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ブランドとは何かU 第一回 好奇心と謎解き

 きょうは、スキャンダルについて話をしてみようかと思います。
 スキャンダルとファッション、あるいはブランドとは、一見まったく異なったことだと思われています。しかし、何か新しいことを考えたり、本質的なことを考えてゆく時に、似たものだけをつなげてみてもあまり良い結論は出てきません。例えば保育園の経営について考える際には、幼稚園と比較するよりむしろ、経営のうまくいっている予備校とか、東京ディズニーランドなどから学んだほうがいい。日産を立て直すに際しても、トヨタやソニーを真似るよりも、ミラノ市やフィリップス社のやり方を見習ったほうが、ずっといいアイデアが出てくることがあるわけです。
 では、そのことと、スキャンダルがどう関係するのか(笑)。その関連性については、おいおいお話していくとして、まず早速こちらから皆さんに聞きたいと思います。


日垣  ワイドショーはよく見ますか?
学生1 たまに。
日垣  では、ワイドショーのネタで最近(2001年7月19日の時点)、何か気になったり、印象深かったものは何ですか?
学生1 レッサーパンダの縫いぐるみを被った男の人がいましたよね? 女子大生の殺人事件の。
日垣  5月14日に逮捕されましたね。どうして印象に残ったのかな?
学生1 はい。今まで"被り物"をした犯人というのはあまりいなかったと思ったので、ちょっと印象に残りました。
日垣  "被り物"ってことが印象深かったの(笑)。
学生1 そうですね、最近そういう事件が多かったと思うのですけれども……。
日垣  そういう事件っていうのは?
学生1 女子大生が被害にあう通り魔的な殺人事件のことです。レッサーパンダの縫いぐ
るみを被っていたことで、ちょっと精神的な問題を抱えているのかなぁという意識が私のなかに残っているのだと思うんです。
日垣  今の発言は、とっても大切なことだと思うんだ。きょう話そうと思っていたことを最初に言われちゃった。スキャンダルの本質は、謎解きの部分がないと興味が持てない、ということだよね、結局は。
 では、なぜレッサーパンダの帽子を被っていたのだろうか。
学生1 ちょっとそれは未解明です、私の中では。
日垣  謎が解けなくても、あまり落ち着きが悪くなかった?
学生1 そうですね。今は似たような事件が多々あるので、日常のなかで流れてしまうっ
てことが多いと思います。一時の驚きで終わってしまいました。
日垣  レッサーパンダの男が5月14日に逮捕される前に、ワイドショーのコメンテーターも時々おやりになっている高橋伸吾っていう心理学者(精神科医)が、「犯人は非常に高等な知能犯である」と言っていたんですね。さまざまな所に出没して、さまざまな人にレッサーパンダの帽子を印象付けているのに、むしろそれがあまりにも強烈であるために、周囲の焦点が顔ではなく帽子に行ってしまう。そんなことをやってのけてしまうほど、犯人は高等知能の持ち主である、と断言していたわけです。
 でも、実際に判明した事実は全然違った。違っちゃったのに、高橋さんはまた今度は違う解説を平気で元気にやってますけれども(笑)。結論から言うと、犯人はかつて養護学校に通ってた子だったわけですね。知能指数が50位しか無かった。で、彼はレッサーパンダの帽子を被ることにすごく執着していた。小さいころから帽子が好きで、帽子を誉められることがとても生きがいのようでさえあった。逆に、「なんで、そんな帽子を被ってるんだ」と貶されると凶暴な反応を返しがちだった。彼にとっては帽子がマイブランドになっていたのだと思います。


 しかしこの日本では、犯人が例えば天才であったり、偏差値あるいは知能指数が非常に劣っていたり、病気だったり病気じゃなかったりっていうことに言及することが、マスコミの中では"差別"になるという差別的な感覚があります。山下清の作品がすごいように、人間の能力って、音楽とかファッションのセンスや能力、記憶力とかスポーツとか、どこか突出してたり、どこか劣ってたりする。その意味では、養護学校に行っていたということは事実ですから、きっちり報道すればいい。それを隠すことが"人権"だっていうなら、犯罪の背景なんて探ろうとするのは止めるべきでしょうね。
 養護学校に行っていたというだけで犯罪に結びつくなんて、だれも思っていない。むしろ思っているのは、逆にマスコミの側で、"養護学校"に触れたくないからこの事件は無かったことにして、じゃあ次の事件に行こうって判断(実際には思考停止)してしまうわけです。近いうちに、この事件に関してはそのようになってゆくと思います。
 これは謎解きの放棄です。謎を解くという部分がないと、スキャンダルは成立しないのです。

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