の基本スタンスは?
 JAとぴあ浜松は、20年度から「元気な農業、豊かな地域づくり」をテーマとした3か年計画で、農業振興と地域社会との関係を強化し、組合員・利用者に信頼され、地域社会の負託に応えるJAをめざしている。JAの販売事業は、生産者が手塩にかけ育てた農産物を、より有利により安定した販売を実現してこそ存在意義がある。そのためには品質・数量の安定確保をはじめ、ブランド化の推進、情報の収集や発信、PR活動など多岐にわたる努力が必要だ。
そして農家組合員が真に農協に期待し、望み、求めている事にしっかりと応えるための体制を構築するとともに、新規市場開拓や直販・契約販売等にも取り組み、積極的に販路拡大を進めている。

なぜ、直販事業か?
 当JAは平成7年、浜松地区3市5町の14JAが合併し誕生したが、日本農業の趨勢と同様に農業生産が減少し、農産物販売高は8年をピークに下降線をたどり、現在は当時の7割程度となっている。農業協同組合の使命は地域農業の維持発展にある。何とか生産量を増やしたい。そのためには農家が儲からなければならない。それには農家儲かるような販売先を開拓し、それに見合った生産を指導していく必要がある。指導と販売を両輪に農家の手取りを少しでも増やしていきたいと考えた。従来のJAの販売事業は、集出荷の段階にとどまり、真に「販売」しているとは言えなかったとの反省のもとに、自ら売り先を開拓し、自ら"売って"でることに、18年度から本格的に取り組み始めた。

"売ってでる"に至るまでは?
 前年の17年、全職員から人員を募集し「営農事業再興プロジェクト」を立ち上げ、指導、販売、購買各事業のあり方を検討、18年度から5か年の「営農事業再興基本計画」を策定した。その中で、販売事業は圧倒的シェアを占める市場販売は維持しながら、直販や契約取引でより実需者に接近した販売に力を入れていくことにした。そのため、営農販売課に営業専任の担当者1名を配置。とぴあ農産物の流通経路を調査しつつ、商品提案をもって実需者に出向く営業を開始した。消費地でのフェアも定期的に開催、実需者との交流や商談の機会が得られる場には積極的に参加しPRしてきた。
 こうした努力が徐々に実を結び、18年度約4600万円だった直販扱い高は19年度約1億円と倍増。222億円余(19年度)の販売事業実績の中ではまだ微々たる数字だが、20年度は2億円を計画、倍々で伸ばしていきたいと思っている。

生産現場への対応策は?
 直販の主体は、既存の取扱品目でなく、かつ地域に一定量あるがそれまでJA出荷でない品目から取り組んだ。これまで市場経由していたものを直販に移行するだけでは全体の販売量は増えない。そこで馬鈴薯の裏作で作られ個人が地方市場に出荷している湖西市を中心としたキャベツから始めた。営業の中で加工業者からの要請を受けたものだが、問題は量の確保にあった。担当部課長が生産者を個別訪問し理解を求める中で何とか取引に結びけたが、18年は天候に恵まれ生育もよく、前倒しでどんどん出荷されたため、後半の契約量に備えてJAの冷蔵庫をフル稼働させる事態も発生した。しかし、豊作で価格が暴落する中で一定の手取りを確保できた農家からは、JAの直販事業に対する評価が次第に高まっていった。
 メイン品目であるセルリー、早出しタマネギ、馬鈴薯はブランドとして確立され一定のシェアもあるが、近年生産量が顕著に落ちている。そこで19年度からは、これらを重点品目に掲げ建て直しに取り組んでいる。ねぎやチンゲンサイへの転換が多いセルリーは経営、栽培、販売等の問題を洗い出し主幹経営の確立を、兼業農家が多く高齢化が進むタマネギは、グループを育成しての大規模経営のモデルづくりを提案、茶園等からの転換による規模拡大が進む馬鈴薯は品質維持のため、選果場を立ち上げセンサーを導入し内部品質検査を徹底、品質の劣るものには加工・原料用の販路を開拓した。このように、指導・販売一体の中で、地域全体の農業を組み立て誘導していきたいと考えている。

今「商談会」への期待とこれからの直販事業は?
 「商談会」では業務加工用として取引いただきたいキャベツ、セロリー、大根、馬鈴薯等の品目を重点的にPRしたい。昨年は担当者が昼食の時間もとれないほど対応に忙しかったが、多くの実需者の関心は特色のある品目、単価、安定した数量、出荷期間にあった。当JAは野菜だけで150アイテム以上を扱っており、物量で押していける産地ではない。大規模産地の隙間をつきかつ品質で勝負してきたので、市場でもプライスリーダー的な存在となっている。当然、単価の安さが求められる加工業務用向けには、それでも農家手取りが確保できるような生産コスト削減策等を考えていくこともこれからの課題となろう。実需者からは、いわゆる"端境期もの"の要望も多い。当JAでは、各品目の出荷可能な時期をカレンダー化した『農産物 菜時記』を作成・配布すると共に、青果物の月別出荷量も品目別に提示、何がいつどれくらいの出荷が可能かを具体的に提案している。一方で、農家には、品目単位の取引だけでなく、農家経営を安定させるための栽培ローテーションや前後作までを含めた提案をしていくことも必要になってくるだろう。
 「商談会」では、実需者とのビジネスチャンスを探るとともに、同じような課題や悩みを持っている、各産地ブースの皆さんとも積極的に情報交換出来ることを期待している。

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2009年 2月25日号 第2849号
このひと
JAとぴあ浜松 代表理事理事長
鈴木 和俊 氏

 JAの販売事業は、事業の維持・拡大と農家組合員の手取り向上へ、多様な取引による販売力強化がより重要となっている。「JAグループ国産農畜産物商談会」は、これまで2回にわたり実需者や流通関係者とJA等に具体的な営業活動の場を提供し、取扱拡大や販路開拓に貢献してきた。第3回開催を期に、同商談会に出展を重ね着実に実績を伸ばしているJAとぴあ浜松の販売戦略を鈴木理事長に聞いた。