2011/10/4
「時近ければなり その12」
原始キリスト教世界
シビュラの託宣
第4巻
4."T1"
第4巻
4.1
聞け、驕り高ぶれるアジアとヨーロッパの民よ、
大いなるかたの蜜の声響かせる口を通して、
われわれのことから始めて、わたしが預言せんとするかぎりのまったき真実を。
わたしは虚偽を託宣するフォイボスの〔預言者〕ではない。その者を、愚かな人間どもは
神と云い、預言者と詐称したのだ。
いや、わたしは大いなる神の予言者である。人々の手はこのかたを造形したことはかつてない、
物言わぬ石の偶像ではないからだ。
また彼は神殿に引いてこられた石を住み家となさることもない。
それはひどい唖者にして歯もなく、はかなき者どもの苦痛多き屈辱である。
4.10
いや、地から見ることのできるかたではなく、死ぬべき者の眼で
量られるかたでもない。死ぬべき者の手で作られたのではないからである。
彼は万物を照覧なさるが、ご自身は誰からも見られることがない。
暗い夜も、昼も、太陽も、
星も、月も、魚の住む海も、
地も、河も、尽きることなき泉の口も、
命を得た被造物も、畑の実り──
樹木、ぶどう、オリーブ――を産する雨も、みな彼のものである。
このかたがわたしの心の中に笞を当てられた。
それは人間たちにとって今あること、またその後ふたたびあること、
4.20
すなわち第一代から第十代にまで至ることを、
わたしが残らず数えあげるためである。なぜなら彼はすべてのことを成就することによって
悟得させたもうからである。そこで民よ、お前はシビュラからすべてのことを聞け、
真理の声を注ぎ出す聖なる口から。
人間のうちであの祝福された者たちが地にあるだろう。
げに、大いなる神をほめたたえつつ、愛するかぎりの者らは、
飲み喰いする前に、敬虔に聴き従う者たちである。
彼らはいかなる神殿や祭壇を見てもこれを拒否する。
物言わぬ石でできた無価値な像をもまた。
4."28a"
また石像も、木像も、手製の奉納像をも。
4.29
それらは生命あるものらの血や
4.30
四足獣の犠牲に穢れているからである。しかし、彼らはただひとりの神の栄光を見つめる。
彼らは傲慢不遜な殺人をしでかすこともなく、盗品を
売って儲けることもなく、これこそはもっとも酷いことであるが、
他人のしとねの上で醜い欲情を抱くこともなく、
[憎悪さるべき、嫌悪さるべき男の暴慢を求めることもない]からである。
他の人々は彼らの敬虔な生き方と習慣を
けっして模倣することがない。無恥を渇望しているからである。
むしろ、彼らはかの人々を冗談と笑いで嘲り、
幼稚な者どもは、無思慮によって、嘘の上塗りをするであろう、
自分たちのしでかす傲慢不遜な悪しき所業をあの人々に帰して。
4.40
じっさい、声を分けて語る者らの種族は信頼しがたい。しかしながら、
世界と死ぬべき者たちとの審きが、つまり、神ご自身が
不敬虔な者らと敬虔な者らとを同時に審かれる審きが、まさにおとずれる時、
その時には、不敬虔な者らを、暗闇のもとで、火の中に送り込まれるだろう。
[その時には、彼らは悟るであろう、自分たちがどんな不敬虔を働いたかを]。
しかし、敬虔な者らは禾穀を稔らす田畑にとどまる。
命と同時に恵みを神が彼らに与えられるからである。
しかし、これらすべては第十代の時に極みに達する。
しかし今は、第一代から起こること、これを語ろう。
最初にアッシリア人がすべての死ぬべき者たちを支配し、
4.50
世界の六代の間、支配の覇権を握り通す。
それは、天にいます神が怒りを発せられたために、
都市もろとも人間どももみな
圧倒する洪水の海が地を覆った時からである。
彼らをメーディア人が打倒して、王座に立って誇るであろうが、
彼らにはただ二代だけが〔続く〕。彼らに次のような所業が起こるためである。
暗い夜が真昼の刻限に起こるだろう注1)。
4.57
そして星と月の円が天からなくなり、
地は大地震の揉みあいの中で震い、
