2011年8月29日 19時38分 更新:8月29日 20時28分
民間による無人月面探査の一番乗りを競う国際的なコンテストに日本企業が参加することになり、試作した月面移動車が29日、東京都内で公開された。日本とオランダに拠点を置くベンチャー企業「ホワイトレーベルスペース」(東京都中野区)で、早ければ14年の打ち上げを目指す。
コンテストは米国の民間財団「エックスプライズ財団」が検索サービス大手「グーグル」と企画した。民間だけの力で月に探査車を送り込み、月面を500メートル走行してハイビジョン画像を撮影、地球に送信するという課題を最初に達成したチームに、賞金2000万ドル(約15億3000万円)が贈られる。現在、米、独、中国、インドなど18カ国28チームが参加を表明。期限は15年12月31日。
日本では、コンテスト参加のために設立したホワイト社だけが参加。小惑星探査機「はやぶさ」の開発にも携わった吉田和哉・東北大教授(航空宇宙工学)が移動車の試作機を完成させた。
試作機は長さ49センチ、幅46センチ、高さ55センチで、重量は10キロ。車体上部に360度撮影できるカメラを搭載する。「細かな砂に覆われている月面を走るには、大きな車輪が有利」(吉田教授)と、直径20センチの車輪を四つ装備している。
移動車を乗せて月面へ軟着陸する着陸船などは欧州にある同社のチームが開発する。現在、これらを月へ送り届けるロケットを選定中だ。同社によると、開発・打ち上げ費として計50億円が必要で、個人や企業の寄付や資金提供を募っている。
ホワイト社の袴田武史CEO=最高経営責任者=(31)は「資金提供者には、月面ロボットを地上から操縦する権利を提供したい。わくわくするようなコンテストの過程を一緒に楽しんでほしい」と話した。【西川拓】