健康保険が使える保険診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」を原則として禁じている国の政策が適法かが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)は25日、「適法」との判断を示した。そのうえで、保険診療分については保険が使える権利の確認を求めた患者の上告を棄却。患者の敗訴が確定した。
最高裁が混合診療の適法性について判断を示したのは初めて。結論は裁判官5人全員一致の意見だった。ただ、大谷裁判長ら3人が「補足意見」を、寺田逸郎裁判官が異なる理由を示す「意見」を述べ、それぞれ制度や運用のあり方に問題提起をした。
訴えていたのは、神奈川県藤沢市に住む腎臓がん患者の清郷(きよさと)伸人さん(64)。保険適用の「インターフェロン療法」と併せて適用外の「活性化自己リンパ球移入療法」を受けたところ、すべての治療について自己負担を求められたため、「混合診療を禁じる法律的な根拠はないから、インターフェロン分は保険が使える」として提訴した。
健康保険法に混合診療を禁じる規定はないが、国は法解釈で禁止してきた。その一方で、1984年の同法改正以降、特定の高度先進医療に限って例外的に混合診療を認めている。
第三小法廷は、禁止が「法律から直ちに導かれるとは言えない」と指摘しつつ、法改正の経緯などを踏まえて「医療の安全性・有効性の確保や、財源面での制約から、保険が給付される範囲を合理的に制限するのはやむを得ない」と述べ、国の解釈は妥当と結論づけた。
個別意見のうち、弁護士出身の田原睦夫裁判官は「現行法は文言上、他の解釈の余地がある。対象者が広範囲に及ぶ場合、明快な規定が一層求められる」と注文を付けた。裁判官出身の寺田裁判官は「給付を認める基準や運用の合理性に疑問がある」との意見を述べた。