健康保険が適用される保険診療と、適用外の自由診療を患者が併せて受ける「混合診療」を、厚生労働省は原則として認めていない。併用すると、健康保険が利く部分を含めて一連の医療費のすべてが患者の自己負担になる。
この混合診療の原則禁止の是非をめぐる訴訟で、最高裁第3小法廷は、同省の健康保険法の解釈を妥当とする判断を示した。腎臓がんの治療で保険外の治療法を併用していた原告の敗訴が確定した。
健保法に混合診療を禁ずる明文規定はなく、厚労官僚が解釈によって禁止としてきた。この状態は患者に不利益をもたらす。司法が裁量行政をただせないなら、国会が法改正を主導すべきである。
一審の東京地裁判決は禁止に法的根拠がないと判断した。だが二審の東京高裁は「健保法は一定要件を満たす先進医療などで例外として混合診療を認めており、それ以外の混合診療は原則禁止していると解釈できる」と、判断を覆した。最高裁もこれを支持した。
ただ田原睦夫裁判官は、明文規定を設けなかった厚労省や、混合診療の解禁を正面から議論してこなかった国会の不作為を指摘する補足意見を述べた。
混合診療の原則禁止によって、医師、患者の双方が治療の選択肢を狭められている。とくに患者が直面する不利益は大きい。
たとえば、がん治療の分野は革新的な新薬や治療法が各国で相次ぎ開発されている。日本国内で受けた保険診療の効果が芳しくなかった患者が、わらをもすがる思いで海外で開発された薬や治療法を試したいと考えるのは自然だ。
国内でそれらを保険適用していない場合、患者はすべての医療費を自費で賄うか、新しい治療法を諦めるか、どちらかを迫られる。
治療の選択肢は広い方が望ましい。高度な専門医療を手がける一部の大学病院の院長の間では、混合診療の解禁を求める声が強い。混合診療の禁止が技術革新の足かせになっている面も見逃せない。
もちろん、粗悪で有効性や安全性が定かでない薬などを提供することがあってはならない。患者に有害な行為をする医師を厳しく取り締まる仕組みづくりこそが、厚労省の役割である。
昨年、民主党政権は新成長戦略に混合診療を原則解禁する旨の表現を盛り込んだ。それを実現させるのは行政の長であり、与党の党首である首相の責務であろう。
厚生労働省、混合診療
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