多くの都市と人間の業とを覆滅させるであろう。
4.60
またその時、海の底から島々が頭をもたげるであろう。
しかし大いなるエウフラテースが血で溢れる時、
その時こそ、メーディア人とペルシア人との間に、戦争のぞっとする
叫喚が上がる。そしてペルシア人の槍によってメーディア人が
倒れ、大いなるティグリスの水の上に逃れるだろう。
それからペルシア人の覇権は全世界で最大となるが、
彼らの帝国の栄華は一代〔だけ〕備えられているのである。
起こらねばよいが、と人が願う限りの悪しきことが起こるだろう。
戦いの叫喚、殺人、分裂騒ぎ、亡命、
城楼の崩壊、都市の滅亡が。
4.70
それは、驕れるギリシアが、広いへレスボントス目ざして
フリュギアとアジアに痛ましい破滅をもたらそうとして、航海する時である。
さらに、畦溝もさわに、小麦をもたらすエジプトに、
飢饉と凶作とが二〇年の間さまようだろう。それは、麦の穂を育てるナイルが、
どこか他の場所で、大地の下に黒い水を秘匿する時である。
アジアからは、大いなる王が槍を携えて、やってくる。
数え切れぬほどの船とともに。彼は〔海の〕底の湿った通り道を
徒歩で歩き、嶺高き山を切り分けて航海する。
怯懦なアジアは、彼を戦争からの逃亡者として迎え入れるだろう。
4.80
みじめなシチリアをことごとく焼きつくすだろう、
エトナの炎が噴き出される時、巨大な火の奔流が。
またクロトーンの大きな都市が深い流れの中に落ちるだろう。
ギリシアに争いが起こる。人々は互いに猛り狂い、
多くの都市を投げ倒し、多くの人々を、
戦って滅ぼす。だが、その争いはともに互角である。
しかし、声を分けて語る者らの種族が第十代に至ると、
その時、ペルシア人たちに奴隷の軛と恐怖が生じる。
それから、マケドニア人たちが王笏によって誇った後、
テーベにも悪しき捕囚が背後からやってくる。
4.90
そしてカリア人たちがツロに住み、ツロの人々は滅びる。
それから砂が全サモスを海辺の下に隠し、
またデーロスはもはや際立ったものではなくなり、デーロスのすべての〔財宝〕は見映えなきものとなるだろう。
またバビローンは見るに大いなるものであるが、闘うに弱小であり、
無益なる望みの上に城壁をめぐらせて立っているだろう。
マケドニア人たちはパクトリアに住むであろう。そしてパクトリアと
スゥサからの逃亡者たちは、みなギリシアの地に逃げこむだろう。
やがて生まれてくる者どもには、銀の渦巻く、
海辺を洗うビュラモスが聖なる島に到る時がおとずれる。
そしてパリスよ、おまえもキュジコスも倒れる。大地が
4.100
地震のために激しく揺れ、諸々の都市がたちまちに倒れる時に。
ロードス人たちにも、最後の、しかし最大の悪がやってくるだろう。
覇権はもはやマケードニアのものではない。かえって西から
イタリアの大いなる戦争が花咲き、全世界がその下に
奴隷の軛を負って、イタリア人に仕える。
惨めなコリントよ、おまえもいつかみずからの囚われを見るだろう。
カルタゴよ、おまえの城塔も地に膝をつくだろう。
強情なラオデキアよ、おまえをいつか地震が投げ倒して
散らすだろう。しかし再び都市が建てられ、立つであろう。
おお、リュキアの美しいミュラよ、揺れ動く大地は決しておまえを
4.110
立たせておきはしない。まっさかさまに大地に倒れ、
寄留者のように、他の地にのがれたいと願うだろう。 それはパタラの*不敬虔の上に、ある日、 雷霆と地震とともに、海の黒い水が騒乱をまき散らす*時である。
アルメニアよ、おまえのもとにも奴隷の責め苦がとどまる。
エルサレムにもイタリアから戦争の悪しき嵐が到り、
神の大いなる神殿を掠奪する。
それは人々が無思慮なことに聴き従い、敬虔を
棄て、神殿の前で憎むべき殺人を行なう時にそうなる。
そのころ、イタリア出の大いなる王が、奴隷のように、
4.120
姿を見られることなく聞かれることもなく、エウフラテスの渡しを越えて逃げて行く。
