さて先週の続きです。4〜6まで書きたかったけど間に合わず、
自分の中で毎週UPしてこうと決めたので、4〜5までだけどUPします。



先週のお話
降魔師の家系として生まれた、(母・桜)、(姉・楓夏)、(妹・睦月)の
3人は祭りの帰り、妖怪となった元降魔師・葵の襲撃を受ける。
母・桜は2人を逃そうと1人集落に残り、なんとか2人は逃げる事に成功。
本家の屋敷に着いた2人は待機し、本家の討伐隊が葵を倒しに行くがほぼ全滅。
葵の襲撃は屋敷内にも及び、多数の死傷者がでる。(オババ含め)
屋敷から逃げ送れた楓夏は、睦月を押入れに入れ、自分を囮にし葵の目を向ける。しかし、囮も失敗した楓夏は捨て身の攻撃にでるが、あっさり見破られ負傷。諦めた楓夏は、自分の運命と睦月の命を引き換えに、葵に妖気を注入され妖怪化。葵のために働く妖怪となった楓夏は、葵と共に逃げた降魔師を追い続ける。



【4.ヘビオンナ(妃奈)


何よ…何なのよあの化け物は!?
あんなの土蜘蛛、いやそれ以上の強さじゃないの!?
とりあえず、私がどうこうできる相手じゃない!

さっき斬られていった仲間の光景が、頭の中で繰り返される。
首がなくなる者、胴体を横に真っ二つにされる者、心臓を一突きされる者…
私が頼りにしていた先輩も、あっという間だった…
嫌だ…あんな死に方、絶対嫌だ!

仲間が犠牲になっていく中、私は何とか裏の方から屋敷を抜け出す事ができた。
そして今、村とは逆方向の山へと登っている。
とにかくアイツがいる屋敷から離れたかった。

ここまで来れば、ハァ…ハァ…
あれから10分は走り続けただろうか、ここからでも屋敷の方は見える。
屋敷の方は目で見える変化は起きておらず、妖気も感じられない。
それもその筈、私はそれほど霊感が強い方ではない。
ただ降魔師の真似事をしてると言ってもいいぐらいだ。
だけど屋敷でアイツを見た時は、いくら私でもあの恐ろしく禍々しい妖気を感じる事が出来た。

アイツが……葵…
噂では分家の当主の娘で、次期当主になるぐらいの強さを持ってたらしい。
そして私は、ただの村娘。たまたま運がいいだけの…

それは10年前のこと、まだ私が6才の頃ことである。
私の故郷は土砂崩れにあい、たまたま隣の村に行っていた私だけ助かった…
親も家も、親しかった友達も、みんな失った私は、家があったであろう場所で悲しみに暮れていた。
行く宛てもない私は、フラフラと何日か歩き彷徨ってたところ、降魔師の人達に拾われたのだ。
それからは降魔師の人達に育てられ、なんとなく降魔師の道を進み、その後方支援としてやってきた。
でもそれも今日で終わり…
仲間はほとんどやられ、逃げた人達もどうなったか…

とりあえず疲れた体を休めようと、どこか休む所を探す。
いつも山菜取りで見かける山小屋を見つけた私は、そーっと隙間から中を覗き込む。

人の気配はない。
誰もいないと分かった私は、入り口の戸を開けて中へと入っていく。
中は人がいた形跡があったが、きっとどこかの村人か旅人が使ったぐらいだろう。
何もない小屋だが、とりあえず横になる。
そして亡くなった仲間達の事を思い浮かべながら、私は深い眠りについた。

「う……うーん……」

背中が痛い…
そうか、ここで寝ちゃって…
とりあえず起きた私は、辺りを見回す。
外はまだ暗く、それほど寝てない事だけは分かった。

「起きたの?」

「ひっ!?」
突然、すぐ隣からする声に私は飛び跳ねた。
最初見回した時は、暗すぎて分からなかったけどすぐ隣に誰かいる!?
「だ、誰!?」
「落ち着いて妃奈ちゃん。私よ、楓夏だよ。」
「え…ふうかさん?楓夏さんなの?」
「そうだよ。妃奈ちゃんも無事でよかったー。」
「うん……よ、良かった…ほんと。う……うぅ…」

