中心市街地衰退に歯止めを
長崎市中心部、浜町アーケード街の象徴的な存在として市民に親しまれてきた老舗百貨店、博多大丸長崎店(長崎大丸)が7月末で閉店することになった。
百貨店経営が厳しさを増しているのに加え、近年、市内各地に大型商業施設が相次いで登場し、買い物客の流れが中心部から離れつつあることが、長崎大丸を苦境に追い込んだ。
前身の岡政百貨店時代から、近くの浜屋百貨店とともに、アーケード街を代表する華やかな顔として親しまれ、集客の核としても大きな役割を果たし続けてきた長崎大丸。その閉店は、中心商店街の衰退を象徴する事態として危機感を持って受け止められている。
都市の中心部がにぎわいを失えば、都市全体の活力も低下する。多様な大型商業施設が展開して消費者の利便性が向上するのは良いことだが、それが中心市街地の空洞化を招き、都市の地盤沈下につながる事態は放置できない。中心部と周辺部の商業機能が補完し合う形で配置され、それぞれがネットワークで結ばれながら共存共栄していくような都市の全体設計図が必要だ。
そのネットワークを活力に満ちたものにするためにも、中心商店街の衰退に歯止めをかける活性化策が急務だ。長崎大丸閉店が呼び起こした危機感をばねに、浜町(はまんまち)復活の取り組みを加速させたい。
長崎大丸を閉店する主な理由として、博多大丸経営陣は(1)市内他地域に大型商業施設ができて人の流れが変わった(2)大型駐車場を持たないため、マイカー客の足が遠のいた−などを挙げた。地元商店街が抱いていた不安が表面化した格好だ。これは長崎市だけでなく、県内多くの市町の中心市街地が抱える悩みでもある。こうした課題を解決する多角的な対策が必要だ。
その一つとして考えられるのは、商店街が大型駐車場を共有し、そこに車を置いた買い物客をシャトルバスで誘導する「パーク・アンド・ライド」方式の実現だろう。旧来の商店街が車社会に対応するには、これが最も有効とされている。
もう一つは、中心市街地が時代を先取りした商店街へと変容を遂げ、新たな魅力を備えることだ。これには既に答えが示されている。2006年に「県にぎわいの都市づくり検討委」が知事に提言した「コンパクトシティ」構想だ。商業、医療などの都市機能を中心部に集中させることで、高齢者が買い物や病院通いを同時に済ませられるという利点がある。提言の実行を急ぐときではないか。
高齢化社会の商店街には、利便性だけでなく、安心してゆったりと過ごしながら買い物もできるという新しい機能が求められる。休憩用ベンチを多数配置し、随所にポケットパークを設けて緑あふれる空間を創造すれば、高齢者や子ども連れの買い物客が足しげく訪れるようになるだろう。未来志向の新しい発想で取り組めば、中心市街地復活の夢は無限に広がっていくはずである。(高橋信雄)