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【コラム】オリンパス、疑惑浮上でも侮れない医療機器事業の価値

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 オリンパスにはこのところ透明性が欠けている。だが、拡大を続けるガバナンス(企業統治)危機にしっかりと目を凝らせば、根底にある同社の価値の一部が透けて見えるはずだ。

Reuters

マイケル・ウッドフォード氏

 オリンパスにとって通常業務が何を意味するにせよ、その業務をめぐる疑惑の追及を免れないのは確かだ。オリンパスは、投資家が現在疑問を投げかけている投資助言会社への支払いと企業買収の金額に関して、いかなる不正行為も否定している。マイケル・ウッドフォード前社長兼最高経営責任者(CEO)はそれら取引の金額を甚だしく高額だと述べた

 オリンパスの評判は地に落ちている。同社株価は25日、8.2%急反発したが、これは恐らく空売り筋による買い戻しの影響によるもので、投資家心理が好転したわけではない。

 だがオリンパスの中核事業は医療機器だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、世界の内視鏡市場におけるオリンパスのシェアは75%だ。医療事業部門は、同社の未来に暗雲を投げかけている泥仕合の渦中にはなく、しかも20%という健全な営業利益率を達成している。同社は2012年3月期の医療事業部門の予想営業利益を700億円と見込んでいる。

 オリンパスの騒動が拡大するにつれ、HOYAや富士フィルムホールディングス、米ジョンソン・エンド・ジョンソンといった内視鏡メーカーは、新たな選択肢を検討し始めているに違いない。証券会社CLSAは、オリンパスの医療事業部門の買収には約107億ドル(約8140億円)以上は必要になると見積もっている。この価格は、その圧倒的な市場地位により、同部門が同業他社よりもかなり高い評価を受けていることを示すものだ。

 また、CLSAの評価額はオリンパスの現在の時価総額の2.5倍であり、同社全体の企業価値を数億ドル上回る金額だ。実際、医療機器以外の同社事業の展望はあまり魅力的ではない。

 デジタルカメラ事業は市場競争が激しい上、これといったヒット商品もなく、在庫管理もずさんなことからシェアを落としている。同事業部門は昨年、150億円の赤字を計上しており、今年もわずかな黒字を見込んでいるにすぎない。その他の事業の多くは化粧品や医療廃棄物処理、電子レンジ調理容器など互いに関連性のないものばかりだ。それら3社は過去3年で合わせて3億1500万ドルの損失を積み重ねている。

 だが、同社が倒産する可能性はごくわずかにみえる。確かに自己資本比率は低く、疑惑の焦点となっている過去に買収した企業の一部について、今後多額の減損処理を余儀なくされる可能性はある。だが借金の大半は長期借入金であり、中核事業は堅実なキャッシュフローを生み出している。したがって、何らかの契約違反を犯さない限りは、同社が倒産する公算は小さい。

 TOB(株式公開買い付け)が仕掛けられる可能性はある。だが、合わせて14%の株式を保有する日本生命や三菱UFJフィナンシャル・グループなどの大口投資家は、仲間である日本企業を敵に回す気はまだないだろう。買収を検討している企業も、騒動の行方を見届けるまでは買収には踏み切らないとみられる。だが、医療機器事業については、ライバル企業が適正な価格を提示する可能性がある。

 25日にやや値を戻したとはいえ、オリンパスが依然厳しい監視の目にさらされていることに変わりはない。数週間前にウッドフォード氏が解任されて以来、同社株価は50%以上下がっている。だが、現在の水準であれば、株を手放す前に、まずオリンパスの中核事業の価値を考慮すべきだろう。

[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]

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