涙がこみ上げてくる…
仲間にもう一度会えた事に、私は率直に嬉しかった。
それも、仲が良かった楓夏さんに会えるなんて。
「ねえ、喉乾いない?私、飲み物持ってきてるんだ。」
楓夏さんが手渡そうとしているのは、竹筒の水筒。
確かに喉が渇いていた私は、泣きながらそれを受け取った。
「ううぅ……ありがとう…」
そして私は、それを口に運ぶと…

--!?

「うえっ!!げほっげほっ……」
水じゃ…ない!?
それにこの鉄のような味…
私はこの味を知っていた。
「何これ……まさか血!?」
「あーあ、何で吐いちゃうのかなー…、とっても美味しいのに。」
「楓夏さん、一体これは…」
「人の血だよ?」
「ひっ!」
私は持っていた竹筒を投げ捨てた。
「投げる事ないじゃない。
 本家で死んじゃってた人達の血だから大丈夫だよ。」
「どうしてこんな!?」
「美味しいからに決まってるでしょ。」
楓夏さんの異常な言動に混乱する私、だが私はある事に気が付いた。
「楓夏さん……あの、睦月ちゃんは?」
いつも一緒に連れている妹の睦月ちゃんがいない…
「睦月?ああ、そんなのいたね。あんなうるさい妹、食べちゃったよ。」
「…え?」
「ふふ……嘘だよ。どっかに隠れてるでしょ。
 でも、もういいの。私が用があるのは妃奈ちゃん、あなたなんだから。」

私の目の前にスッと立つ楓夏さん。
暗くて分からなかった楓夏さんの顔が、スキマから零れる月明かりで露になる。
その顔は、紛れもなく楓夏さん。しかし、明らかに人でない部分がその顔にはあった。
額から伸びる2本の角、2つの黄色く輝いた猫のような目、そして生気のない青肌…
それはさっき見た、あの葵と一緒の姿…
「楓夏さん…どうして、そんな…」
私の反応を見てか、彼女が怪しい笑みを作る。
「フフフ…その表情、カワイイ♪
 何で私が葵様のような姿になってるのかって顔してるね。
 それは、葵様に力をいただいたからだよ。ちっぽけで何も守れない自分にね。」

今になって、楓夏さんから妖気を感じる…
口調も少し変わったような…?
そしてあの葵と同じ禍々しい妖気を垂れ流しており、本当に妖怪になっていたことを理解した。
「ちょっと、そんなに怖がらないで。」
本能的に危機を感じた私は、体を身構えていた。
「楓夏さん……1つ聞きたい事があります。」
「うん?」
「……もう、元に戻れないのですか?」
「人間に?うーん、戻れる方法なんてあるのかな…
 でも、人間に戻る気なんてないからどうでもいいけどね。
 私の心配なんかより、自分の心配したら?
「どういうことですか!?」
「それはもちろん…妃奈ちゃんも私と同じになるのよ。」

ガシッ

「ひゃっ!」
突然、楓夏さんの方向から伸びる両手。
それは私の肩を掴み、一気に楓夏さんの方へと引っ張る。
咄嗟に目を瞑った私は、体を強張らせるしかなかった。
ゆっくり目を開けると、私の顔と10cmもない位置に楓夏さんの顔があり、
そして、彼女の顔がゆっくりと私の顔に近づいて…

