オリンパスの社内資料やケイマン諸島の記録によると、同社が日本企業3社の買収で支払った10億ドル近い資金の大半は、ケイマン諸島を拠点とする実態不明の複数の企業に流れた。
一方、オリンパスを解任されたマイケル・ウッドフォード元社長の書簡により、別の取引も浮上している。同社が米医療器具会社の買収で投資助言会社への融資を組み、その後まもなくその融資を償却処理した案件だ。
オリンパスが3社買収で行った支払いについては、同社監査役会の依頼を受けた外部委員会が2009年に作成した報告書に記されており、ウォール・ストリート・ジャーナルはこの報告書を確認している。しかし、矛盾するようだが、この報告書は3社の大株主を「(複数の)欧州ファンド」としている。ケイマン諸島の企業の資本は特定されていない。
同委員会の報告書は、同社の取締役らが買収案件に絡んだ不正行為をしていないとしている。
オリンパスは同報告書に関する事柄へのコメントを控えた。
オリンパスの森久志副社長は27日の会見で、3社の株主に関して自社が持つ情報は、株主の企業名と銀行口座だけだと述べた。「株主が誰かは全くわかっていない」という。
ケイマン諸島の企業記録によると、このうち3社は08年ないし09年に解散あるいは閉鎖している。オリンパスから資金を受け取った直後のことだ。
オリンパスで精査されているもう1つの案件、英医療機器メーカーのジャイラス買収にもケイマン諸島の企業に対する数億ドルの支払いが絡んでいた。この企業も後に解散した。
ケイマン諸島は、機密保持と税制面での有利さを求める国際企業によって利用されることが多い。登記している企業に関してほとんど情報を公開していないことが一因だ。
オリンパスが買収した3社は、資源リサイクル会社アルティス、化粧品・健康食品販売のヒューマラボ、電子レンジ調理器具メーカーのニューズシェフ。09年の報告書によると、このうちアルティスとヒューマラボは、「ネオ・ストラテジック・ベンチャー」と称する法人から08年3月に買収された。記録によると、この名前の企業は2000年にケイマン諸島で設立され、08年9月に解散している。
08年3月には大量のニューズシェフ株を「ニュー・インベストメンツ」から取得した。この名前のケイマン企業は2000年に設立され、09年早期に解散している。
オリンパスは、米医療器具会社が絡んだ別の取引で、米ブティック型投資銀行ビスコリオージ・ブラザーズのアドバイスを受けた。この買収の一環としてオリンパスがビスコリオージに組んだ約2300億ドルの融資について、ウッドフォード氏は9月23日付のオリンパスの森氏あて書簡で疑問を呈している。
本紙が確認したウッドフォード氏の書簡は「ビスコリオージ・ブラザーズがこの取引で担った役割や、当初融資を組んだ根拠、後に償却が必要だった理由はまだわからない」としている。
オリンパスはこの件に関してコメントを控え、この案件を発表した10年12月のニュースリリースに言及した。
ビスコリオージを兄弟で共同創設したアントニー・ビスコリオージ氏はオリンパスとの関係について、機密保持契約を理由にコメントを控えた。