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現場発:「宮崎生協病院」臨床研修指定取り消しの危機 /宮崎

 ◇新人医師の選択肢少なく 国、県に存続求め署名運動

 大学を卒業したての新人医師が医療現場で学ぶ臨床研修。研修医を受け入れている「宮崎生協病院」(宮崎市)が、患者規模など国が定める条件見直しにより、指定取り消しの危機にある。県内は医師不足が深刻で、県医師会は「取り消しは大きな打撃だ」と国や県に同病院の指定存続を要望。病院側は近く署名運動を始める。【石田宗久】

 「調子はいかがですか」。高妻岳広医師(25)は今春から宮崎生協病院で臨床研修中。毎日午前7時からの回診では、肺炎で入院中の男性患者(86)に優しく話しかけ、呼吸や脈を確認する。処置医として採血などを担当したり、指導医とともに外来で初診患者も診る。

 宮崎市出身で、香川大で学んだ。大学時代の1日体験で同病院を訪れ「患者と一緒に病気を治していこうという雰囲気がいい」と臨床研修先に選んだという。医師不足の県の現状は学生時代から気になっていて「微力でも、宮崎のために働きたい」という。

 厚労省は09年、病院側の指導体制の質を確保するため、「基幹型臨床研修病院」の指定基準で、年間の新規入院患者数を「3000人以上」と見直した。宮崎生協病院は患者が2000人程度のため条件を満たさず、13年度からの受け入れができなくなる。

 宮崎生協病院は「地域に根ざしたかかりつけ病院」として、研修では全身的な問診・診察を重視。06年に研修病院に指定され、これまでに研修医8人を受け入れた。他病院と連携し、幅広い診療科目での基礎研修が可能だとしている。

 県医師会によると、県内の指定病院は宮崎大学病院と県立、民間の計6病院。全国で2番目に少ない。受け入れた研修医数も08、09年度計89人と同4番目の少なさだ。19日に河野俊嗣知事を訪問した宮崎生協病院の日高明義院長は「県内で勤務している医師は、県内で研修したか県出身であることがほとんど。研修枠を狭められると医師の数も増えない」と訴えた。高妻医師も「専門性の高い大病院と、『家庭医』として全身を診る中小病院には違う良さがある。研修先の選択肢が減るのには納得できない」と語る。

 厚労省臨床研修推進室によると、3000人という数字の線引きに、根拠はないという。また「中小病院でも適切な研修がなされているという指摘もある」ため、同病院の指導体制や研修医の能力を実地調査で確認し、今後の対応を検討するという。

 04年に臨床研修制度が改正され、大学を卒業した新人医師は自由に研修先を選べるようになった。2年間の初期研修は医師のキャリアの第一歩だが、症例の多い大規模病院がある都市部に比べ、人口の少ない地方都市の病院は敬遠されがちなのが現実だ。

毎日新聞 2011年10月27日 地方版

 
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