チュッ

「んんんっ!?」
私の唇にやわらかいモノが当たる。
それは紛れもなく楓夏さんの唇…
楓夏さんの唇は少し濡れており、それを自分の唇で感じ取れる。
いきなりの口付けに驚いた私だが…
チュッ
「んっ…?」
その後も…
チューッ
「ん…」
楓夏さんの口付けを何度も受け、私の強張った体から力が抜けていく。
抵抗しようと思えばできるのだが…
チュウウッ
「んふうっ……」
その口付けのたびに、何か温かいモノが私の喉を通っていき…
私の理性を削っていく。
チュウウウウウウ…♪
「んっ……んんんっ♪」
私は次第にその口付けと温かいモノを、自分から受け入れようとしていた。
「んっ…ぷっあぁ……な、なんですか…いきなりっ…」
「ふぅ…私の口付けはどうだった♪」
「い、いいわけないじゃありまっ……え…?」

ジワァ…

突然、私の体の奥から違和感が。
そしてそれが全身に広がっていき大きくなっていくのが分かる。
「…ぁぁあああっ!?な、何よこれぇ…!?」
「ふふふ…それは私が飲ませた唾液の効果だよ♪
 体が火照ってきたんでしょ。
 妃奈ちゃんの体が固いからほぐしてあげたの。」
体の火照りはどんどん大きくなり、全身から汗が吹き出てくる。
股関も湿ってきて、いけない気持ちになっていってるのが自分でも分かった。
「そろそろ妃奈ちゃんの生まれたまた姿見たいなー、えいっ♪」
「きゃあっ!」
楓夏さんが軽い口調で、私の袴を破いていく。
それはまるで無邪気な子供が遊んでいるかのようであった。
そして上着の白衣だけとなった私を…
「ここはどうなってるのかな。」
クチュッ
「あぁん…」
「凄い…もうこんなに濡れて…」
突然股関を触れられ、甘い声が出てしまう。
いやぁ…私なんて声だして…
その反応を見てか、クチュクチュと私のアソコを弄り続ける楓夏さん。
「や、やめて…楓夏さん…ううっ…・・・」
「何言ってるの?今からじゃない。見てぇー、私の触手。」
快感に流されそうになる意識で下に目をやると、楓夏さんの股関から、
ズビュルッ
子供の腕の大きさぐらいの触手が生えてきた。
「これをねーどうすると思う?」
ま、まさか…
「い、いやぁああ……」
「そう、妃奈ちゃんが思ってる通り…」

ヌチュッ

「ヒッ…!」
「こうするの!」

ズブッ

「イヤァァーーッ!」
膣に滑り込んでいく楓夏さんの触手…
今まで何モノも侵入を許した事のないその場所から、激痛が襲い掛かる。
「やだっ痛いっ!!抜いてぇ!!」
ズプッ ズプッ
しかし触手の動きは止まらず、引いて押し引いては押して、さらに奥へと進んでいく。
「妃奈ちゃん処女だったんだねー。
 妃奈ちゃんの中で出てる血、とっても美味しい♪」
「お願いっ!抜いてえええぇ……、痛っ!……あれぇ…?」

え?痛みが消えた…?
いきなり、あれほど痛かった箇所からは激痛は消え、膣には何か異物が入ってるだけの感覚となる。
しかし、中ではまだ触手が奥へ奥へと進んでおり、
ジュポッ ジュポッ
だんだんとお腹周りに、快感だけが広がり始めた。
「んっ…あん……あっ…あっ・・・」
触手が突きあげる度に、自然と甘い声が漏れる私。
頭の中は快楽に染められ、なすがままとなっていた。
「ほーら、もう変わってきた。」

…へっ?

