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五輪銅メダリスト、そして世界チャンピオンという栄光を経て、ソチ五輪を目指すことに決めた高橋大輔と長光歌子コーチ。コーチの考える、これからの愛弟子にのぞむもの。そして師弟が考える、今後3年間の戦略。語っても語っても話題は、尽きることがない。
◆長光歌子氏・城田対談
長光「これから3年あるってことで、大輔も私も色々考えて挑戦をしてるんですが。私は夏のフレンズ・オン・アイスでペアのパン&トン(中国)たちの演技を見て、鳥肌が立ったんですよ。彼らは全公演パーフェクトで、1回1回本当にもう素晴らしくて。もしかしたら試合のルールの下でだったら、勝てないかもしれない。けれどやっぱりルールを越えて、スケートで人を感動させるってすごいことだなって…改めて思ったんですよ」
城田「私は同じことを、新潟のファンタジー・オン・アイスで見たアボット(ジェレミー)に感じた。彼のタンゴのプログラムも、鳥肌が立ったのよね」
長光「それから現役ではないけれど、ステファン(ランビエル)もやっぱり上手ですよね。私、バンクーバー五輪でも、正直に言えばステファンと大輔が一番だな、と思いました(笑)」
城田「彼は現役やめちゃったの、もったいなかったわね」
長光「本当にねえ。ジャジーなことをさせても上手いし、クラシックのプログラムを持ってくれば、それも本当に素敵ですしね。新潟から帰って信成くん(織田)に、『どうでしたか?』って聞かれてね、『ステファンが上手かったのよ!』ってまず言っちゃった(笑)。彼は現役の選手たちの様子を聞きたかったんでしょうに。城田さんも新ルールが始まる時は反対なさったけれど、私もやっぱり、本質ってまた違うものだなって思うんですよ。確かにルールの中で勝つのはすごいことだけれど、そうではなくて、もっと本当に素晴らしい、ルール度外視で人を感動させるようなスケーターに、これからの大輔には、なってほしいと思うんです」
城田「今でも十分、そんなスケーターだと思うわよ!」
長光「いや、もっともっと、そうなって欲しいです。最終的には…やっぱり大輔のようにトップクラスまで行けた選手には、いい演技を見せるだけでなく、日本人の良さみたいなものも、スケートで世界に認めさせて欲しい。外国の選手が出来ないようなことも、日本人は見せてしまうよ、って。そんな所を見せてほしい。最近、外国の方からの感想を聞くことがあって、少しは大輔も認めてもらえてるんだなって。それはうれしいんですけれど」
城田「海外の若い選手たちも、『憧れはダイスケ』っていう子、多いみたいじゃない?」
長光「うれしいですね。ヨシヨシしたくなります(笑)。かつてはただひたすら、アメリカ、ヨーロッパの選手たちをお手本に、『日本もこうなればいいな…』なんて思ってきた。今、逆にそんな風に言ってもらえるってことは、うれしいですね」
城田「演技派という点で言えば、やっぱり彼の右に出る人はいないじゃない? そんな所が、マダムのファンたちにも伝わるのよ」
長光「この間のショーを見ていてもね。なんだか彼が出てくるとお客さんが、ワッ! とすごく期待をしてるの。出てくるだけで、リンクがそんな色に染まってくのを見てね『うれしいなあ…』って」
城田「本当に、そこまでのスケーターになったんだから、大ちゃんもすごい。やっぱり見ている人に、会場全体に、グーッとこう押し寄せてくる感動。そんなものを起こしてくれる選手にこそ、表彰台に乗ってほしいしのよね」
長光「そんな存在で、いて欲しいですね。居続けて欲しいと思います。出てくるだけで、空気が変わるスケーターに」
城田「彼のいるその空間、そのものが大事なんだって、観客も、ジャッジも感じるスケーターにね。現役の男子だったら大ちゃん、アボット(ジェレミー)、プルシェンコ…。彼らがどう熟していくかが楽しみ。そこまで出来る大ちゃんの場合、ジャンプの事も色々悩むんだろうけれど、他で点数が稼げるんだから、4回転は1回跳べばいいわね。他の選手が2種類跳ぶ、何度も跳ぶからって、それで焦ることはない。1種類を、きちっと1回跳べばいい。今は4回転、フリップかトーループ?」
長光「トーループの方が、いけると思います。そのトーループも、だいぶ変わってきたんですよ。まず不思議なことにね、春の手術でボルトを抜いたことで、ジャンプが前より高くなったんです。やっぱり体に異物が入ってることって、影響があったんですね」
城田「去年はそれもあって、しんどかったのかしら」
長光「そうかもしれません。それはスケートの伸びにもいい影響があったみたい。それともう一つ。今年、スケート靴を変えてみたんですよ。ずっと10年間履いていたメーカーから、今度はイタリアのメーカーのものに」
城田「イタリアにも、いい靴があるっていうわね」
長光「その靴がすごく軽くてね。初めのうちは、『もうちょっと重い方が僕は好きだな』なんて言ってたけれど、履いてみたら合うみたい。だから今、靴が軽い分、ジャンプも変えないといけないんです。重い靴の時は、ブンッ! て靴を重りにして回ってたんですけれど…」
城田「靴を振り子にして、振り上げてた」
