彼の母親が帰った

彼は彼女だと言うからと
言っていたけど
いつ、言ったのか
まだなのか

なかなか聞けないし

そうこうしているうちに
来てしまい

はじめまして って挨拶した

お茶を出したらおかまいなくと
言うけど

おいおい、ここは私の家なんだから
おかまいしなければ、どうやって
ここで泊まるつもりかと思ったりしたけどね

キッチンで、彼にそっと
なんて言ったの?と聞いたら
彼女だって言ったよと 彼

でも、微妙な空気でいたたまれない

空気を読まない母親はしばらく
どーでもいい親戚の話を彼と
永遠としていた

私の部屋は母親に貸してしまったし
彼の部屋でくつろぐのはおかしいし
リビングでなんだかんだと話していて

ずっとキッチンで立っていた

おいおい、考えてよ
まったく親子そろって勝手なんだよね

やっと、長いどうでもいい話が終わって
彼がタバコを吸いにでた時に
また挨拶

彼女と言っても、離婚してまだ
2カ月
離婚から初めて母親と彼は会うのだし

そこへ、彼女ですって紹介もいきなり
すぎだよねー

でも、彼が紹介すると決めたのだしね

もう、3日前から、布団だ、掃除だ、料理だと
本当に大変だったよ
それでも、元嫁よりできる女なんだと
わかってもらいたくてね

それから、私の車で、夜景をみに行ったの
そこでも、彼とちょっとひと悶着あって

前日、飲みすぎで終電のがして
歩いて帰宅したかれはほとんど寝てないし

3日前から、ほとんど寝てなくて
体力の限界の私

それでも、明るく笑顔でふるまって
彼の母親の空気になんとか、染まる努力を
してみる

1時間くらいすると少しはなれてきた

彼は、私と歩くと母親が嫉妬するし
母親とばかり歩くと、私が疎外感を
味わうと思ったらしく

母親と私がともに歩くように
自分は先に歩きはじめた

心の中ではきっと

ねえ、息子、この女に会うなんて
私は聞いてないわよ
まったく、水入らずで過ごせると
思ったのに、と思っているだろうし

私は、あのさーー、緊張限界なんだから
もうすこし、ふたりの仲をとりもっても
いいじゃない?と思う

彼は、頭のいい私なら、母親を怒らせる
ことはないと思っている
まあね、お局さんとかに仕える技くらい
若い時に学んだしね

これでも、紹介された相手の親には
絶賛されるんだもの、いつもね

帰ってきて、彼の母親が女王様気質を見抜いた
私はへりくだって、自分の作ったものを
食べて欲しいと言った

ちらしずしに、生地も手作りのきのこピザに
すきやきに、マリネに、サラダ、自家製のぬか漬け
えびの唐揚げ、とか、とにかくがんばった

普通なら、誉めるところを、お世辞も言わない
そもそも、まずいわけがない
ピザだって、まずくはつくれない
チーズを作ったわけじゃないしね

マリネだって、サーモンがまずいわけじゃ
ないしね、

エビだって、まずいわけないし

でも、絶対に誉めない
これは女の意地なんだろうね

息子が離婚して自分のものになると
思ったらすでに女がいた  っていうね

これは1歩でも2歩でも下がらないと
大変だな

そんな予感がする

彼がトイレに入ったと思ったら
携帯に彼からの着信音が聞こえる?
えっ?どうして?

何か?
母親に聞かれたくない何かなんだと
あわててメールをみると

ありがと  って一言

うん、いいよ、お母様を喜ばせる
ことが大切だものね
離れて暮らしているから
こういう時に親孝行しないとね

そして夜も更けていったのだけどーー

続く