すなわち、憎むべき母殺しの罪と
その他多くのことが、悪しき手に説き伏せられれて敢行される時に。
多くの者がローマの王座のまわりで平野を血で汚すだろう、
彼の者が、パルティアの地を越えてのがれたあとに。
シリアにはローマの勇士がやって来る。彼は火で
エルサレムの神殿を焼き払い、さらにまた多くのユダヤ人を
殺し、幅広い通り道のある大いなる地を滅ぼすだろう。
またその時こそ、地震がサラミスとパボスとを滅ばす、
すなわち、大波うなるキプロスを、黒い水が洗う時。
4.130
しかし、イタリアの大地女神の断崖から
炬火が放たれ、久方の天に達し、
多くの都市を焼き、人々を滅ぼし、
大量のくすぶる灰が大空をこがし、
また火の粉が紅土のように天から降る時、
その時に、人々は天上にいます神の怒りを知る。
彼らは敬虔な人々の、罪なきやからを滅ぼすからである。
またその時、引き起こされた争いと戦争と
ローマの逃亡者とは西に到る。彼は長い槍を執り、
無数の者たちとともにユウフラテースを渡る。
4.140
みじめなアンチィオケよ、人々はもうおまえを都市とは呼ばなくなるだろう。
おまえが自分の無思慮によって槍の下に倒れる時に。
またその時、疫病とぞっとする戦いの叫喚がキュルロスを滅ばすだろう。
ああ、ああ、あわれなキプロスよ。おまえを海の広い波が
覆う。おまえは冬の嵐によって投げ上げられる。
それからアジアに莫大な富がかえって来る。それはかつてローマ
自身が奪って、財宝に満ちた家に
置いたものである。ローマはその二倍とそれ以上を
アジアにもどす。そのとき戦争の飽きがくる。
マイアンドロスの水のほとりなるカリア人たちの諸都市、
4.150
城塔に守られたはなはだしく美しい者たちを、激しい疫病が
滅ぼすだろう。マイアンドロスが黒い水を秘匿する時に。
しかし、敬虔な信仰が人間どもから消え失せ、
この世で義が秘匿されて、
……変節着たちは……神法にもとる敢行によって
生活し、暴慢、つまり極悪非道な悪しき所業をしでかし、
誰ひとり敬虔な者たちの話をせず、かえって幼稚な者どもとなって、
ひどい無思慮ゆえにみずからをことごとく滅ぼし、
暴慢を喜び、手を血に染める時、
その時こそ知るべきである。神はもはや柔和なかたではなくて、
4.160
憤怒によって歯がみし、人間どものすべての末を
大いなる火によって滅ぼし尽くすかたであることを。
ああ、声を分けて語る者らよ、改めるのだ、はかなき者らよ、これらのことを。
大いなる神をさまざまの怒りへと駆り立ててはならぬ。かえって、
剣と殺戮の呻きと暴慢とを改めて、
涸れることなき河の中で全身を洗い、
もろ手を空に向かってさしのべ、かつての業の
赦しを求め、ほめことばにより、苦い
不敬虔の赦しを請え。神は悔い改めを赦し、
滅ぼすことをなさらないだろう。また再び怒りを止めてくださるであろう、もしあなたがた皆が、
4.170
いとも尊い敬虔を心のうちに重んじるならば。
しかし、心邪な者たちよ、おまえたちがもしわたしに聴き従わず、かえって不敬虔を
愛しているなら、悪いしらせによってこれらすべてのことを受け取るだろう。
火が全世界をおおい、大いなる徴があるだろう、
太陽が昇る時に、剣とラッパにより。
全世界はどよめきととどろく響きを聞くだろう。
彼は全地を焼き、人々のすべての種族と
すべての都市と河を、海とともに滅ばされるだろう。
また彼は万物を焼き尽くし、くすぶる塵が残るだろう。
しかし、すでに万物が灰燼に帰した時、
4.180
神は筆舌に尽くせぬ火をも、それに火をしつけた時と同じように、眠らせられる。
神はみずから人々の骨と灰に、もとのごとく
形を与え、かつてあったように、再びはかなき者らを立たせられる。
まさしくその時に審きがある。これによって神みずからが判決を下される、
もういちど世界を審いて。そして、不敬虔によって過ちをおかした者たち、
これらはまたもや地下に隠すであろう。塚と、
陰湿なタルタロスの世界と、ゲヘナのステュクスの奥底が。