長光「ええ。それが出来ないから、色々試行錯誤してる途中なんですが、この軽い靴でのジャンプが完成できれば、すごく良くなるんじゃないかな。26歳だから4回転が跳べない、なんてことも、絶対ないと思うんですよ」
城田「うん、やれると思うよ!」
長光「靴を変えたことも、ちょっとしたチャレンジですよね。フランスにスケーティングを習いに行った事もそうですけれど、今年はソチ五輪までのロングパスだと思ってね。色々挑戦してる。それもソチまで続けるって決めたからできること。今年だからできることですよね」
城田「良かったじゃない。色々覚悟ができたみたいで!」
長光「はい。こうなったら3年計画で『一からやり直しだ』と。脚も変わったし、『4回転も、一からまた作ればいいわ』と思ったりね」
城田「すごくいいんじゃない? まず今シーズン、最初がスケートカナダ。そこでパトリック・チャンとぶつかるのね」
長光「そこはちょっと…まだ10月は、仕上がってないと思うんですよ。ジャンプなんて今月(9月)から練習始めたようなものだから(笑)。まあ、1回一緒に戦って、どんな感じかつかんで」
城田「まあ、最後に勝てばいいんだからね。グランプリでも、少しずつ自分と周りの様子を見ていく感覚で」
長光「はい、新しい靴にも少しずつ慣れて行くと思いますし」
城田「欧米の選手なんて、みんな世界選手権に合わせて上げていくんだから。前半ダメでも、3月にはジャンプもプログラムも、ばっちり決まる。大ちゃんだって、世界選手権に合わせていけばいい」
長光「本当に、その点は海外の選手たち、うまいですよね。日本人はみんな真面目に、最初の試合からちゃんとしよう、と頑張っちゃいますけれど」
城田「大ちゃんのような選手だったら、もっと長いスパンで考えてもいいのよね。最後にソチで金メダル、でね」
長光「フフフ、ありがとうございます。このシーズンオフで、一度こうして仕切り直せたのは、ものすごく良かったと思いますし。これまでは一年一年で区切って、目標を考えていった。だから、今年一番の大会までに跳べなかったらどうしよう、なんて思ってたんですね。でもあと3年ってスパンで考えたら、ずっと気が楽になった。だから若い子たちはジャンプのことを考えてるけど、大輔はまずは今年、土台のスケーティングに手をつけて、とね」
城田「それは正しいわね。今年はこの課題、次はこっち、と。少しゆとりを持ちながら一つ一つの課題を攻めていくのね。他の選手は、跳べるけれど滑れてない、エッジが利いていない部分があるだろうから、そこで差を付けられるしね。そこで大ちゃんの巧さを、前面にだせるわよね」
長光「そうなれるように、いろいろ焦らず、積み重ねて。一年一年テーマを大きく掲げて、なにか前進していきたいと思ってます」
城田「ベテランになると、前に進むのは難しい。あのプルシェンコだって、ここから進化するのは難しいかもしれない。だけど大輔は、進化するつもりでいる。これから少しずつでも、さらに戦っていく大ちゃんがぐっと進化したとしたら、私はすごい満足だな。もちろん常に努力をしなければいけないけれどね。体を大事にしつつ、効率のいい練習をして、それで大ちゃんの良さを前面に出していけるように」
長光「本当ですね。ぜひサポートしてやってください」
城田「でも、そんな風に落ち着いた考え方が出来るのも、歌子先生が世界チャンピオンを一人作りだせたから。余裕が出てきたってことよね」
長光「私が作ったわけじゃないですよ! みなさんがしてくれたんです」
城田「それでも日本人男子では一度も成し遂げられなかったこと。やっぱり先生がしっかりしていなくちゃ、出来ないことよ」
長光「まあここまでで、度胸はつきましたけれどね(笑)。これで玉砕したらそれでもいいや、と今は思えます。でもバンクーバー五輪の時も、トリノ(世界選手権)で優勝した時も思ったんですけれど、日本の歴代の先輩たちがこうして作り上げてきてくれて、その上に大輔のメダルがあるんですよ。それは、絶対。いきなりドーンと、自分だけが跳び出していったって、何も出来ないでしょう?」
城田「みんなが道を作ってきてくれたからね。誰かが歩いてきた道があるから、その道のもう一つ先を狙えるのよね。一挙に一番下から一番上までは、上がれない。かつて信夫ちゃん(佐藤信夫氏)が現役時代の頃なんか、『フィギュアスケートで日本なんて」という考え方があった。試合に行っても、日本選手はお客様扱い、何て雰囲気だったから、実力的にメダルを取れるはずの選手も取れなかった」
長光「そうなんでしょうね。また大輔たち、今の選手たちが次の世代の踏み台になれば、次の選手たちはまたどんどん上に行けるでしょうし。選手もだけれど、コーチの先輩も、連盟の方々も、色々な所で色々な努力をしてくれて、今があって、こうしてメダルを取れたんやな、って…すごく思いますね」
城田「だからこれからの選手たちの方が、トップに届きやすいと思うのよ。大ちゃんあたりが、たぶん険しい道を切り開く最後の世代。今年は崇彦君(小塚)も、続いてくれたしね」(続く)
(2011年10月26日17時11分 スポーツ報知)
1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。
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