タイ洪水 政争に明け暮れ、治水対策放置
首都バンコク中心部にまで迫った洪水は自然災害にとどまらず、「人災」でもあるとの批判が高まっている。チャオプラヤ川上流にあるダムの管理不備、老朽化した灌漑(かんがい)、排水システムも洪水の要因であり、「水のコントロール」ができていない実態が浮き彫りになっている。
タイでは昨年、水不足が深刻化した。雨期とされる5月以降も北部、中部などで雨が降らず、国内のダムの貯水率は落ち込んだ。
これとは正反対に、今年は断続的な豪雨。「本来は、一定のレベルに水量が達したらダムの水を放流すべきところを、乾期の水不足を恐れ水をため込んだ」(専門家)という。
その後も少しずつ放流することなく、水量が予想を超えて増えると、慌てて北部ターク県のプミポンダムなど複数のダムで、大量の水が同時に放流された。プミポンダムだけでも貯水容量は134億トン。これは琵琶湖のおよそ2分の1で、大量の同時放流が洪水被害を拡大させた。さらに、気象観測レーダーなどが老朽化しており、整備の必要性が指摘されてきたにもかかわらず、放置されてきた。このため「正確な気象データを把握できず、水量の予測と放流の量、時期の判断を誤った」(同)という側面もある。
タイには、「水の都」といわれるバンコクをはじめ、運河網が整備されてきた古い歴史がある。バンコクには1700本の運河が張り巡らされ、総延長は約2600キロにのぼる。
バンコクに限らずチャオプラヤ川上流を含む運河網は(1)外敵の侵入防止策(2)物資などを輸送する交通路(3)排水、灌漑システム−としてつくられた。
これまでは大雨が降っても、運河やチャオプラヤ川に排水され、タイ湾へ流し出されていたシステムは今回、記録的な豪雨に加え、ダムの放流によって許容量を超えた。このため、増水して水があふれ出し、堤防が決壊した。
だが、運河の水門を開け「水抜き」をすれば、その勢いで周辺地域が浸水する。それでも政府が19日から20日にかけ、バンコク近郊と市内の水門を開けたのは、一部地域は犠牲にしても、大規模かつ広域の決壊などによるバンコク全域の浸水を防ぐ狙いからだ。
その過程では、数カ所の水門が老朽化で機能せず、大急ぎで修理が施された。これはほんの一例だが、それほど灌漑、排水システムは傷んでいる。
タクシン政権時代、灌漑の整備が打ち出されたが、クーデターで政権に終止符が打たれ実現しなかった。アピシット前政権は、親タクシン派との政争に労力を費やし、治水どころではなかった。その意味で今回の洪水被害は“政災”ともいえるだろう。(青木伸行)
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