
県内各自治体では六十五歳以上の一号被保険者となる人たちの介護保険料が出そろい始め、八月二十三日には各種介護サービスの報酬基準仮単価が厚生省から発表されました。
また取り組みの早い市町村では要介護認定申請受け付けも始まり、いよいよ十月からは各市町村の介護保険適用申請者の認定通知が出てきます。
そこで重度の介護が必要と判断された場合は、訪問介護サービスを本年度内から前倒しで実施することになるとも言われております。
高齢者の介護需要に対するサプライ側であるサービス提供事業者の指定申請も七月一日から県へおこなわれておりますが、報酬基準仮単価が示されたことで、施設介護などを行ってきた既存の社会福祉法人や民間大手福祉事業者に肩を並べ、私どもNPO法人やボランティアグループも一挙に事業化計画が進められるようになり、来年四月からの介護保険施行体制の需給関係は一応整ってきたと言えます。
国も一層の民間参入を促すということで、私どもNPO事業者やボランティア団体のサービス提供に、利用者の方々から相当の期待感をお寄せいただけるものと思っております。
NPO法人「あすなろの会」は地域相互扶助、主婦高齢者雇用を中心の介護サービスをモットーとして現在、米沢市矢来地区で「ケアホームあすなろ」を運営しております。
平成九年一月に、公的な施設利用も手続きが難しかったり、制限があるなど緊急時すぐに対応してもらえないという声が多い中、いくらかでも家庭の雰囲気をつくりながら地域住民の相互扶助とそれぞれの持っている介護技術を生かせる場所として二十四時間対応の民間託老所を開設したのです。
しかし、実際運営してみますと社会福祉法人などの公的補助のある施設と全く私的民間施設とでは運営の基礎となる利用者の料金格差は否めず、結局福祉施設の設備運営における制度上の官民格差が直接利用料金の負担増となることから、公益の機会均等の見地からも公的補助対象となるよう法人化などを模索しておりました。
一方、国においても在宅介護支援事業における民間参入の方策が図られていたことから、当施設を米沢市デイサービス事業E(痴ほう)型弾力基準対象施設として認めていただき、平成十年十月一日より米沢市デイサービス六番目の委託先として「あすなろデイサービスセンター」を運営しております。
現在は来年四月からの介護保険制度による居宅サービス事業者の指定を受けるべく申請準備に入っております。
介護保険制度の導入で、介護福祉の在り方が一変して国での財源論も政党間に差異があるようですが、介護の現場は時間的猶予のないところにあり、スムーズな介護保険の運営を望みます。
また私どもNPO事業者や民間福祉事業者は介護サービス事業参入にあたって、既存の社会福祉法人営などの施設と異なり施設の設置や設備整備は原則自前で行われなければならず、施設の必要な介護サービス事業運営のコストに当初から明らかなハンディキャップがあることから、国では民間参入促進の声とともに現行老人福祉法の改正とNPO法人などの民間事業者への支援対応を今後の施設整備計画の中でぜひとも検討実現されるよう強く要望いたします。
一方視点を変えて論じれば、世界に先例のないわが国の超高齢化社会に対する国の施策は介護保険制度によって要介護要支援者への対応は評価されるものの、全高齢者人口の七五%を占める要介護、要支援の状態にない「元気老人」維持への取り組みこそが本来の高齢者対策と言えるのではないでしょうか。
米沢市の高齢化率は現在20.6%ですが、もう一つの指数である年少人口と対比した老年化指数を見ると昭和三十年代は14.6だったのが平成七年国勢調査時では115.2となり、実に八倍の開きがあり、少子高齢化の高まりは確実です。 その意味で「要介護」から「予防介護」への取り組みに予防医療対策の停滞の轍を踏むことのないよう国や地方自治体、議会を問わず真剣でさまざまな提案がなされるべき時機に来ていると思われます。