私は最初、何が変わったのか分からなかった。
「妃奈ちゃんの足。」
言われて足を見ると…
「え…?」
私の足は…
「あ、あぁ…いやぁあああああああああ!!」
つま先からふとももまで、蛇肌のような緑色の鱗に覆われていたのだ。
「妃奈ちゃんは蛇なんだね。」
「何これぇ!?何でこんな足に!?」
惚けていた思考が、一気にパニックになる。

ズリュッ ズッ

「あひぃっ!……んっ!」
しかしそんな私を尻目に、楓夏さんは触手を動かし続ける。
「ここも変化してきたよ。」
楓夏さんが私の口に指を入れ、私の歯を触り始める。
すると今まで気づかなかったが、上顎の犬歯が異常に伸びており、もはや獣のような牙となっているのが分かった。
「私の妖気がたっぷり溜まってたからねー。
 入れ続ければ、妃奈ちゃんの体も妖怪化して当然だよ。」
「や…やらぁ…やめて…っ、抜いてよぉ……」
体が変わっていく恐怖と、快楽によって押し流されようとしている理性がせめぎ合う。
妖怪になるなんて嫌だよぉ…
しかし変化はこれだけではなかった。

あ…前が…
急に視野がぼんやりしてくる感覚。
それは私の目が、退化しているようだった。
そして周りの音も、さっきより聞こえにくくなり、
感覚が鈍くなってしまった私は、もう人間ではないことを痛感した。
でも、それさえも押し流そうとしていく快楽が私を襲う。

ヌチュッ ヌチッ
「んくっ…あっ、あっ、うぅん、イヤッ」
それからはまた、一層激しくなる触手の動き。
とうに子宮に達してことなんて分からなかったが、
私の口からは涎がこぼれ落ち、もう限界だった…

「妃奈ちゃん、我慢しなくてもいいんだよ。
 一緒にイこぉ♪」
「んむっ…」
楓夏さんがトドメとばかりに、私に口付けをしていく。
それも口内に自分の舌を入れ、私の舌に絡ませてくるのだ。
「んんっ…ん……んく……んん・・・」

あぁ…もういいや…

私は我慢できず、楓夏さんのベロチューを受け入れていく。
ゾクゾク…
舌と舌を絡ませていく私は、いけない事だと分かってても背得心によってより興奮してしまう。
そして舌にも変化が来たのか、絡ませるたびに細く細く、
そしてより長くなっていき、先っぽが2つに分かれていくのが分かった。
それでもなお、私達は舌を絡ませあっていく。

足が寂しい…
急にそんな感覚に囚われた私は、右足と左足を擦り合わしていく。
擦り合わすたびに、ふとももや足の甲が温かくなっていき、とても気分がいい。

ズッ ズズズッ…

突然触手が膨らんでいき、私の膣内を押し広げていく。
それが何を意味するか、私は何となく分かった。
そして私の子宮を突いていた、触手の先から…
プシュッ…!
ビュクビュクッ…

んはあああああああああああああああ♪

熱い液体が迸り、私の子宮壁にビチャビチャと当たっているのが分かる。
その快感で離した口からは、銀色の糸を引いて楓夏さんの口と繋がっていた。
あぁあああん…気持ちいぃいいいい…♪
ビュルルル…
未だに触手から出続けるその液体に身をよがらせ、より一層足を擦り合わしていく。

あはぁああああ♪

そして足と足がくっ付き始めている事も分からず、自分の足同士を締め付けていると、
ギリギリ…ギリ……ピタッ…
とうとう擦り合わす事もできなくなった私の足は、一本の長い緑色の尾になっていた。

足…が…蛇になっちゃった……
ああぁ…これいい…♪

さっきまで蛇肌で嫌悪していた足だったが、今は1つになってみると、
元から蛇の尾であったかのように愛しい物に見えた。
もちろん感覚もあり、自由に動かす事もできる。
そうか…これで人間を締め上げるんだ…
そして動かなくなった相手の血をすする…うふふふ…
私はニヤニヤとこれからする行動を浮かべ、口から舌をシューっと出し入れした。

--完全に妖怪になったようね。どう、気分は?

