【ワン(トルコ東部)花岡洋二】トルコ東部の地震被災地ワンで27日、地元選出の国会議員で少数民族クルド系の野党「平和民主党(BDP)」副代表、ナズミ・ギュル氏(46)が毎日新聞のインタビューに応じた。ギュル氏は最大15万戸のテントや仮設住宅が必要な「危機的状況」を強調、国際社会の支援を呼びかけた。また、政府の災害対応が遅れた背景には「少数民族に対する民族差別がある」と述べ、トルコ政府を批判した。
ギュル氏は地震が発生した23日午後、ワンにいた。直後からワンやエルジシュなどのビル倒壊現場を回り、救援活動を指揮。その間、従姉妹やその息子が犠牲になったとの報告を受けたという。
平和民主党によると、被災地が必要とするテントや仮設住宅は12万~15万戸。政府の備蓄は一部あるが「大幅に不足する見通し」という。27日朝は、市街地でも雪が降った。ギュル氏は「この地域は6カ月間、雪に埋まる。子供たちの命を救うためにもいま唯一、そして絶対に必要な援助だ」と訴えた。
長期的には地震に強い街づくりが必要だとも述べ、「この地域は30~40年に1度は大きな地震被害が出ているのに、何も改善されてこなかった」と指摘。地震国の日本に対し、区画整理や建築方法に詳しい人材の派遣や情報提供を求めた。
また、クルド人の多く住むトルコ東部の救助活動が「政府の差別的対応により遅れた」と主張。地震当日、エルジシュでは大量の軍兵士が配備されたが、「治安維持活動をしただけで、救助活動を手伝っていなかった」と述べた。99年のトルコ北西部地震では、兵士が直後から救助活動に当たっていたという。
トルコ東部の住民の多くは貧困から、違法建築や安価な泥ブロック造りの住居に住んでおり、それが「甚大な被害につながった側面も大きい」とした。
トルコのエルドアン首相は03年の就任以来、クルド人地域にも道路や大学、病院などを建設し、公共事業を通じて雇用創出を図ってきた。だが農業や酪農以外の産業は育っておらず、住民の政府に対する不満は根強い。
毎日新聞 2011年10月28日 東京朝刊