西播磨特産の手延べそうめん「揖保乃糸」を生産する兵庫県手延素麺協同組合(たつの市)が、東京電力福島第1原発の事故を受け、屋外でそうめんを干す伝統的な「門干し」を自粛していることが27日、同組合への取材で分かった。放射能汚染に対する消費者不安に配慮した措置という。同組合は「西播磨に放射能の問題があるとは思わないが、少しでも安心してもらおうと思った」と説明。専門家からは「過剰反応ではないか」との指摘も出ている。
同組合では、たつの市や宍粟市などの約470軒で、10月から翌4月末まで手延べそうめんを製造。年間の生産量は2万トンに上る。
かつては軒先で寒風にさらして乾燥させていたが、近年は屋内の扇風機で乾燥させる製法が主流になっている。しかし、今でも約100軒の製造業者が、30分程度外気にさらしているという。
同組合によると、3月の原発事故直後、万が一に備えて門干しの自粛を各組合員に要請。たつの市周辺の放射線量は事故後も目立った変化はないが、消費者からそうめんに使う小麦の原産地について問い合わせなどが相次いだといい、シーズンを迎えた今月に入ってからも自粛を継続している。
毎シーズン、1日当たり30分〜1時間の門干しを続けてきたという同市の女性(65)は「屋外に出したからといって問題があるとは思えず、自粛は残念」と話す。同組合の長谷川邦男営業部長は「消費者の不安が収まれば、来シーズンにも再開したい」としている。
▼「明らかな過剰反応」
災害時の消費者心理に詳しい立教大の古川雅一特任准教授(行動経済学)の話 明らかな過剰反応だが、企業側が消費者心理を把握するのは難しい。短期的には安全をPRできても、再開時に「本当に大丈夫か」と疑いの視線が向けられるため、長期的にはブランドに負の側面が大きいのではないか。こうした過剰反応が繰り返されると、消費者に「何となく関西も危なそう」という印象がすり込まれ、関西全体のマイナスにつながる。
(2011/10/27 15:50)
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