突然、頭の中で響く声。
声は楓夏さんではなく、近くからする誰かの声ようだ。
いつからそこにいたのか分からないが、私はその声が誰かすぐに分かった。
ニヤッ
そして私は、その声のした方向に満面の笑みでそれに答える。

monster054b
--シュー…最高ですぅ♪

--立派な蛇女になったわね。
 妖力は楓夏ほどではないけど、貴女から強い妖気を感じるわ。

「あ、終わりました。葵様。」
「そのようね。」

そう、楓夏さんが呼ぶそのお方は葵様。
私とは比べものにならない妖力を持っており、楓夏さんを妖怪にしてくださったお方。
身も心も妖怪になってしまった私は、すでに葵様と上下関係ができている事に何の疑問も持たなかった。

ジュルン…

「あ…」
私のアソコから抜かれていく触手。
私の膣内は急に寂しくなるのを感じると、
楓夏さんのアソコに納まっていく触手をものほしげに見ていた。

--蛇女、貴女は元降魔師だったから変えてあげたのよ。
 今からやる事は分かってると思うけど、まず都に行って人間に成りすましなさい。
 そして都の人間達を密かに妖怪に変えるの。もちろん食べてもいいわ。
 きっと異変に気づいた人間が、外から降魔師のような同業者を呼ぶかもしれないけど、
 それをおびき出すのがあなたの仕事。
 戦って勝てるならそいつらも妖怪にしちゃいなさい。

葵様のご命令だ。
私はそのご命令に深く頭に刻みつけ、そして返事をした。

--お任せください、葵様。
 この蛇女、人間の都を蛇の都にしてみせましょう。ンフフ……

さっそく行動に移そうと思った私だが、その前にしておきたい事が1つあった。

--あの、葵様…
--どうしたの?
--さきほど楓夏さんにしていただいた行為が……あまりにも気持ちよくて…
--あー、貴女も変わったばっかしで疼いてるのね。
 いいわよ。今度は私がいれてあげましょう。
--あぁ…ありがとう御座います♪

そして私は、本能のままに葵様と絡み合っていく。
途中から楓夏さんも加わり、私達は夜が明けるまでその小屋で交じり合った。




【5.カナシイキオク(葵・楓夏)


私と楓夏は、逃げた降魔師を追い、あの本家の襲撃から数日が経っていた。
うっすらと感じ取れる降魔師の霊力をあてに、山道を歩き続けている。
そして人気のない神社を見つけた私達は、少し休憩する事にした。
なんとなくだろう、楓夏がこんなことを聞いてくる。
「そういえば、何で降魔師の奴らを狙っているんです?(私も元降魔師だけど。)
 ただ霊力を多く持ってる人間を狙ってる訳じゃないですよね?
 霊力を多く持ってる人間は美味しいですけど。」
そうか、楓夏は知らないんだ。
「まだ楓夏には話してなかったわね。
 教えてあげるから貴女のおでこ、私のおでこにくっつけなさい。」
私のおでこに自分のおでこをつけた楓夏に、私の過去の記憶を送り込んでいく。
私が分家だった時の忌々しい記憶に、元本家の彼女は一体どんな反応するのか。
ただそれだけに興味があった。

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私の目の前が真っ白になっていく…
気づいた私は、どこかの屋敷の庭にいた。
2人の女の子が、元気一杯に庭ではしゃいでいる。
あれは葵様だろうか?もう1人は誰だろう?
そして縁側には、葵様の両親であろう人達が、笑顔で見つめている。
それは周りから見れば、とても幸せそうな家族であった。

時間と場所は変わり、部屋に1人の女性が布団の中で寝ている。
顔には白い布がかかっており、お腹の上には刀が置いてあった。
そのすぐそばで2人の女の子が泣いている。
--うわああああん!おかああさあああん!!
--ううぅ……おかあさん…
1人は小さい頃の葵様、もう1人の子は分からないけど葵様に似ていた。
あの布団で寝ているのはきっと葵様のお母様で、亡くなったばかりだと分かった…

