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岐阜・御嵩町長襲撃:時効成立 表情硬く「名乗り出て」

 岐阜県御嵩(みたけ)町で96年、当時の柳川喜郎町長(78)が襲われた殺人未遂事件は30日午前0時、15年の公訴時効が成立した。県警は、町で計画されていた産業廃棄物処理施設建設に柳川さんが反対したことが背景とみて捜査員延べ約15万5000人を投入したが、解決できなかった。

 時効成立を受け、名古屋市内で記者会見した柳川さんは「ある日全てがチャラになってしまうというのは被害者としては、しっくりこない」と時効制度に疑問を投げかけ、「犯人は今日、犯人でなくなった。ぜひ名乗り出てほしい」と硬い表情で訴えた。

 事件は96年10月30日午後6時15分ごろ、町内の当時の自宅マンション4階で、柳川さんが帰宅したところを2人組の男に棒状のもので数十回殴られ、頭を陥没骨折するなど一時、意識不明の重体となった。

 95年に町長に就任した柳川さんは、寿和(としわ)工業(同県可児市)の産廃施設計画地が名古屋市などの水源の木曽川の取水口に近いことなどから計画凍結を表明。その後、役場に脅迫電話がかかり、建設反対派住民にも嫌がらせが相次いでいた。襲撃の2カ月前には町長宅の電話が盗聴される事件も発覚していた。

 県警は、刑事部と警備部による襲撃事件の合同捜査本部を設置し、背景を産廃施設問題とみて捜査。盗聴事件で柳川さんの失脚を狙った2グループを逮捕するなど34人を検挙したが、襲撃事件とのつながりは解明できなかった。今月17日、容疑者不詳で捜査書類を岐阜地検に送った。

 産廃施設計画は97年、住民投票で8割が反対し、08年に白紙撤回された。柳川さんは3期12年を務め07年に退任した。【三上剛輝、石山絵歩】

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 ◇御嵩町長襲撃事件の経過

95年 2月 町が産廃処理施設計画で業者と協定

    4月 柳川喜郎さんが町長選で初当選

    9月 柳川町長が県に計画凍結要望

96年 4月 町長宅の盗聴始まる。9月発覚

   10月 町長が自宅で襲撃される

97年 6月 住民投票で産廃施設に8割反対

    7月 盗聴容疑で不動産ブローカー逮捕

98年 6月 盗聴容疑で右翼団体幹部逮捕

07年 4月 柳川町長が4期目立候補せず退任

08年 3月 産廃施設計画撤回が正式決定

10年 7月 業者が計画許可申請取り下げ

11年 3月 業者が計画地の県への寄付発表

   10月 町長襲撃事件の公訴時効

毎日新聞 2011年10月30日 東京朝刊

 

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