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国内主要SI企業の業績は軒並み前期比マイナス

国内主要SI企業11社の2010年度3月期(キヤノンマーケティングジャパンと大塚商会は2009年12月期)決算が出揃いました。各社の決算短信から「売上高」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」を拾い出し、一覧表にして眺めてみました(表 国内主要SI企業11社の2010年度3月期業績一覧)。

  売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
NTTデータ(H22.3)
1,142,940
81,689
75,722
35,662
0.3
▲ 17.1
▲ 20.8
▲ 26.3
キヤノンマーケティングジャパン(H21.12)
686,614
6,297
8,222
▲ 4,343
▲ 17.0
▲ 75.2
▲ 68.3
---
大塚商会(H21.12)
429,927
16,094
16,427
8,782
▲ 8.0
▲ 40.6
▲ 40.5
▲ 38.9
野村総研(H22.3)
338,629
40,077
40,947
21,856
▲ 0.8
▲ 19.4
▲ 20.8
▲ 10.8
ITホールディングス(H22.3)
313,856
15,996
15,719
7,659
▲ 7.2
▲ 32.8
▲ 33.4
▲ 18.6
日本ユニシス(H22.3)
271,084
7,105
6,918
3,626
▲ 12.6
▲ 55.3
▲ 54.2
---
伊藤忠テクノソリューションズ(H22.3)
290,391
21,569
21,627
12,461
▲ 5.5
▲ 0.5
▲ 1.8
▲ 3.7
新日鉄ソリューションズ(H22.3)
152,158
10,790
11,221
6,298
▲ 5.8
▲ 6.2
▲ 6.0
▲ 1.0
住商情報システムズ(H22.3)
127,317
6,423
7,188
3,242
▲ 5.2
▲ 28.8
▲ 24.5
▲ 18.2
電通国際情報サービス(H22.3)
61,155
▲ 295
▲ 238
▲ 137
▲ 18.6
---
---
---
三井情報(H22.3)
48,999
2,574
2,674
1,424
▲ 8.5
▲ 36.0
▲ 34.2
▲ 22.3
表 国内主要SI企業11社の2010年3月期業績一覧(一部、2009年12月期)
()は決算年月。売上高、営業利益等の単位は百万円。下段は対前期比。単位は%。


電通国際情報サービス以外の10社は営業利益ベースで黒字を確保しました。当期純利益ベースでもキヤノンマーケティングジャパンと電通国際情報サービス以外は黒字を出すことができました。ただし、表を見ても明らかなように、前期と比較するとすべての企業が業績を落としています。国内のSI企業にとって2009年は大変な苦境の年だったようです。

下のグラフは売上と営業利益の対前期比をわかりやすく可視化したものです。ほとんどの企業が対前期比でマイナスの業績を示していることがわかります(グラフ 国内主要SI企業11社の売上対前期比と営業利益対前期比一覧)。

Annual01


今期と前期の業績を売上規模順に並べたグラフも作成しました。NTTデータの売上は1兆円を超えています。三井情報は500億円前後です(グラフ 国内主要SI企業11社の業績比較)。

Annual02_2


売上だけではなく、営業利益、経常利益、当期純利益もグラフ化して(売上の)横に添えました。SI企業の売上に占める利益の比率がざっくりと把握できると思います。

景気が悪化して、顧客企業の設備投資意欲が減退すると、受注件数が減り、売上に(悪い意味で)大きく影響します。多くのSI企業は、巨額の固定費を必要とする事業を行っていますので、売上が減ると固定費を減らさない限り、営業利益はどんどん減っていきます。

日本ユニシスの籾井勝人社長は決算発表会で、安定収益型の事業基盤を確保したいと話していました。長期契約に基づくサービス事業の安定軌道化という意味だと理解しました。日本ユニシスに限らず、SI企業各社がクラウドサービスの事業化に意欲を見せているのは、同事業に高収益の事業モデルをイメージしているからです。