しかし、敬虔に生きる者たちは、ふたたび地上に生きる。
4.189
神が霊〔気息〕と生命と恵みとを、彼ら
4.190
敬虔な者たちに与えたからである。その時すべての者は自分自身を見るだろう。
また太陽のうれしく、喜ばしい光を見るだろう。
おお、浄福の極みよ、その時までいる人は。
4.188
不滅の至福もまた、大いなる不死なる神のものである。
第5巻(1/2)
5."T1"
第5巻
5.1
さあ、わたしのところに来て、ラテン人の子らの嘆きの時を聞け。
まことにまず、滅ぼされるエジプトの王たち、
すなわち同じ大地が下へと運びきたったすべての者たちのあとに、
またベラの市民──そのもとに東全体と多幸の西とが投げ倒され、
その人をバビロンが恥ずかしめたが、その死体はフィリッボスに渡した者、
また真実にはゼウスの子ともアモーンの子とも呼ばれなかった者──のあとに、
また、トロイアから出、火の勢いを裂いた
アッサラコスの家系また血筋なる者のあとに、
5.10
さらにまた多くの君主たちのあとに、アレースに愛しまれる輩のあとに、
また未熟な者、羊を食う獣の子らのあとに、
第一の君主があるだろう。その人は頭文字によって
十の二倍に達するだろう。また戦いにおいて、長い間征覇するだろう。
彼は第一〇番目の文字から最初の文字を得るだろう。こうして彼のあとには
日の最初の文字に当たる者が支配する。
トラキアとシチリアは彼を恐れてすくみ、のちにはメンフィス、
指導者らの悪と、波間に身を投げた御しがたい女の悪とによって
打ち倒れたメンフィスも〔恐れた〕。
彼は民らのために法を定め、すべてのものを従えるだろう。
5.20
彼は長い年月ののちに、他の者に支配を譲るだろう。
その者は数で三〇〇の文字を頭に持ち、
河自身の名を有し、ペルシアと
バビロンを支配する。その時には槍でメーディアを倒すだろう。
その後、数で三の頭文字を得る者が支配するだろう。
また、その後支配する王は一〇の二倍の頭文字を
持つだろう。彼はアウソニアの船の下に波頭を立て、オケアノスの水の果てにまで至るだろう。
それから、五〇という頭文字を得る者が支配者となるだろう。
〔彼は〕恐ろしい蛇であって、激しい戦火を吹き出す。彼はいつの日か手を
3.30
自分の身内の者のことで伸ばし、〔これを〕滅ぼし、すべてのものを悩ますだろう。
それは彼が争い、追い払い、殺し、万事を強行するからである。
また彼は二つの海にはさまれた山を貫き、血で〔それを〕汚すだろう。
しかも彼は隠れる時にさえ荒らす者であるだろう。さらにはもどってきて、
みずからを神と等しくするだろう。しかし〔神は〕彼がそうでないことを悟らせられる。
彼の後には、三人の君主が互いに滅ぼしあう。
その後、敬虔な人々に対する大いなる破壌者がやって来るだろう。
彼は一〇の七倍の頭文字を顕著な〔印〕として示している。
それからその子で最初に三〇〇の頭文字を持った者が、
5.40
〔彼を〕恥ずかしめて権力を奪い取るだろう、が彼のあとに四の頭文字を
待った支配者が出て来る。(呪われた者よ。)さらにその後、
聖教字で五〇の敬虔深い人が〔出て来る〕。さらに彼に続いての頭文字を得る者、
ケルトの山岳の人が東の戦いへと突き進み、
惨めな運命を逃れられることなく、打ちひしがれるだろう。
その死体は異国の塵が覆い隠す。しかし〔その塵は〕ネメアの
花の名を持っている。彼の後には、他の者が治めるだろう、
銀兜の男が。この者には、海の名がついている。
彼はまったき最善の人でもあり、すべてのことを理解する。
そしてあなたに、まったき最善の人よ、はるかに抜きん出た人よ、黒髪なびかす人よ、
5.50
そしてあなたの若枝に、これらのすべての日がやってくるだろう。
その後、三人の者が支配するであろうが、第三の者は晩年に統治するだろう。
三重に惨めな女〔であるわたし〕は、悪しきお告げを心のうちに置かれて身悶えする。
