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震災後、絆求め婚活熱2011年10月26日
東日本大震災後、結婚相談所への相談や入会が増えている。人とのつながりを求め、特に女性の側で、結婚への意識が高まっているようだ。人口増加を目指して婚活支援事業に取り組み出した各県なども、この機運を生かしたい考え。ただ、すぐに成果を求めず、長く続けることが必要、と専門家は指摘する。 「皆さん、はじめまして。まずはカンパーイ」。福島市中心部の居酒屋。福島県産白桃酒を使ったハイボールで乾杯し、自己紹介。同市内の飲食店55店を会場に22日、男女2300人が参加して合コンイベント「福コン」が始まったところだ。 初開催は7月。「余震も続くし、1人で家にいるのは心細い」との女性の声に、店主らが集まった。実行委員の一人、南祐徳(まさのり)さん(45)は、昨年12月に創刊した県内の結婚情報誌「ジュエル」の元編集長。震災で式場の宣伝費が減り、休刊に追い込まれた。「今は数年後結婚するカップルの芽を育てる時期。飲食店も復興に向けて一つになっているこのタイミングを生かしたい」と南さんは話す。 「震災で人とのつながりを意識するようになった」「早めに絆を作る相手を見つけたい」。東北6県で約3千人の会員を抱える結婚紹介所「あんしん友の会」(東北本部・盛岡市)には震災後、20代からのそんな相談が増えた。5〜8月の女性の入会件数は、昨年同時期の50%増。例年は30〜40歳代が中心だが、年齢層が広がった。 東北4県に店舗を構える結婚相談所大手のツヴァイ(本社・東京都)でも、今年3〜10月の東北地方の入会者数は昨年同時期の1・2倍、資料請求数は1・3倍に伸びている。 震災の影響で5月末まで営業を控えていた結婚相談所サンマリエ仙台店でも、5月の資料請求は昨年同期の26%増。広報担当者によると、多くは女性で、「震災のときの対処の仕方が男らしかったという理由で相談所に成婚届を出す女性もいた」。 福島県子育て支援課は2008年12月、県内の独身男女9千人にアンケートを実施。独身でいる理由に「異性に出会う機会がない」との回答が多かったのを受けて昨年、出会いを支援するサイトを開設した。これまで発信した143回のイベントの一つが福コンだ。担当者は「出会いの場が増えて結婚のきっかけになれば」と期待を寄せる。 山形県は09年に婚活応援事業を始め、3年目の今年は、9月30日現在で115件のイベントを実施、ホームページの閲覧者は昨年の2倍にのぼる。 その一つ、15、16日に鶴岡市で開いた「森の婚活物語」は首都圏の女性と地元男性のマッチングを目指した。同県の婚活コーディネーターの小笠原学さんは、震災を機に首都圏の女性が結婚を意識しだしたとされることに注目。地元男性15人と首都圏の女性14人が縁結びの神に参拝、庄内映画村など観光地を回りながら交流を深め、6組のカップルが誕生したという。 7月に開設したあおもり出会いサポートセンターでは、3カ月間で170人が登録した。「婚姻率の低い青森でこの数字はかなり高い。震災が影響している部分もあるのかもしれない」とセンター長は話す。 「婚活」の生みの親、山田昌弘・中央大教授(家族社会学)は「結婚願望が高まっても、すぐには成婚に結びつかない。リーマン・ショック後、経済的安定を求めて結婚を意識する女性は多いが、震災で男性はむしろ経済的に不安定になっている」と分析。「結婚率が上がってもすぐに少子化が改善されるわけではない。行政は早くに結果を求めず、支援を続けることが大切だ」と説く。 ●離婚相談も急増 一方、仙台市の宮城離婚相談所によると、震災後は離婚の相談も急増している。代表の中幡(なかはた)時子さんによると、4月下旬から増え、1カ月50件は例年の倍以上。「夫が愛人を心配して出て行った」「妻が子どもの世話を全くしない」など夫と妻でほぼ同数という。中幡さんは「震災前から不安定だった夫婦関係が、一気に限界に追い込まれたというものが多い」と話す。 ◆「こんな時だからこそ」 被災地カップル挙式 被災地ならでは、の結婚式を挙げたカップルもいる。 福島第一原発の事故に伴い、同原発から30キロ圏内の町を離れて福島県郡山市に避難中の佐久間博子さん(26)と善秀さん(27)は先月19日、神戸市内で挙式した。 3月3日に婚姻届を出し、5月の式の招待状も郵送後、震災に遭った。一度は式をあきらめたが、神戸松蔭女子学院大(神戸市)の学生が無料のオリジナル結婚式を挙げるカップルを募っていると知り、応募した。 ウエディングドレスは服飾などを学ぶ学生が作り、ケーキ代わりのマカロンのタワーは、神戸と福島の頭文字から「KOFUKU」と名付けた。博子さんは「震災で失ったものは大きかったけれど、得られたものはそれ以上」と心遣いに感謝する。 計画した学生のリーダー、梶杏奈さん(21)は4歳のとき阪神大震災を体験。「周りが一面火の海だったことを今も覚えている。被災した方の笑顔を取り戻すことができないか必死に考えた。できて良かった」 岩手県大槌町の上田亜理沙さん(26)、達也さん(26)は今月9日、JR釜石駅前で「青空結婚式」を挙げた。交際7年目の記念日の3月27日に婚姻届は出していたが、式はさすがに無理だと思っていた。 「こんなときだからこそ、挙げた方がいい」。震災後、たまたま入った美容院で店長に背中を押された。とはいえ、式場は津波を受けて使えない。 70万円の予算から衣装代を出し、牧師も招いた。地元企業の協力で音響設備やケーキも用意した。最後に、復興と2人の幸せを願い、集った市民が100個の風船を空へ飛ばした。 亜理沙さんは言う。「夫も大槌町の出身。どうしても地元で挙げたかった。知らない人も笑顔で見守ってくれ、感激した」(川口敦子)
マイタウン宮城
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