以下に、SI企業各社の決算ハイライトを簡単にまとめました。

■NTTデータ

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
1,139,092
98,546
95,552
48,360
H22.3
1,142,940
81,689
75,722
35,662
H23.3(forecast)
1,200,000
90,000
87,000
47,000
NTTデータ

◎決算のポイント

・不調の背景は企業収益・設備投資等の減少
・公共投資は徐々に頭打ちになる
・輸出や生産は海外経済の改善に応じて増加を続ける
・セキュリティ強化やコンプライアンス対応に向けたシステム投資需要は堅調
・新規案件へのIT投資は抑制傾向

◎これから取り組むこと

・1兆円規模の大規模システム開発の実行能力を高める
・本気で海外市場に打って出る
・環境志向経営を推進する

【参考】NTTデータ 平成22年度決算短信(PDF)

■キヤノンマーケティングジャパン

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H20.12
827,486
25,415
25,943
11,185
H21.12
686,614
6,297
8,222
▲4,343
H22.12(forecast)
690,000
8,000
9,000
3,000
キヤノンマーケティングジャパン

◎決算のポイント

・景気悪化が業績に影響
・特損(不動産の建て替え)で損失額拡大

◎これから取り組むこと(IT関連事業に限定)

・ITソリューション事業を行う子会社の再編
・キヤノングループ内のITシステムを“革新”する
・第一次受注獲得のために営業力を強化する
・クラウドサービス事業に力を入れる

【参考】キヤノンマーケティングジャパン 第42期 有価証券報告書(PDF)

■大塚商会

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H20.12
467,154
27,089
27,628
14,371
H21.12
429,927
16,094
16,427
8,782
H22.12(forecast)
451,000
16,700
17,000
9,160
大塚商会

◎決算のポイント

・内需の低迷、デフレ回復の遅さが業績に影響
・企業はIT投資を抑制している

◎これから取り組むこと

・グループ経営力の強化
・各事業分野の評価を徹底、経営資源の最適配分
・サービス開発体制を強化する
・ワンストップ運営体制を強化する
・人材を育成する

【参考】大塚商会 アニュアルレポート 2009(PDF)

■野村総合研究所

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
341,279
49,713
51,73
24,513
H22.3
338,629
40,077
40,947
21,856
H23.3(forecast)
350,000
44,000
45,000
26,000
野村総合研究所

◎決算のポイント

・景気後退で企業の収益が後退し、設備投資が減少した

◎これから取り組むこと

・共同利用型サービスの開発・充実
・非金融業顧客の拡大
・開発プロセス全体の効率化

【参考】野村総合研究所 平成22年度3月期決算短信(PDF)

■ITホールディングス

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
338,302
23,787
23,604
9,406
H22.3
313,856
15,996
15,719
7,659
H23.3(forecast)
346,000
165,000
16,000
5,500
ITホールディングス

◎決算のポイント

・金融業・製造業のユーザーを中心にIT投資が抑制
・大型システム開発案件に対し、企業は慎重姿勢
・コスト削減につとめた

◎これから取り組むこと

・グループとしての総合力を磨く
・顧客企業の事業展開に深く関与する
・財務体質の強化
・人事施策の強化
・企業文化の醸成

【参考】ITホールディングス 平成22年度3月期決算短信(PDF)

■日本ユニシス

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
310,127
15,883
15,116
▲8,819
H22.3
271,084
7,105
6,918
3,626
H23.3(forecast)
280,000
9,000
8,200
3,600
日本ユニシス

◎決算のポイント

・顧客企業のIT投資抑制で減収、営業減益
・当期純利益は36億円の黒字
・中期的な取り組みで期中受注残高は微増

◎これから取り組むこと

・サービスインテグレータとして新しいビジネスモデルを構築する(SI+クラウド)
・SE・営業一体化など競争力を強化する社内体制を構築
・安定した収益基盤(サポート、アウトソーシング)を拡大する

