一関市花泉町の県立花泉地域診療センターから10年4月に民間移管された花泉診療所(19床)が、今月上旬から入院患者を受け入れていないことが分かった。診療所を運営する医療法人「白光(びゃっこう)」の橋本堯夫会長は26日、毎日新聞の取材に対して「今後も入院患者は受け入れない」と話し、10年以上は入院病床を確保するとした県との契約が履行されない可能性が出てきた。【宮崎隆、金寿英】
県医療局によると、花泉診療所では、今年9月末に常勤の男性医師が辞表を提出。常勤医が不在となったため、今月9日までにすべての患者が転院または退院した。17日には、男性医師に代わって新たに常勤の医師が赴任したが、現在も入院患者は受け入れていないという。
白光の橋本会長は取材に対し、「夜勤まで対応できる看護師の確保が困難だ」との理由を示し、「今後は入院患者を受け入れない」と明言。すでに、県や一関市には「夜もやれというなら(経営を)辞める」と、現状では入院患者の受け入れは不可能であることを伝え、対応策を示すように求めたが、26日までに回答はなかったという。
花泉診療所は、入院病床が休止された地域診療センターで初めて民間移管され、地域医療のモデルケースとして注目を集めた。しかし、10年4月の診療開始直後に唯一の常勤医が休職するなど体制が整わず、今回辞職した医師が赴任した翌月の10年8月までは入院患者を受け入れていなかった。その後は、平均1日10人前後の入院患者を受け入れてきた。
県との契約には「10年間以上、有床診療所として使用する」と明記され、09年10月の県議会環境福祉委員会では、当時の医療局長が「県立病院からの人的支援も含め計画通り事業が遂行されるようかかわっていきたい」と答弁していた。
今回の会長の発言を受け、医療局経営管理課の担当者は「法人から無床化を決定したとは聞いていない。入院患者の受け入れ体制を整備するよう要請は続けるが、指導に強制力はない」と話す。
毎日新聞 2011年10月28日 地方版