国立環境研究所 社会環境システム研究センター

環境経済・政策研究室

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平成23年度の成果

タイトル
多地域応用一般均衡モデルを用いた渇水時の水資源配分の経済的評価
著  者 岡川 梓、増井 利彦
研究の概要 近年、世界各国で水資源の希少性が認識されるようになり、費用効率的な水資源 配分を実現する仕組みとして水資源の価格付けが行われている。日本において も、渇水時の効率的な水資源配分を通じた水利用の安定性の確保や、未使用淡水 資源の有効利用といった観点から、水の市場取引制度(水取引)に目が向けられ 始めている。本研究では、多地域応用一般均衡モデルを用いて、渇水時の水取引 による水資源配分として用途間の水取引に注目し、用途ごとに水利用が限られて いることの費用を定量的に評価した。分析の結果、渇水が発生する地域によっ て、部門別・周辺地域への影響は大きく異なることがわかった。また、水資源利 用の限界便益は部門ごとに大きく異なり、用途間の水取引を実施することで渇水 による経済への影響は全体として緩和されることが示された。
掲載誌情報 上智経済論集 掲載予定

タイトル
市場は企業の潜在的なリスクを評価するか?−日本における実証分析−
著  者 小俣 幸子
研究の概要 日本では、2001年4月から始まった化学物質排出移動登録制度(Pollutant Release and Transfer Register; PRTR制度)によって、投資家は企業の化学物質の 排出量と移動量に関連する潜在的なリスクを知ることが可能となった。 この情報が入手可能になったことで、投資家は化学物質の排出量・移動量の多い企業 の価値を低く評価し、少ない企業の価値を相対的に高く評価する可能性が出てきた。 市場が化学物質の排出量と移動量をどのように評価するのかを明らかにした 先行研究はいくつか存在するが、必ずしも同じ結論に至っていない。このように 分析によって結論が異なるのは、化学物質のリスクに対する除去変数バイアスを 考慮していないことや、化学物質の排出量と移動量を区別していないといった分 析方法の問題に起因している可能性がある。本稿は、企業レベルのデータを用い てこれらの先行研究の欠点を修正した。その結果、排出量の増加は、企業の市場 の評価を低下させるが、移動量の増加は、市場の評価に影響を与えないことが示された。
掲載誌情報 環境科学会誌第24巻5号、2011年

タイトル
ヘドニック・アプローチによる東京都区部の洪水被害額の計測
―浸水リスク変数の内生性を考慮した分析―
著  者 岡川 梓・日引 聡・小嶋 秀人
研究の概要 浸水被害に関する研究は,これまでに数多くの成果が蓄積されてきたが,(1)川への距離や標高などを洪水リスクの代理変数として用いているために,他の外部便益や外部費用の効果を分離できていない,(2)ハザードマップを利用したリスク変数を使って分析しているものの,除外変数によるバイアスを考慮していない,などの問題があり,被害額を過小評価あるいは過大評価している可能性がある.本研究では,これらの問題に対処するために,ハザードマップを利用したリスク変数を利用し,除去変数バイアスを考慮した上で,ヘドニック地価関数を推計し,洪水リスクの価値を推計した.その推計結果から,(1)地価は,洪水リスクに直面することによって約14.5%低下していること,(2)単位面積当たりの洪水被害額は141万円/uに上り,東京都による試算結果5万円/uに比べて著しく大きい値となった.
掲載誌情報 社会環境システム研究センター ディスカッションペーパー No.11-0002
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