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キムタク&静香のブランド戦略

日垣  じゃあ、次の方。ワイドショーや女性週刊誌で、友だちと話題にしたり興味持
ったりしたネタが何かありますか?
学生2 最近、あんまりワイドショー見てないから、よくわかんない。
日垣  噂話とか、タレントの話やドラマの話でも全然構わないよ。
学生2 ……。
日垣  自分のことにしか興味がない?
学生2 工藤静香さんと木村拓哉さんの子どもが生まれたとか、結婚したというニュースなら……。
日垣  そのニュースは、どうやって知りましたか?
学生2 テレビ。
日垣  どういうテレビ? ニュースですか? それともワイドショー?
学生2 ワイドショーかなあ……。
日垣  見てるじゃない(笑)。でも、「結婚」っていうニュースではなかったよね。どういうニュースだった? 斜め前の人に聞こう。
学生3 あっ、「静香妊娠」とか(笑)。
日垣  うん、そうなんだよね。「静香妊娠入籍」だったよね。あなたは、それを、どこで知りましたか?
学生3 えっと、「フライデー」とか「フォーカス」。
日垣  実はレッサーパンダの男が養護学校に行っていたという、あの事件を解くポイントを報じたのも「フォーカス」だけだったのですよ。その「フォーカス」が、21年間の歴史を閉じて、先週廃刊になってしまいました。
 ところで例えば、物真似タレントの清水アキラと演歌歌手の石原絢子が部屋から出てきたところを、写真に撮ってしまう。写真週刊誌はある瞬間の写真を撮ることで、噂話ではなくて証拠として読者に差し出すわけです。でも、清水アキラと石原絢子の二人はスキャンダルになって、木村拓哉と工藤静香についてはスキャンダルにならなかった。この理由は簡単です。もちろん「失敗」の発覚がスキャンダルの本質なんだけれど、特殊日本の芸能界事情によるところが大きい。
 日本では各テレビ局の、夜7時から夜中の11時位まで番組出演者の6割は大手タレント事務所だけで占めてしまっています。ドラマやバラエティーにしても、SMAPほかジャニーズ系や吉本やバーニングやナベプロのタレントが出ていない番組はほとんどないわけです。
 そんな中で例えばジャニーズ事務所が、「もしうちのスキャンダルを(ワイドショーで)暴いたら(ドラマやバラエティーから)全員を引き上げる」って、テレビ局に圧力をかける。圧力を直接かけなくても、プロデューサーが忖度(そんたく)する。あらかじめ、配慮する。ともかくこうしてテレビ局としては、大手プロダクションのスキャンダルは扱えないっていうのが原則になってしまいます。だから、ワイドショーで「不倫発覚」なんてニュースになってしまう人は、小さなプロダクションの所属タレントだけなのです。清水アキラさんも石原絢子さんも、所属しているのは小さな事務所です。
 しかし、講談社や新潮社や文藝春秋といった、テレビ局ではない雑誌メディアの人たちが、そういう構造を嫌らしいことだと思っている人が少なからずおり(利害関係も少ないからなんだけど)、バーニングやジャニーズのスキャンダルも追いかけて、暴こうとしてきました。
 誤解のないように言い添えておきますが、大手事務所のタレントでも警察に「逮捕」されると、ちょっとした駐車違反程度でもテレビは大騒ぎします。「逮捕」という名目さえあれば、タレント事務所に配慮する必要性がなくなるので、日頃の(圧力に対する)鬱憤をその報道≠ナ晴らそうという構図です。年間120万件もある交通違反でも、人気者だという理由だけでがんがん報道される例は、これからも必ず出てきますから注意深く見ていてください。


 さて話を戻すと、工藤静香さんとキムタクが付き合い始めたということを知ったバーニングの社長とジャニーズ側の駆け引きが始まるわけです。バーニングの社長は昨年10月の時点で、自分の主治医がいる大病院の産婦人科に工藤静香を紹介してもらい、ゴナドトロビンの投与を行なっています。ゴナドトロンビンというのは、排卵誘発剤です。これはどういう意味でしょうか。ちょっと考えてみてください。


 もし、工藤静香が妊娠して、なおかつ中絶を命じられ、そして破局になっていたとしたら、木村拓哉さんやジャニーズ事務所にとってはものすごく大きなダメージになります。逆に落ち目の、なんて言っちゃいけないけど工藤静香が(笑)、天下のキムタクをゲットしたということで(笑)、CMに子どもと一緒に出せるとか、バーニングにとっては一発逆転の大きな財産≠ノなるわけです。
 で、工藤静香にゴナドトロピン投与という治療≠ェ施されたその意味は、「できちゃった」を促進かつ既成事実化する、という以外に解釈しようがありません。婚前交渉は今どき、ありふれたことでしょうが、まさか妊娠することを一方が、それも恋人時代に策略する≠ニいうのは、前代未聞といってもいい。


 そして、二人の「できちゃった結婚」を最初に報じたのは「スポーツニッポン」です。梨本勝さん(芸能リポーター・函館大学客員教授『噂を学ぶ』角川書店)によれば、「スポニチ」にその情報をリークしたのは、やはりバーニング側だった。もちろん、ジャニーズ側としては、寝耳に水です。こうして「スポーツニッポン」が「妊娠・入籍」をスクープします。その報道がなされた直後に、本当に入籍するのです。入籍せざるを得なかった。


 バーニングとジャニーズの経営者が何を考えて行動していたかといえば、良くも悪くも「自分たちの商品のブランドを守る」という一点に尽きます。もし木村拓哉の評価が「中絶」や「破局」で落ちれば、ジャニーズ事務所にとっても死活問題です。一方、キムタクという最高級ブランドを利用し、工藤静香に「できちゃった結婚」をさせることで、やや落ち目だったバーニングは売上げを押し上げました。
 ブランドというのは、きれいごとだけではありません。スキャンダルの裏側にはそれぞれのブランドイメージを少しでも落とさせない、伸ばすということが戦略として恒常的にあるわけです。

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