※画像は『おとな時間』より

芸能取材歴30年以上、タブー知らずのベテランジャーナリストが、芸能界の裏側に横たわるオトコとオンナの深い業を掘り起こします。

　先週、小倉優子がヘアメイクアーチストの菊地勲さんと入籍し、ハワイで式を挙げた。また、眞鍋かをりも、順調なタレント活動を続けている。だが、この2人はいまだ、元所属事務所である「アヴィラ」との契約トラブルを引きずっている。アヴィラが、2人とは所属契約が継続しているなどとして、裁判を行なっているのだ。

　筆者はアヴィラのオーナーの牧野昌哉氏と面識があるが、かつて彼が「眞鍋の移籍をそそのかした小倉智昭を絶対許さない」と言っていた理由が遅まきながら最近になって分かった。

　眞鍋は、牧野氏が09年に巨額脱税で逮捕された直後に事務所からの移籍を決意。同年に契約解除を求める訴訟を起こした。同時にフジテレビの『とくダネ！』のキャスターを務める小倉智昭の紹介で、仕事の窓口が「イースト・プロダクション」（現・ノースプロダクション）になった。

　牧野氏は、この移籍トラブルが起こる前から、大手芸能プロ「ケイダッシュ」の川村龍夫会長に取り入って、彼女が他の芸能プロに移籍することに保険をかけていたことから、イーストが眞鍋の窓口になってもケイダッシュの圧力で仕事が入れられずに、いずれ干されるのではと懸念していた。ところが、眞鍋は契約トラブル以前と変わらないタレント活動を続けている。それもそのはず、イーストの後ろ盾はケイダッシュと、大手芸能プロ「バーニングプロダクション」だったのだ。

　イーストは、1970年代前半にTBSの社員だった人間が独立して設立した番組制作会社だった。当時は堅実な制作プロといわれたが、故・百瀬博教さんが外部スタッフとして関わってから、おかしくなった。

　東京・柳橋の侠客の息子という百瀬さんは、90年代から「文藝春秋社」から出版された『不良ノート』などで作家として活動を始めていた。昔、一世を風靡した赤坂の高級クラブ「ニューラテンクォーター」の用心棒を務めており、石原裕次郎とも親交が深かったというが、筆者の知る限りでは、ラテンは用心棒を置く必要がないクラブだった。百瀬さんの名前は「富士銀行巨額不正融資事件」の時に、事件に関わっている人物の一人として噂されたことは記憶していた。そうしたこともあり、百瀬さんに対しては、決していい印象を抱いていなかったのだ。ある時、イーストのプロデューサーだった知人にそのことを話したら、百瀬さん自身に伝わったらしい。その後、百瀬さんは筆者と親しい大手プロの幹部に会った時、「本多を若い衆に襲わせる」と、筆者に対する物騒な伝言を頼んだそうだ。異論があるなら、筆者に会いにきて直接話せばいい。しかも「若い衆」とは、まるで暴力団だ。しかし、そういう伝言を聞いた以上、腹を括って待ったが、待てど暮らせど若い衆はやってこなかった。百瀬さんは本当に「襲わせる」などと言ったのだろうか。彼が故人となった今では確認しようがない。

　話はそれたが、その話と前後してイーストは芸能プロ「イースト・プロダクション」を設立した。筆者は制作会社がタレントのマネジメント会社を持つことは、番組の私物化・タレントの寡占化につながりかねないので反対だ。しかも、この設立には、百瀬さんの高校の後輩であるバーニングプロの周防郁雄社長とケイダッシュの川村会長が後ろ盾になっていたというから、なおさらだ。小倉智昭が所属している「オーケープロダクション」はイースト系列といわれ、09年に創立40周年を迎えたのを機にイーストの完全子会社になっている。このツテを使い、小倉は眞鍋をイーストという庇護の下に入れたのだから、牧野氏にとってはたまらなかったのだろう。

　眞鍋だけではなく、小倉智昭も芸能界の2大勢力に守られていたのだ。牧野氏が「小倉を許さない」と激怒しているのは、周防、川村を後ろ盾にしていることに胡坐をかいて、牧野社長をなめているからではないだろうか。牧野社長の人格については、いろいろ問題はあるとの評判はあるが、権力と戦う姿勢だけは評価したい。
（文＝本多圭）

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