【参考】日本ユニシス 平成22年3月期 決算短信(PDF)

■伊藤忠テクノソリューションズ

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
307,254
21,687
22,026
12,936
H22.3
290,391
21,569
21,627
12,461
H23.3(forecast)
300,000
22,500
22,500
12,500
伊藤忠テクノソリューションズ

◎決算のポイント

・ハードウェア製品の販売が低調
・サポート事業は保守運用サービスやデータセンターサービスが堅調に推移

◎これから取り組むこと

・投資をする(クラウドビジネスができる基盤などに)
・プロジェクトの管理能力をあげる
・コスト削減の体質を作る

【参考】伊藤忠テクノソリューションズ 平成22年3月期 決算短信(PDF)

■新日鉄ソリューションズ

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
161,539
11,508
11,943
6,364
H22.3
152,158
10,790
11,221
6,298
H23.3(forecast)
156,000
11,700
12,000
6,700
新日鉄ソリューションズ

◎決算のポイント

・顧客企業の業績悪化でIT投資が凍結されたり・先送りされたりした
・クラウドによるサービス拡充に取り組んだ

◎これから取り組むこと

・クラウドサービス事業を加速する
・データセンター事業を拡大する
・開発環境の全社クラウド・サービス化
・事業領域を拡大し、クローバルに対応できる社内体制を構築する

【参考】新日鉄ソリューションズ 平成22年3月期 決算短信(PDF)

■住商情報システム

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
134,263
9,028
9,523
3,961
H22.3
127,317
6,423
7,188
3,242
H23.3(forecast)
135,000
7,000
7,200
3,500
住商情報システム

◎決算のポイント

・流通向け売り上げが増加した
・輸出関連の製造業向け、証券業を含む金融業向け売り上げが減少した
・ネットワーク関連のハードウェア販売が減少した

◎これから取り組むこと

・人材・資本等経営資源を重点分野・新規分野に投入する事業に集中する
・ビジネスモデルを受託開発型からサービス提供型へシフトする
・高度IT人材・グローバル人材を育てる
・積極的にM&A、ビジネスアライアンスを行う

【参考】住商情報システム 平成22年3月期 決算ハイライト(PDF)

■電通国際情報サービス

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
75,148
4,481
4,628
1,357
H22.3
61,155
▲295
▲238
▲137
H23.3(forecast)
62,913
944
935
▲561
電通国際情報サービス

◎決算のポイント

・主要顧客業種の金融業、製造業、サービス業のIT投資が全体として強く抑制
・IT投資の抑制が、受託システム開発やソフトウェアのライセンス販売に影響した

◎これから取り組むこと

・新規ソフトウェア製品を開発する
・既存ソフトウェア製品の強化に継続して注力する
・クラウドコンピューティングに関する各種技術を研究する
・自社ソリューションサービスのクラウドサービス化を行う

【参考】電通国際情報サービス 平成22年3月期 決算短信(PDF)

■三井情報

(百万円) 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
H21.3
53,537
4,022
4,062
1,832
H22.3
48,999
2,574
2,674
1,424
H23.3(forecast)
51,000
2,450
2,500
1,300
三井情報

◎決算のポイント

・顧客企業の設備投資に対する慎重な姿勢
・強みを持つネットワーク機器販売の案件が減少
・クラウドサービス分野で顧客獲得が実現した

◎これから取り組むこと

・機能別組織から事業本部制に移行する
・既存事業(中小規模企業向けERP提供など)を拡大する
・新規事業(エネルギーマネジメン分野ト、クラウド分野、CREマネジメント分野)を立ち上げる

【参考】三井情報 平成22年3月期 決算短信(PDF)

【修正履歴】NTTデータの2010年度3月期 売上高対前期比について、「▲0.3」という記述を「0.3」に修正いたしました。2010年5月17日16時15分。

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