*イシスに知己の女*〔であるわたしは〕、神託の神に憑かれた歌をも〔心のうちに置かれて〕。
先ず、多くの嘆きを受けたあなたの神殿の階のまわりに、
狂信女〔マイナス〕たちが殺倒し、その日には悪しき掌のうちに
おちいるだろう。すなわち、ナイルがいつか
エジプト全土を一六肘尺の深さまで浸して旅し、
こうして〔ナイルが〕その流れによって全地を洗い、水浸しにする時に。
すると大地の恵みと顔のかがやきとは沈黙するだろう。
5.60
メンフィスよ、おまえはエジプトのためにいとどしく泣き悲しむだろう。
なぜならかつて大いなる者として地を支配していたおまえが、
惨めな者となり、こうして雷を喜ばれるかた自身が
大きな声で天から叫ばれるからである。「大いなる力のメンフィスよ、
かつて、小心なはかなき者たちに向かってはなはだ誇っていた者が、
打ちひしがれ、幸いとてないままに悲しみ泣くであろう。このため、
永遠の不死なる神が雲のうちで御身に気づかれることだろう。
人々の間であれほどに勢力のあったおまえの精神はどこにあるのか。
おまえが、神から油注がれたわたしの子供たちに向かって猛り狂い、
善き人々に対して悪をそそのかした、
5.70
そのことのゆえにおまえは罰としてこのような乳母を与えられるのだ。
もはやおまえは祝福された者たちの中で公然とは権利を持たないだろう。
おまえは星からおちた。天に昇ることはないだろう。
終わりの時に、すなわち人々がまったく悪しくなる時に、エジプトに向かってこれらのことを語るように神は命じられた。
しかし悪しき者は、不死にして雷を轟ろかし天にいたもうかたの災いと怒りとを待っているがゆえに、惨めである。
彼らは神に代えて石や怪獣を拝し、
他方で別の極めて多数の物を恐れている。それにはなんのことばもなく、
心もなく、耳もない。わたしには口に出すこともはばかられるもの、
5.80
人間の手によって生まれた偶像の数々である。
己が労と向こう見ずな考えから、
人間は木や石や、
銅や金や銀の神々を取り入れ、虚しく、
命なく、ことばなく、火の中で鍛えられたものを
作った。それは彼らがあざむかれてこれらのものを信じたからである。
トゥクムイスとクスイスとは患難のうちにあり、〔 〕
へラクレスとゼウスとヘルメスの〔町々も〕。
またアレクサンドリア、町々の聞こえ高き養育者よ、おまえを
戦争と〔疫病と〕が見のがしはしない。〔いやおまえは〕
5.90
傲慢の報いを受け、かつてなしたすべてのことの償いをするだろう。
永い間おまは沈黙し、帰還の日〔 〕
もう滋味豊かな飲み物〔を与えるナイルは〕おまえのために流れはしないだろう。〔 〕
なぜならべルシア人が嵐のようにおまえの〔 〕に来て、
おまえの地と悪を謀る者どもとを滅ぼすだろう。
彼は血と死体とによって〈祭壇を満たすように〉。
野卑な心を持ち、力が強く、血気にはやり、愚かしいことに激昂し、
砂のように多くの群集とともに〈おまえに破滅をもたらすために〉。
その時には、諸々の都市の中の栄華をきわめたおまえが、はなはだしく苦労するだろう。
全アジアが贈り物のゆえに泣き悲しむだろう。おまえの贈り物の中から
5.100
〔アジアは〕頭に冠をして喜んでいたが、今や地に伏している。
ペルシア人の地を得る者が戦争をしかけ、
人という人を殺したのち、すべての命を絶やすだろう。
こうして哀れな人間どもには第三の定めが残るばかり。
ふたたび彼は軽く飛躍しながら西から飛来する。
彼はすべての地を攻囲し、すべての地を荒廃させる。
しかし彼が力の絶頂に達し、憎むべき野望を抱く時、
彼は祝福された者の町まで滅ぼそうと望んでやって来る。
そして彼に対して神から送られたひとりの王が、
すべての大いなる王たちとすぐれた人々とを滅ばすのである。
5.110
それからこのようにして不滅のかたから人間に対して審きが下る。
わざわいだ、わたしの哀れな心よ。おまえはなぜわたしを駆り立てて
エジプトに向かって支配の痛ましい分裂を示させようとするのか?
