立ち読み週刊朝日

AKB48所属プロ社長の周辺取材中 元ヤクザが本誌記者に「口止め」

電話の主は"元"ヤクザ

週刊朝日2011年××月××日号配信

 10月12日午後2時49分。記者の携帯電話が鳴った。電話に出ると、男が慇懃無礼にこう切り出した。「K新聞のIと言います。なぜ、また弁護士に電話したんですか。もう取材はやめてくれませんかね」。見知らぬ男から、取材をやめるよう突然の電話──。事の発端を説明しよう。


10月12日午後2時49分。記者の携帯電話が鳴った。電話に出ると、男が慇懃無礼にこう切り出した。

「K新聞のIと言います。なぜ、また弁護士に電話したんですか。もう取材はやめてくれませんかね」

 見知らぬ男から、取材をやめるよう突然の電話──。事の発端を説明しよう。

 本誌は、国民的アイドル「AKB48」の一部メンバーが所属し、AKB48関連商品の企画料や版権料で収益を得る「オフィスフォーティエイト」の芝幸太郎社長(38)を巡る「ある情報」を追っていた。芝氏はAKB48結成時に秋元康氏(55)らとともに中心的な役割を果たし、"創始者"の一人に位置づけられる存在。その情報とは、週刊文春7月7日号が報じた一件(芝氏は「事実無根」と否定)と関係の深い新たな情報で、同誌に証言したA氏にも本誌は取材をしていた。

 本誌は10月6日、取材内容を確認するため、芝氏の代理人弁護士に質問状を送り、12日までの回答を求めた。期限当日の12日午後1時27分、弁護士事務所に電話して回答を催促した。見知らぬ男から電話がかかってきたのは、それから1時間22分後のこと。それが冒頭の「I氏からの口止め電話」だ。

 取材を進めると、I氏は40代で、9月上旬まで住吉会系3次団体に幹事長補佐として在籍し、拳銃所持の疑いで逮捕されたことがあることもわかった。

 K新聞編集長が説明する。

「オレがIを警視庁に連れてって暴力団からの離脱を届け出、組にも電話を入れさせた。ウチはアングラ系業界紙で、世間ではゴロツキ新聞との評判もあるが、兜町ではそれなりに影響力もある。ウチも暴力団の情報や記事がほしいから、Iには記者としてマジメに働いてもらっているんだよ」

 I氏は面会こそ拒んだが、後日、電話で自身が元ヤクザだと認めたうえで、経緯をこう説明した。

「芝ちゃんもAも昔からの仲間。今回は『ある人』から依頼されて仲裁に入った。その人の名は言えない。電話の前日(10月11日)にAと会い、お互い友達なんだからもうやめようと説得した。Aが記者に話した内容に誤りもあるようで、Aから記者に『取材はやめて』と電話を入れさせた。なのに翌日、記者がまだ弁護士事務所に取材していると情報が入ったんで、電話をしたわけです」

 芝氏の関係者によると、I氏が口にした「ある人」とは、芝氏の十数年前からの知り合いで、芝氏が信頼を置く人物だという。I氏は芝氏との関係を「昔からの仲間」と言ったが、芝氏は「I氏とは交際していない」と周囲に語っているらしい。

 I氏はその後も、取材をやめるよう求めてきた。

「情報提供者のAが取材をやめて、と言っているのに、まだ何か取材を続けるんですか。Aの話が週刊誌に載るようなら、私はAを容赦しませんよ」

 さらにI氏は10月17日夜、弁護士を連れてA氏と会い、六本木の喫茶店で「念書」を作成させた。編集部に郵送された「念書」には、A氏から本誌記者あてに〈取材に答えた内容には誤りがある〉〈掲載されて裁判になっても協力しない〉と書かれてあった。

 経緯は不明だが、国民的アイドルをマネジメントする会社の社長を取材中、約1カ月前まで現役の組員だった男性から「取材をやめろ」と電話を受けたのは間違いない。暴力団関係者を使って、取材に圧力をかけるようなことがあるのだろうか。

 芝氏の弁護士は本誌に、
「芝氏はI氏の連絡先も知らない。従って、芝氏がI氏に貴殿(本誌記者のこと)へ(取材をやめるよう)電話するよう依頼した事実はまったくございません」
 と回答。芝氏も本誌の取材に応じ、こう話した。

「今回の件は寝耳に水で、私が誰かに何らかの依頼をした事実はまったくございません。このような結果になったことには驚きを隠せず、極めて残念です。今回の件のことなどを警察にも相談してきました。しかし、私のあずかり知らなかったこととはいえ、結果としては世間をお騒がせしてしまったことについては、真摯に反省しています。今後はさらに身を引き締めて参りたいと思っています」

 いろんな思惑を持った人間が人気者に群がるのは世の常。くれぐれもAKB48の看板に傷がつきませぬように。 (本誌取材班)