「時事深層」

オリンパス社長解任劇、すべての真相を話そう

渦中のひと、ウッドフォード前社長の告白(1)

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2011年10月26日(水)

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 CEO兼任からわずか2週間後に解任されたマイケル・ウッドフォード氏。オリンパスの外国人社長としてマスコミの注目を浴びた。だが、就任からわずか数カ月後に、過去の買収案件に「巨額損失がある」と追及して、会長など他の経営陣と対立を深めていった。彼が語る生々しいやりとり。そこに、解任劇の真相があった。「このまま問題を放置すれば、日本経済は悪化の一途をたどる」。

(聞き手は石黒 千賀子=日経ビジネス副編集長)

 10月20日午前11時30分。英ロンドン中心街のホテルで、オリンパス前社長のマイケル・ウッドフォード氏の到着を待っていた。2日前、彼から「取材を受ける」というメールが届いた。電話で連絡を取ると、興奮した声でこうまくし立てた。

 「身の危険を感じているから、とにかく詳しく話をして真実を世に広めたい。電話より会ってじっくり話したい」

 そこで、飛行機に飛び乗って、ホテルの一室で待った。約束の時間から30分が過ぎていた。本当に現れるのか不安がよぎったその時、大柄な英国人が姿を見せた。

 「すみません。朝8時からメディアの取材が続いていたので。腹ペコだから、食事を取っていい?」

 そう言うと、ステーキサンドイッチを注文し、ついに2時間を超えるインタビューが始まった。

ロンドンのホテルに現れたマイケル・ウッドフォード氏
1960年生まれ。81年、オリンパス英子会社に入社。2004年10月、オリンパスメディカルシステムズ取締役。2008年4月オリンパス・ヨーロッパホールディング社長、2011年4月オリンパス社長。10月14日解任される。(写真:永川 智子)

 まず、問題として指摘したいのは、英医療機器メーカーのジャイラス買収の件だ。2008年に、オリンパスが20億ドル(当時の為替レートで約2000億円)を投じて買ったことは知っていた。私は当時から、「買収価格が異常に高い」と批判的だった。それは社内の多くの人が知っていることだ。

 でも、そのことはまだいい。問題は、買収後に買収価格の3分の1に当たる6億8700万ドル(約520億円)もの手数料を財務アドバイザー(FA)に払っていたことだ。これは全く知らなかった。しかも、支払った相手は、英領ケイマン諸島にあるAXAM(アクザム)という会社などで、実態はいまだに誰も分からないという。そんなことが許されるわけがない。


隠し続けた雑誌記事

 すべては、雑誌「ファクタ」8月号に載った記事が始まりだ。あれがなければ、私は今でも何も知らないまま社長を続けていただろう。

 その記事には、2006〜08年にかけて買収した国内3社のことが記されていた。医療関連の産業廃棄物処理を手がけるアルティス、電子レンジ用容器を企画・販売するNEWS CHEF、化粧品を通信販売するヒューマラボの3社で、そこに合計700億円ものカネを投じていた。いずれも本業とほとんど関係がないうえ、買収額に見合うような売上高がない。社外の親しい友人が見つけて、わざわざ英訳して「この記事を見ろ。深刻な内容だぞ」と教えてくれたんだ。


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石黒 千賀子(いしぐろ・ちかこ)

日経ビジネス副編集長。



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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。

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