東へ行け。物わかりの悪いペルシア人の族へ。
そして彼らに現在のことと、やがて起ころうとしていることを示せ。
エウフラテスの河流が洪水をもたらし、
ペルシア人もイベリア人もバビロンの人々も、
戦争を好み、弓矢に信を置くマッサゲタ人も滅ぼすであろう。
全アジアは火に包まれて島々までも燃え上がるだろう。
かつて聖らかであったベルガモはその礎から崩されるだろう。
5.120
またピタネはただ荒廃として人々の限に映るだろう。
レスボス全体は底深く沈んで滅亡するだろう。
スミュルナはいつの日か断崖から転落して泣き悲しむだろう。
かつて敬われ、その名を響かせた女が滅びる。
ビテニア人は自分たちの地が灰燵に帰したのを泣き悲しむだろう。
また大いなるシリアと民多きフェニキアのことを。
おまえはわざわいだ、リュキアよ。海がおまえに悪しきことを因っているから。
それはひとりで痛ましい地の上にはい上がり、
災いな地震と激流とによって、
リュキアの湖水と、かつて投薬の香りの漂った陸地とを洗うであろう。
5.130
フリュギアにはその(狂態)のゆえに恐ろしい憤激が待ち受けている。
その(狂態の)ためにゼウスの母レアはおとずれ、そこにとどまった。
詩人たちは三重に惨めなギリシアのために泣き叫ぶだろう、
イタリアから大ローマの偉大な王、神に等しき者が(その)首筋を打つ時に。
5.140
彼はたれあろうゼウスと令室へラとが生んだのだと人は言う。
詩神ともまごう声の、蜜のような歌彗に拍手を求めながら、惨めな母とともに多くの者を殺すだろう。
恐ろしくまた恥知らずな王がバビロンからのがれるだろう。
すべての人とすぐれた人々とは彼を嫌悪するだろう。
なぜなら彼は多くの人を滅ぼし、胎に手をかけ、
妻らに対して罪を犯し、汚れた親から生まれたからである。
さて彼はメディア人とペルシアの王たちの所に来るだろう。
それは彼が最初に慕った者たちであり、彼らには名誉を与え、
其の民に敵対して、これらの悪しき者らといっしょに穴ぐらにひそんでいる。
5.150
彼は神によって建てられた神殿を奪取し、市民や室(神殿に)上ってきた人々、すなわちわたしが正当にほめ歌った人々を焼き殺した。
というのもこの者が(死んだ時)、全被造物は震い、
土たちは滅んだから。そしてその中に支配がとどまった
者らは大きな町と義しい民とを滅ぼし尽くしたのである。
しかし四年ののちに大いなる星が輝やく時、
その星は一つで全地を滅ぼすが、それは初め人々が海神ポセイドンに奉った(ところの)誉れによるのである−−
大いなる星は天から聖き海に下り、
深い海とはかならぬパピロンと
5.160
イタリアの国とを焼くであろう。その国によって
多くの忠実なへブル人の聖徒らと真の民とは滅ぼされたのである。
おまえは悪しき人々の中で悪しき働きに疲れ、
こののち時の極書でも荒れ果てるだろう。〔 〕
一声して自分の土地を憎むだろう。それはおまえが魔術を慕ったからである。
悪しき国、すべてのものの中でもっとも凶しき定めの者よ。おまえのもとには姦淫と無法な少年愛と不義な女どもとがある。天わざわいだ、ラテン人の地にあるすべての汚れた国よ。
蝮の毒を愛する狂婦、やもめなるおまえは堤の傍に坐し、
5.170
ティベル川はおまえのゆえに、自分の妻のゆえに泣き悲しむだろう。
彼女は血に穢れた心と不敬虔な気性とを持っている。
おまえは神がどのようなことをなしえ、どのようなことを計られるかを知らないのか?