また時間と場所は変わり、部屋の中で誰かと大きくなった葵様が言い争っている。

--何で私なの!?
--お前しかいないからだ。

--私じゃなくても双葉がいるじゃない!
--双葉の力だけでは、この先出てくる難敵に返り討ちにあうかもしれん。

--なら他の人が!
--駄々をこねるな。お前達は弥生の血を受け継いでいる。
 魔の力を使うには、それに適合した者のみなのはお前も知っておろう。
 弥生の一族は適合し続け、弥生の子供であるお前達も適合するはずだ。
 他の者ではただ魔に飲まれ、妖怪に変わるだろう。
 お前もそろそろ分家の次期当主として……

ダッ

その男の人の話の途中で、部屋を出て行く葵様。

--私は少し本家に行って来る。

男の人も、部屋を出て行く。この方はきっと葵様のお父様…
しかし魔の力って何だろう?

そしてまた場面が変わり、葵様がさっきの部屋を、隣の部屋の隙間から覗いている。
さっきの部屋には葵様のお父様と、何人かの降魔師の出で立ちをした人達が集まっており、何かを話していた。

--桐(きり)殿、西の都でまた妖怪が出没しております。そろそろ葵殿に魔を。
--そうだな。

--葵殿にはもう話したのですか?
--ああ。だがまだ葵は拒み続けている。もしあの状態で魔を入れると、魔に取り込まれるかもしれん。

--しかし我らには、魔の力が必要です。弥生様が亡くなった今、双葉殿だけでは…
--分かっておる。

--まさか弥生様があんなに早くお亡くなりになるとは…
--弥生は魔の力を使いすぎた…
 本人も分かっておったが、土蜘蛛との戦いで全力を出さねばならなかったのだ。
 土蜘蛛は封印できたものの、魔に取り込まれそうになった弥生は、私に殺してと頼んできた…
 そして私は弥生を殺めた…人の姿まま死なせてやることが彼女の救いだったのかもしれん。

--葵殿と双葉殿にそのことは?
--言っていない。2人には事故死ということにしておる。
 もし知ってしまったら、双葉は混乱し、葵は私を憎むだろう。
 そうなっては魔を無理やり入れても、すぐに魔に取り込まれるだけだ。
 最初は弥生も嫌がっておった。でも誰かがやらねばならんのだ。本家だけには任せておけんからな。

こんなの…私は知らない……
私が聞いた分家は、本家と同じ降魔師一族であることぐらい…
オババや両親からも、聞いた事のない話だった。
しかし魔とはいったいは何なの?その魔を取り入れてしまうと妖怪になるというの?
そうか、葵様が妖怪のお姿になった理由って…

「そんな…お母さんは……う、ううぅ……」

葵様は泣きながら、その場から立ち去っていく。
葵様… 
私は葵様を追うと、葵様はある部屋へと入っていく。
その部屋には、布団にうつ伏せの状態で、か細い泣き声をあげている葵様が…
近くには葵様に似たさっきの少女がいた。
「葵ちゃん、一体どうしたの?」
「うぅ……ふた…ねえ…」
この少女は、葵様の姉だったのね。
「何かあったの?」
「ふた姉はさ……やっぱり何でもない…」
「何それ、気になるじゃない。」
「なんでもない…何でもないよ!」
「ええ!?何で急に怒るの?心配してあげたのに…」
その後も、葵様は双葉様に何も話さなかった。

葵様…1人で抱え込んで…

そしてまた場面が移り、どこかの倉庫内なのか、真剣な顔をした葵様と葵様のお父様が2人で会話している。

--お願いします。
--いいんだな。

--はい。
--では、魔を入れる儀式を始める。

--アギダ・メダ・メガ・メダ・アンブリダ…

これは私を変えていただく前に、葵様が唱えた呪文…
葵様は目を瞑り正座でのまま動かず、後ろではお父様が印を結びながら呪文を続ける。

--……アギダ・メダ・メガ・メダ。」

呪文が終わると、どこから出てきたのか葵様の周りに紫色の煙が覆い始める。
そしてその煙が葵様の体へと入っていった。

--うぐぅっ!……う、ううう…

突然、葵様が苦悶の表情を浮かべる。
両手で頭を抑えだし、体はガタガタと震えていた。

--受け入れてはならんっ!我慢するんだ。
 抵抗して、魔の力だけを自分の物にしろ!
 心まで受け入れてしまうと、お前は妖怪になってしまうぞ!

