放射性物質の食品健康影響を評価していた内閣府の食品安全委員会は27日、健康に影響を及ぼす被ばく線量について、食品からの被ばくで「生涯累積でおおよそ100ミリシーベルト以上」とする評価書をまとめ、小宮山洋子厚生労働相に答申した。当初は「100ミリシーベルト」を外部、内部被ばくの合計線量としていたが、「説明不足だった」と食品摂取による内部被ばくに限定した。厚労省は答申を受け、現行の暫定規制値の見直しに入り、規制値を引き下げて厳しくする見通し。
食品安全委は4月以降、広島や長崎の被爆者のがん発生率データなど約3000の文献を検討。7月に「生涯100ミリシーベルト」の評価案を公表し、広く意見を求めた。3089通の意見が寄せられ、「規制値が厳しくなるので良い」「厳しすぎて農産物の生産に影響が出る」など賛否が分かれたが、「修正を必要とする意見は確認できなかった」とした。
外部被ばくを考慮しないことについて、会見した小泉直子委員長は「著しく外部被ばくが増大しないことを前提にした」としながらも、「外部被ばくが非常に高いケースには適用できない。外部被ばくは、しかるべき機関が策を講ずる問題だ」とした。100ミリシーベルト未満の健康影響については「言及することは困難」とした。
また小児に関して、甲状腺がんなどのデータから「感受性が成人より高い可能性がある」とし、配慮が必要であるとの考えを示した。
「生涯100ミリシーベルト」は一生を80年として単純計算すると年1.25ミリシーベルトとなり、現行の暫定規制値の根拠である被ばく限度(放射性セシウムで年5ミリシーベルト)を大幅に下回る。すでに小宮山厚労相は21日、新たな規制値は「厳しくなると思う」との見通しを示している。【小島正美】
毎日新聞 2011年10月27日 21時35分(最終更新 10月28日 8時46分)