それなのにおまえは言った。「わたしだけがいるのだ、だれもわたしを滅ぼしはしないだろう」と。
今こそ永遠にいます神が、おまえとおまえのすべての子らを滅ぼされるだろう。
そしてもはや、かの地はかつてのようにおまえの跡をとどめることもないだろう。
すなわち大いなる神がおまえの誉れを考量された時(のようには)。
無法の女よ、燃え上がった火と交わりつつただひとりながらえるがよい。
またハデスにある、タルタロスの無法の国を住まいとするがよい。
さてエジプトよ。今またわたしはおまえの妄挙を嘆いている。
5.180
メンフィスよ、おまえは膵を砕かれて苦しみの先導者となるだろう。
おまえのうちなるピラミッドほ恥知らずな声を発するだろう。
ピトム、かつてふさわしくも二部と呼ばれた者よ、
永遠に沈黙するがよい。おまえが悪から離れるためである。
倣慢な者よ、にがにがしい労苦の倉よ、涙の狂乱者よ、
多くの涙を流す苦難の人よ、おまえはいつまでもやもめのままでいるだろう。
おまえはただひとり世界を支配する者として幾年月をへたのに。
しかしパルカが白い短衣を汚いものの上に着る時には、わたしはながらえることも、生まれて来ることもないように。
おおテーべよ、おまえの大いなる力はどこにあるのか。野卑な人が
5.190
民を滅ぼし尽くすであろう。おまえは灰色の衣を着て
涙するであろう。不運な人よ、孤独の人よ、おまえはすべてのことを償わなければならない。
かつて恥知らずな気性のゆえに行なったすべてのことを。
人々は無法な働きのために悲しみ嘆くだろう。
さてスエネはエジプト人の大いなる者が滅ぼすであろう。
テウキラには黒肌のインド人が力ずくで占任するだろう。
ペソタポリスよ、おまえは泣き悲しむであろう。そして強大な力を持つ人がおまえを滅ぼすだろう。
涙にくれるリビアよ、だれがおまえの妄挙を語り尽くそうか?
人間のうちのだれが、キュレネよ、哀れなおまえ(の姿)に涙しょうか?
おまえほいとわしい破滅の時に至るまで、涙のかれることがないだろう。
5.200
ブリュグ人と金に恵まれたガリア人には
多量の血に染んだ潮がうなるだろう。
なぜなら彼らみずからが神の悪を行なったからである。それは
フェニックス王がシドソの人々に対してガリアの
大軍勢をシリアから導いた時のことである。彼はおまえの身を
殺し、ラベンナよ、殺戮の先導者となるだろう。
インド人また大度量のエチオピア人よ、おまえたちは事易しと構えていてはならない。
なぜなら(弓形の)軸にはまった車輪である「山羊」と「牡牛」が「双子」の間で中天を回る時、
5.210
そして「乙女」が現われ、額に帯をつけた太陽が全天蓋を支配する時、
全地で天体の大燃尽が起こり、
星の戦争においては新しい創造が生じ、こうして
火と叩きのうちにエチオピア人の全地が壊滅するだろう。
おまえも泣くがよい、コリントよ、おまえのうちにある嘆かわしい破滅を。
なぜなら三人姉妹のモイラたちが自在の糸で、
謀り逃げてイストキスの丘へと来た者をからみ掃え、
中空に引き上げ、すべての人が彼を見るに至る時、
すなわちかつて鍛え抜かれた銅で岩を砕いた者を(見る時)、
彼はおまえの地を滅ぼし、荒廃させるだろう、あらかじめ定められたとおりに。
5.220
なぜならまこと、この人に神は力を与えて、
かつてあったすべての王たちのだれにも能わなかったことをなさしめたからである。
まず彼は三つの頭から鎌で板をこ童(切り離し)、他の(大いなる)者らに取らせ、
汚れた王の親の肉を食わせるであろう。
というのもすべての人には殺りくと戦きがあるからであるが、
それは大いなる町と義しい民とのゆえなのである。
この民は配慮の神が特に高め、絶えず守られてきたのである。
不確かな者よ、謀る者よ、惨めな定めを負う者よ。