--うううぅ……ああぁあああ……

それから数十秒経ち、苦しそうな声を上げていた葵様に変化が。

--ああああああっ!………ハァ…ハァ…
--おおっ!やったか!

四つん這いで、汗びっしょりの葵様は、大きく呼吸をしている。
もちろん人間の姿のままで、儀式が成功したようだ。
喜びの表情を隠せないお父様は、葵様に近づいていこうとする。
そして肩に手を触れたその時だった。

ザシュッ

--ぐほっ!

葵様のお父さんの背中から、青肌の手が貫いていた。
そしてその右手は、葵様のモノ…
葵様はニヤリと口の端を上げ、そして顔や胸が青肌へと変わっていく。
閉じていた目をゆっくりと開くと、目はあの猫のような人外の目に変わっていた。

--ど、どうしで…
--フフ……アンタがお母さんを殺した事知ってたよ。
 そして私は、降魔師のそんな運命を背負う気もない。
 だからいっその事、妖怪になってしまえばいいんじゃないかって思ったの。
 案の定、正解だったわ。心も体もとってもいい気分♪アンタには感謝しないとね。

--そ、それは……ちが…
--もういいから、とっとと死んで…

一気にお父様の胸から手を引き抜く葵様…
そして倒れて絶命していくお父様に、話しを始めた。

--お母さんが人々を守りたいという気持ちは嫌ってほど分かる…
 でも私はそんな母が嫌いだった。
 他人を守るために自分を犠牲にして、私達が心配しているのにまたを無茶する…
 挙句の果ては、妖怪になりそうになってアンタに殺してと頼んだ…
 そして母をあんな運命にした降魔師一族も、そしてアンタも私は許せない…
 私だって普通に暮らして、普通の女の子になりたい…
 でも周りがそれを許さないなら…私は…

葵様は泣いた…
私も自然と涙が流れてくる…
これが降魔師を狙う理由だったのですね。
確かに降魔師という存在は、人々を妖怪から守るのが役目。
降魔の一族として生まれてことに、恨んだことはないけど、
普通の女の子として暮らしたいと思った事は、私だってある。そこは私も共感できました。
でも葵様、それは違います…
お母様が守りたかった者は、葵様だって含まれるはず。
それにお父様も、本当に人々を守りたかったのでしょう…
お母様に魔を入れる事、そしてお母様を殺めたお父様はきっと誰より苦しかったと思います…
でもこれはもう過ぎた事ですね…
今は私は妖怪で、葵様のためだけの存在。
どんな過去であろうと、どんな思いでも私は葵様についていきます。

それから場面は変わり、妖怪化した葵様は屋敷にいた分家の奴らを皆殺しにしていった。
その中に、双葉様がいなかった事が気がかりだけど。
そしてそこで世界が白くなっていく。

気づいた私の目の前には、泣いていた葵様が…
「葵様…」
私は両手で葵様を抱き寄せた。
「私はずっと葵様の味方です。」
「ううぅ……楓夏…ありがとう…」

私と葵様は、しばらく体を抱き合ったまま、お互いに泣いた。










画像はアルラウネの妖艶な花弁からです。
今回は、エロを濃くしてみました。
やっぱり妖怪が2人だけだと話が続かないので、1人降魔師の生き残りから追加。
もう2人ぐらい増やしたいけど・・・