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2011年10月26日(水)付

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原発と自治体―次の道を考えるときだ

野田政権が「脱・原発依存」を進めていくうえで、向き合わなければいけない大きな課題のひとつが、原発を抱える自治体との関係だ。70年代、石油危機をへて、日本は原発の増強へと[記事全文]

危ない自転車―歩道は歩行者に返そう

歩道を猛スピードで走る自転車に肝を冷やした人は少なくないだろう。本来、自転車は道路交通法で軽車両に分類され、歩道ではなく車道の左側を走る決まりになっている。車道では自転[記事全文]

原発と自治体―次の道を考えるときだ

 野田政権が「脱・原発依存」を進めていくうえで、向き合わなければいけない大きな課題のひとつが、原発を抱える自治体との関係だ。

 70年代、石油危機をへて、日本は原発の増強へとかじを切った。建設地の多くは、これといった産業がなく、過疎に悩む市町村だった。

 迷惑施設を受け入れてもらう見返りに、計画の段階から巨額の交付金が地元に落ちる仕掛けが設けられた。道路や体育館といった箱モノが、交付金や固定資産税などをもとに次々に整備された。03年からは町内活動や病院の人件費といったソフト面にも使えるようになった。

 財政が潤う一方、原発依存度は高まった。一般会計に占める原発関連収入の割合が6割を超える自治体もある。

 だが、福島第一原発の事故をへて、変化が起きている。

 東北電力の原発計画がある福島県の浪江町と南相馬市は、今年度の交付金を辞退すると表明した。原発発祥の地、茨城県東海村の村長は東海第二原発の廃炉を政府に提案した。立地自治体がみずから廃炉を求めたのは初めてだ。将来的な交付金の減額を想定し、対策を考え始めた自治体もある。

 政府は、エネルギー政策を転換するうえで、こうした自治体の問題意識をきちんと受け止める必要がある。

 交付金の仕組みが、地域振興の名目で、ただのバラマキと化し、本当の意味での自治を壊していないか。きちんと検証し、資金の使い方を見直さなければならない。

 引き続き原発の推進を掲げる自治体もある。ただ、周りの市町村は慎重な姿勢を強めている。防災区域の拡大が検討されるなか、原発の存廃は立地自治体だけでは決められない。周辺市町村と一緒になって、次の道を考えるときではないか。

 もちろん、脱原発で交付金などを突然打ち切られては地域経済も立ちゆくまい。どのような移行措置をとるべきか。分散型のエネルギー社会への転換に地域が果たせる役割とは何か。自治体自身が考え、アイデアを実現していくためにも、政府は話し合いの場を用意すべきだ。

 都市部の住民も「知らぬ話」で済まされない。交付金の原資は電源開発促進税として、電気料金に上乗せされて徴収されている税金だからだ。

 原発マネーのあり方を見直すことは、税金をどう使うかという「再分配」の新しいルールを模索する作業でもある。

 国民みんなで考えたい。

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危ない自転車―歩道は歩行者に返そう

 歩道を猛スピードで走る自転車に肝を冷やした人は少なくないだろう。

 本来、自転車は道路交通法で軽車両に分類され、歩道ではなく車道の左側を走る決まりになっている。車道では自転車は車と同じ方向に走っている。

 だが、歩道ではどうだろう。「自転車通行可」の標識があるところは「自転車歩行者道」と呼ばれ、例外として自転車も走ることができる。そこでは人と自転車が自由な方向に動き、危険な状態が続いている。

 警察庁はこうした歩道で、自転車の進行を一方通行にできる新たな規制を、早ければ年内に始める予定だ。

 確かに、一方通行は事故を減らす一定の効果があるだろう。ただ、そこはもともと、歩道である。むしろ自転車の通行の廃止をめざすべきだ。

 例外のはずの自転車歩行者道が、今や歩道の5割近い。警察庁もようやく、歩行者の安全を重くみて、幅3メートル未満の歩道は自転車の通行の許可を見直すことを決めた。「通行可」の標識のない歩道に自転車が入っているのも止めなくてはいけない。

 日本以外の先進国で、歩道を自転車が走っている国はない。

 70年と78年に道交法が改正され、自転車歩行者道ができた。車との事故が増え、自転車に乗る人を守るためとされた。

 これが、間違いの始まりだった。その結果、今度は歩行者と自転車の事故が増え、昨年は2760件と10年前の1.5倍。なかでも東京都内では1039件で全国の4割近くになる。

 自転車にルール違反が多いのも困ったことだ。信号無視や無灯火にくわえ、携帯電話を使いながら走る人も目につく。

 ひどい違反の場合は、刑事処分の対象となる「赤切符」の制度がある。例えば夜間の無灯火走行は5万円以下の罰金だ。警察庁によると、昨年は全国で2403件の赤切符が出た。

 歩行者の被害を救うために、自転車に保険への加入を強制する制度も考えるべきだ。

 クルマ社会から自転車への流れは応援したい。歩行者のためにも自転車のためにも、車に偏った道路造りを変え、自転車の走りやすい道を増やそう。

 宇都宮市では車道左端に「自転車レーン」を設けたところ、自転車と歩行者の関係する事故が約4割減ったそうだ。

 全国の主要道の8割強で、車道の両端に線を引くだけの自転車レーンを簡単につくれることが、国土交通省の研究者の試算でわかっている。そんな工夫で歩道を歩行者に返そう。

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