食品に含まれる放射性物質が健康に及ぼす影響を検討してきた国の食品安全委員会は、一生を通じて累積で100ミリシーベルト以上被ばくすると健康に影響するおそれがあるとして、食品による内部被ばくをおおむねこの範囲に収めるべきだとする見解をまとめました。これを受けて、厚生労働省は食品に含まれる放射性物質の新たな基準を検討することになります。
食品に含まれる放射性物質については、福島第一原発事故のあと、緊急時の対応として暫定基準値が設けられましたが、厚生労働省からの要請を受けて内閣府の食品安全委員会が改めて検討を進めてきました。27日の委員会では、自然から受ける放射線を除き、一生を通じて累積でおよそ100ミリシーベルト以上被ばくするとがんの発生率が高まるなど健康に影響するおそれがあるというワーキンググループの審議結果が報告されました。そして、小泉直子委員長の提案で食品による内部被ばくをおおむねこの範囲に収めるべきだとする見解をまとめ、厚生労働省に送りました。食品安全委員会のワーキンググループは、これまで消費者を集めた説明会などで、「累積で100ミリシーベルト」という値には内部被ばくのほか、体の表面に放射線を受ける外部被ばくも含むという説明をしてきました。27日の見解はこれを内部被ばくの限度とすることで、これまでの説明より被ばくの許容量を引き上げる方向になることから、今後、消費者に対する説明や議論のあり方が問題になりそうです。厚生労働省は27日に示された見解を参考に、今月31日から食品に含まれる放射性物質の新たな基準を検討することになります。
委員会のあとの記者会見で、食品安全委員会の小泉直子委員長は、これまで「累積で100ミリシーベルト」という値には内部被ばくのほか、外部被ばくも含むとしていたことについて「説明が不足したことで国民の皆様に誤解を与えたことについておわび申し上げます」と説明が不適切だったと認めました。そのうえで、「外部被ばくを含めた線量として捉えることも可能」としていた食品安全委員会のホームページの記述を訂正する考えを明らかにしました。
食品安全委員会は、報告書の案をまとめてから正式に答申を取りまとめるまで3か月もかかりました。食品安全委員会は、厚生労働省の要請を受けて、4月にワーキンググループを設け、食品に含まれる放射性物質の健康影響について検討してきました。報告書の案をまとめたのはことし7月でしたが、一般から意見を募る「パブリックコメント」の手続きがあったため、正式な取りまとめまで3か月もかかりました。パブリックコメントには3089件もの意見が寄せられ、コメントの受け付け期間の1か月のほか、それぞれの内容の検討におよそ2か月を要したということです。食品安全委員会によりますと、パブリックコメントの内容で多かったのは、一生を通しての累積の被ばく量についてのものでした。この中には、一生で100ミリシーベルトとするのはあいまいだとか、年単位にしないと実際の生活には役に立たない、100ミリシーベルトは高すぎる、といった意見があったということです。また、子どもの被ばくについても200件余りが寄せられ、大人よりも厳しい基準を設けるべきだといった意見が目立ったということです。