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「日本はまだ強い国」=安定政権へ政治改革を−エズラ・ボーゲル氏に聞く

「日本はまだ強い国」=安定政権へ政治改革を−エズラ・ボーゲル氏に聞く

 【ワシントン時事】米ハーバード大学の著名な社会学者エズラ・ボーゲル名誉教授(81)は27日までに、時事通信の電話インタビューに応じ、「日本はまだ多くの点で、非常に強力だ」と強調した。また、日本の最重要課題は、首相が一定期間、政権を維持できるよう改革を行うことだと指摘した。インタビューの主な内容は以下の通り。
 −ベストセラーとなったボーゲル氏の著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から30年以上たち、日本は国内総生産(GDP)で中国に抜かれて3位に転落しました。日本は結局、世界一にはなれませんでした。
 ボーゲル氏 それは定義によるでしょう。日本はまだ、世界一の長寿国であり、公教育の質や品質管理などではまだ、非常に優れています。著書で、日本は世界一の経済大国だと論じたわけではありません。東日本大震災での素早く秩序だった市民の対応には目を見張るものがありました。こうした事態に直面したときに、日本ほどうまく対応できる国はないでしょう。日本はまだ多くの点で、非常に強力だと思います。経済成長だけに焦点を当てるのは、視野が狭い考え方です。
 −著書などを通じて、日本に提言されてきましたが、最も重要な提言は何でしょうか。
 ボーゲル氏 最も困難なため、短期的には実現不可能だと思いますが、日本の首相がより長い期間政権を維持できる制度を見いだすことだと思います。日本の首相が4、5年の任期で選ばれるようにならなければならない。(首相の)直接選挙が一つの可能性として考えられるでしょう。こうした最も根本的な改革が今、必要だと思います。
 −憲法9条改正についてご意見は。
 ボーゲル氏 憲法9条を改正しなくても多くのことを変える余地があります。改正は不要だと思います。
 −日本では環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加をめぐり議論が行われています。日本はTPP交渉に参加すべきだと思いますか。
 ボーゲル氏 主な問題は、日本が地方の圧力団体に配慮し、農村地帯に改革を迫ってこなかったことです。こうした改革なしに、貿易協定の進展を図ることは難しい。日本経済はサービス部門の比重が圧倒的に大きい。農村部門のために貿易協定の進展をためらうのは、日本の国益にとって非常に悪いことだと思います。
 −米中、日米中関係について。
 ボーゲル氏 米中については、多くの不確実性があり予見は非常に困難です。しかし、多くの問題で協調することが両国の利益となるのは明らかであることから、悲観的というよりもむしろ楽観しています。中国の台頭で、日米は強力な協調関係を維持するでしょう。ただ、日本の首相が(短期政権のため)あまりに脆弱(ぜいじゃく)なので、米国は問題解決のため、日本よりも中国との協議により多くの時間を費やすことになると思います。
◇エズラ・ボーゲル氏
 1930年7月、米オハイオ州生まれ。58年にハーバード大学で社会学博士号を取得。その後2年間、日本で研究活動に従事。61年から64年にかけて、同大学で中国語と中国史を学んだ。67年同大教授に就任。同大東アジア研究所長などを歴任。93年から2年間、国家情報会議(NIC)の東アジア担当情報官。日中両国に関する多数の著書があり、79年の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はベストセラーとなった。今年、「トウ小平と中国の変革」(仮訳)を出版した。(2011/10/27-14:37)


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