リビアの反体制派が首都トリポリのカダフィ大佐の邸宅兼軍事基地となっていた複合施設を攻撃し、大佐一派が退却した際の血生臭い情景が明らかになってきた。
国際的な人権保護団体の米ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)はトリポリ市内4カ所で発見された110人の遺体について報告をまとめた。多くは処刑されたような形で死亡していた。
人権の専門家は、こうした殺害方法が戦争犯罪に当たる可能性が高いとみている。状況から、このうち1カ所ではカダフィ派が殺害に関わっていたとみられるが、他については明らかでないという。
一方、記者団もトリポリの複数地区で、中央分離帯の草むらや役所の建物、側溝などで腐敗しかけた遺体を多数発見した。身分証明書などはなく、死亡の時期や経緯の究明も難しそうだという。
だが、住民や目撃者の話から20日から21日にかけて、大佐派の本拠だったバーブ・アジジャ地区の複合施設への攻撃で反体制派が優勢に転じた後、大佐派の軍隊がトリポリを脱出し国際空港のある市の南方に向かって敗走したときの詳細が明らかになった。
複合施設の南側の地域に住む住民によると、地元住民が指揮するカダフィ大佐の部隊が20日夜、この地区に逃げ込んできて、このとき、少なくとも25人が殺害された。
銃で反撃しながらカダフィ派の兵士が後退していった通りに住んでいるマブルーク・アル=グートさんによると、激しい銃撃が絶え間なく続き断末魔の悲鳴や命乞いの声が聞こえたという。「狙いも定めず撃ちまくっていた」とグートさんは言う。家の周辺には乾いた血溜まりがいくつも残っていた。
少なくとも6人の遺体が複合施設との間の乾いた川底に散乱していたという。またグートさんは200メートルほど離れた八百屋で、10人の遺体を見たと語った。遺体はそれぞれベルトで手を縛られており、身元の分かるものはなかった。HRWの報告によると、この地区で発見された遺体は18体だった。