今日、皆さんでユニクロ着てらっしゃる方はいませんか?
いますね。お二人かな。もうちょっといるでしょう。見栄を張らないで(笑)。
ユニクロが今すごく持てはやされていますが、これからどうなっていくのでしょうか。
「すごく不景気だ、不景気だ」と言って、小泉首相も今、「国民の皆さんに痛みを分け合って欲しい」とよく言っています。ファッションの世界でも、とにかく量産体制に入って安く安くっていうことになってしまっています。
メイド・イン・ジャパンでないものがどんどん増えてゆくと、消費者にとっては一時的に「ありがたい」ってことになるとしても、作る側に回れなくなっていくということは、安いものでも買えなくなっていく、ってことですよね。これをデフレ・スパイラルと言います。あたりまえの話で、消費者は生産者を前提にしているわけです。現代社会では、生産者と消費者は完全に分岐していません。大企業の社長だって、消費者の一人です。ある程度の価格が維持されてこそ、社員の雇用と給与を確保できる。それはそうですよね。
ハンバーガーも、130円とか85円とかで買えるんでしょ? かつては360円ぐらいしたのが 240円になって160円になって85円になる。みんな「安い、安い」って言っていますが、今まで1個360円で売っていたら1万個売れば360万円入ってきてたわけでしょ。しかし、85円でセールしたら、1万個売っても85万円にしかならないよね。かつて300万円の売上があったところでは、4倍くらい売らなきゃいけないってことになります。
墓穴を掘っている、という側面がデフレ時代には本質的につきまとう。
ですから、ハンバーガーならハンバーガー、プリーツなかプリーツで、とにかくトップランナーに立ったところは独占して生き残れますが、2位や3位になっちゃったところは倒産しかねないという時代状況になってしまいました。
これから先どうなってくるか。実は、私はそんなに大変な事だと思っていません。
要するに、なんでユニクロとかマクドナルドが持てはやされるかというと、ある程度時間に余裕のある世代がそういうものを買っている、ということが本質的、根源的にあると思うんですね。
例えば、東京で吉野家の牛丼なんかでも350円ぐらいでお昼が食べられるようになっています。すると、列できるわけですよね。30分くらい列を作って350円のものを食べる。でも、その30分あたりの時給が350円以下じゃないと、そういう所に入るのは実質的に見合わないでしょう。安い所は並んででも買う、という層は、その人の時間コスト意識があまり無い世代だと思います。しかし一方で、そうじゃない人たちにとっては、やっぱり自分に見合うもの、自分の本当に楽しめるものを、安くても高くても自分で選ぶということが、人間的な本質的な欲求としてあると思うんですよ。
皆さんがお金の使い方で今よりもうちょっと自由になった時に、「いつまでもユニクロ着てられるか!」という問題が、やっぱりあるわけです。究極的には自分で作ってみたりとか、それから人よりも多少良いものを着たりとか、必ずそうなります。「どこで売ってんの?」とか聞かれたい。「似合うね」って言われたいとかね……。
ユニクロは、商品はある程度良いものですが、安いということで勝負してるわけです。そうすると、同じものを例えばジャスコとかダイエーとかが同じ物を、もっと安くで作ってきちゃえば、競争に勝てないわけでしょ。
その時に、多少高い、あるいはかなり高いけれども、そこでしか作れない物を売っている所は、代官山とか青山でなくとも、札幌市の駅から歩いて10分くらいの小さなお店にでも、どこからでも買いに来る、というように必ずなります。