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「海外移転=空洞化」と考えるのは誤りだ――リチャード・カッツ(2) - 11/09/20 | 10:13


 生産の一部を海外生産に移行している製造業者を見た場合、海外生産比率は、1990年の17%から97年には31%へと上昇している。その後は30〜33%あたりで推移してきたが、今後この比率は大幅に上昇するだろう。

海外への投資は国内にも好影響

 しかし、米国の例を見ればわかるように、生産の海外移転は必ずしも空洞化を招くわけではない。逆に、前向きなグローバル化が国内の経済成長を後押しする可能性もある。企業の海外での成長と国内での成長との間にプラスの相乗作用を生み出すこともできるのだ。

 たとえば米国では、異論はあるものの、海外直接投資が国内投資、研究開発、雇用にプラスの影響を与えたことが証明されている。企業は、国内からの輸出だけに頼っていた場合よりも、海外市場でのシェアを拡大できたからだ。

 また、海外直接投資は、コストの低下と競争力アップにも貢献する。米経済研究所が米国のメーカー数百社を対象に行った05年の調査では、80年代から90年代にかけて、「海外への資本投資が10%増えると国内投資が2・2%増え、海外の従業員に支払う給料が10%増えると国内の従業員に支払う給料が4・0%増え、海外への投資が増えると国内からの輸出と研究開発費が増えた」ことが明らかになっている。

 今日まで、日本の海外直接投資は自動車、機械、電機など一部の産業におけるトップ企業か、繊維やアパレルなどの斜陽産業に限られている。HSBCの試算によると、日本からの海外直接投資の累積額は、09年時点で名目GDPの約15%にすぎない。この率は、米国の29%、英国の78%、ドイツの40%と比べて極めて低い。

 加えて、欧米諸国では外国への直接投資と外国から受け入れる直接投資とがバランスを保っているのに対し、日本では、外国からの直接投資が非常に少ない。その理由の一つは、日産自動車のようなケースを除けば、外国企業による日本企業の買収が極めて難しいという点にある。
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