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日本人が知らない日本外交の真実=「やられた……中国は包囲された」と中国官制メディア

2011年10月27日

我らが日本国の「南進戦略」は今や、中国を全面包囲しつつある……って知っているだろうか?

人民日報日本語版の記事「日本メディア:日本の南進戦略「中国を全面包囲」」を読むとそういうことらしい。

日本政府は最近「南進戦略」を積極的に推進している。フィリピンとは海上情報の共有、同国の沿岸警備隊の訓練への資金援助で合意したうえ、海上保安庁巡視船の基地港を同国に建設することも計画している。さらにベトナムとも海洋戦略安保協定を締結。日越防衛相は南中国海の主権問題における中国の「強勢」に対処するため、政策の歩調を合わせることで合意した。

ということらしい。


040527-N-4104L-006 / Marion Doss

*南シナ海。写真は米軍の船舶。


■日本メディアの正体は「在日中国人サイト」

ちなみにこの日本メディアというのはアジア通信社が運営する華字ニュースサイト「日本新聞網」のこと。在日中国人が書いた中国的視点の記事を取り上げて、「日本メディアが中国を包囲したって言っているぞー!!!」と騒ぐというなんともすばらしいマッチポンプ回路を作り上げている。


このサイトに「中国に宣戦布告せよ」とかヨタ記事が載ると、「日本メディア:中国に宣戦布告すべきと提言」とか中国メディアに載るのかと思うとブルーになる。人民日報海外版では、記事中で「中国語ニュースサイト」と書いてくれているが、中国語記事では「日本新聞網」とだけ書いているので、日本メディアが「中国を包囲したった~~~」とホルホルしているようにしか見えないという……。

さらにさらに、中国中央電視台(CCTV)の番組「環球視線」にまでこの問題は取り上げられ、「日本の南進戦略について専門家の話を聞くっ!!!」という企画を敢行している。

曰く、

・南シナ海問題に日本が首を突っ込んでいるのは、米軍の「アジアへの帰還」に歩調を合わせたもの。

・でも日本の南進戦略は成功しない。中国とASEANは経済的に深い結びつきがあってうまくいっているからね。

とのこと。いや、勝手に「日本は南進戦略をたくらんでいるぞー」と騒いだ揚げ句に、「日本の南進戦略は失敗する(キリッ」とかやられても、驚くばかりなのだが……。


■中国官制メディアで盛り上がる強硬論

なんで日本新聞網の報道に中国官制メディアの皆様がここまで過敏に反応するのか、日本人にはなかなかぴんとこないところだが、中国的には「中国をいじめるのもたいがいにせーよ。そろそろ本気で殴るぞ」的な話がぽろぽろでていたりする。

10月25日付環球網の社説「东亚离海上冲突越走越近了」(サーチナの抄訳記事「東アジア、海上軍事衝突の危機近づく―中国・人民日報系メディア」)では、

中国国内社会が「平和的台頭が決して『譲歩で平和を買うこと』ではないことが分かってきた」ことで、「海上問題は自然の成り行きに従うべきで、武力解決を国策として優先すべきでないが、必要な時には見せしめのために武力行使する」との認識でまとまりつつあり(…)

との物騒な話を展開している。


■中国外交の失敗

「いったい何が起こっているんです?」と聞きたくなるところだが、2011年の中国外交が失敗しまくっていることが背景となっている。

記事「2011年南シナ海問題が残したもの=東南アジアの軍拡競争」でも取り上げたが、すっかり自身をつけた中国は今年、「そろそろ南シナ海で石油でも掘るか」と動き出したところ、ベトナムとフィリピンの反発に遭い挫折。いったんは手打ちにしたものの、

・フィリピン主催のASEAN会議で、南シナ海問題は、中国が望む二国間対話ではなく、多国間の交渉テーブルで話を進めるべきと議題にあげられる。
・フィリピンと米国が合同軍事演習
・ベトナム、インドに南シナ海でのガス田採掘を認可
・フィリピンと日本、海上安全保障の連携強化で合意
・南シナ海で操業中の中国漁船をフィリピン海上警備隊が拿捕

などなど、中国にとっては面白くない話題がずらり。ミャンマーのテイン・セイン新大統領就任後、中国との共同建設ダム中断を表明したり、ネット検閲の緩和や政治犯の解放を通じて、米国や日本との関係改善を図ったことも、面白くない話題に加えてもいいかもしれない。

フィリピンやベトナムと二国間対話したら小国のあいつらは黙って従うだろうという甘い目論見は見事に崩れたばかりか、米国ばかりか、日本やインドまで南シナ海問題、東南アジア外交に首を突っ込んでくるという状況にいたった。


■日本が渡る危ない橋

こうした中で、強硬論というか、不満を募らせる勢力が動き出しており、中国官制メディアの「物騒な記事」となって表出したものと見られる。

日本としてはちょっと困るのが、ASEANに首を突っ込む米国、日本、インドという「中国様の敵」のうち、とりあえず殴りやすい日本から叩いておくかという雰囲気を感じられることだ。大勢を相手にケンカする時は一番弱いやつをまず倒せ、ということでしょうか。

野田首相の意向かどうかはわからないがここ1カ月あまり日本外交が活発化しているのは事実なだけに、中国様の標的にされるのはちょっと勘弁して欲しい。米国様に最前線に立っていただきたいと切に願うところだが、米中ともにあんまり熱いケンカはしたくないところ。日本が危ない橋をわたる展開がしばらく続くのかもしれない。


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コメント一覧

    • 1. 竹島
    • 2011年10月28日 03:53
    • 5 中華人民共和国は、大韓民国の対日政策に倣おうとしている。
    • 2. Chinanews
    • 2011年10月28日 09:37
    • >竹島さん
      南シナ海、東南アジア絡みで韓国がどう動くのか、あんまり態度を示していないのが面白いところで、中国に嫌われないようにとの配慮かもしれませんね。
    • 3. にゃー
    • 2011年10月28日 17:11
    • やり方が韓国に似てきたね。
      韓国の場合、通名で日本人に見せかけた韓国人もしくは帰化韓国人学者に、韓国側に立った発言をさせ、「日本人が発言した」とホルホルしている。
      彼らがこのような卑怯なやり方でくるなら、日本はありとあらゆる手段で潰さなければならないだろう。
      日本は、相手に配慮した外交は終わりにしなければいけないかもしれない。

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