【上海】トヨタ自動車は22日、中国・江蘇省で研究開発センターの建設を開始した。6億8900万ドル(約530億円)を投じるこのセンターは、ハイブリッドその他代替エネルギー車向けの技術を使った生産を中国にシフトする準備の一環になる見通し。
中国政府は新たな規則で、同国でのエコカー生産・販売を目指す海外自動車メーカーに対し、一部基幹部品を同国で生産することを義務づけるとみられる。トヨタは需要減退などを理由にハイブリッド車「プリウス」生産を2009年に停止しているが、消息筋によると生産・販売を再開する意向だという。
中国でのプリウス事業は来年にもスタートする可能性があるが、日本から投入する完成部品の組み立てが中心になる予定だ。そのため、個々の部品やシステムの製造ほど高度な作業にはならないとみられる。しかし、技術センター開設は、ついに中国で高度な作業を行う準備を進めているシグナルだ。ただ、消息筋によると、同社の最新技術は別の場所で開発・生産の予定。
トヨタは09年発売のプリウス最新モデルを日米など世界中で販売しているが、中国は例外。同国の合弁相手に技術優位を奪われかねないと懸念が理由だ。
しかし、ゼネラル・モーターズ(GM)など競合他社が、「新エネルギー」技術共有への意欲を示すといった目的から、中国での電気自動車やハイブリッド車生産を打ち出すようになった。そのため、トヨタも現世代のプリウスを同国で生産し、いずれは強力な電気モーターや高度なバッテリーなどの基幹部品を製造すると決めた。
また、新エネルギー車の研究・開発を今回開設した技術センターで行う計画だ。 同社によると、稼働開始は13年の予定。
豊田章男社長は22日の起工式で、15年にも中国でハイブリッド車基幹部品生産を開始する計画を明らかにした。「(新しい技術センターが)急いで進めていかなければいけない仕事は、環境技術の中国での現地化の推進だと言える。トヨタがいま中国にお役に立てることがあるとすれば、それはやはりハイブリッド技術とその応用系のPHV(プラグインハイブリッド)だ」としている。
中国のエコカー規則はまだ発表されていない。ただ、業界幹部によると、同国でエコカー生産・販売を目指す海外メーカーは、国内企業の管理する合弁会社を設立するよう義務づけられる公算が大きい。そのため、海外メーカーの間では、同国ライバル社が自社最新技術へのアクセスを得かねないとの懸念が浮上している。
トヨタは中国合弁相手に技術移転をする姿勢を強調しているが、複数の消息筋によると最先端技術は共有しそうにない。
たとえば、中国での生産を計画しているプリウス現行モデルと部品は市場に出回って2年以上たつ。消息筋は、数年後に発売予定の次世代プリウス向けに開発している技術の共有はありそうにないと述べた。
同社は先週末、PHVや電気自動車を13年から中国で販売する計画を明らかにした。ただし、日本から輸出する予定だ。