労苦の初めよ、人々には大いなる終わりなる者よ。
5.230
被造物が破壊されたが運命の女神たちによって回復される以上、
倣慢よ、悪の先導者よ、人々のはなはだしい災いよ、
人々の中の、だれがおまえを慕ったか。だれが心底からおまえを憎まなかったか。
おまえのもとでひとりの王が倒され、敬虔な命を失った。
おまえはすべてを無秩序に配し、すべての悪で水浸しにした。
そしておまえによって世界の美しい平地は変じた。
もしやわたしたちとの争いのためなら、これら最後のことを投げるがよい。
おまえは何をどのように語るのか? おまえに勧めよう。たとえわたしがおまえをいささか責めるとしても(それを)語ろう。
かつて人々の間には太陽の輝く光があった。
なぜなら予言者たちの、同じ源からの光線が放たれていたからである。
5.240
蜜のしたたる舌がすべての人々においしい飲み物を示して、前にさし出し、日はすべての人のために昇っていた。
しかし(おまえの)ゆえに、心の小さい、極悪の先導者よ、
その日には剣と悲しみとが来るのだ。
労苦の初めよ、人々には大いなる終わりよ。
被造物が破壊されたが運命の女神たちによって回復されるのだから、
聞くに耐えぬ、にがにがしい予言のことばを聞け、人々の災いよ。
しかしペルシアの地が戦いとこ宍疫病と叩きとから解かれる時、その日こそは、
祝福されたユダヤ人の神的な、また天的な種族が起こるであろう。
5.250
彼らは地の中央にある神の都のまわりに住むだろう。
そして彼らはヨッパまでも長大な城壁をめぐらせて、
黒い雲までも高く引き上げられるだろう。
もはやラッパは開の声を挙げず、
また人々が狂暴な憎しみの手によって滅ぼされることもないだろう。
それどころか、悪の無い時代には、至る所にトロフィーが立てられるだろう。
あるひとりの人、はなはだすぐれた人がふたたび天からおとずれるだろう。
彼は実り多き木の上で手を張り広げた。
彼はへブル人の中のもっともすぐれた者であり、かつて、美しいことばと聖い手によって呼びかけた時、太陽をとどまらせたのであった。
第5巻(2/2)
5.260
もはや胸の内に気性を苦しめるな、浄福な女よ。
神の民よ、豊かに富める者よ、ただひとり慕われる花よ、
善き光よ、厳かな終末よ、*慕わしき聖徒よ*、
優美なユダヤよ、美しき都市よ、讃歌の中でも神に満たされた者よ。
もはやあなたの地にギリシア人〔異教徒〕たちの不浄の足が
狂宴を開くことはない。〔ギリシア人たちも〕胸の内に同じ掟に従う心(nou:V)を抱いているからである。
かえって誉れ高き子らはあなたを敬い、
聖なる歌をもって食卓に就くであろう、
さまざまな犠牲と神を畏れる祈りとともに。
苦難を耐え忍んだ義しい者たちは、暫しの苦渋に代えて
5.270
より豊かなものと喜ばしいものとを〔受け取るであろう〕。
しかし天に向かって無法のことばを投げた邪悪な者らは、
互いに敵対して言い合うことをやめ、
世界が過ぎ去る時まで隠されているだろう。
さて雲からは燃えさかる火の嵐が生ずるだろう。
また人々はもはや大地から美しい穂を喜び刈り取ることもないだろう。
すべては耕やされず鍬のはいらぬままにとどまり、ついに
死ぬべき人間は万物の主なる不死の神、永遠にいますかたを悟り、
もう死すべき犬や鷹をあがめることもなくなるだろう。
これらのものはエジプト人が、
5.280
悟りなき口と愚かな口唇とによって畏れるようにと指示したものである。
これに対し、敬虔な者たちだけの聖なる地は次のすべてのことをもたらすであろう。
すなわち蜜をしたたらす流れが岩と泉から〔流れ〕、不老不死の乳もすべての義しい人々のために流れるだろう。
なぜなら彼らはただひとりの始祖なる神、唯一のすぐれたかたを
深い敬虔と信仰とによって待ち望んだからである。
しかし、いったいなぜ賢い心はわたしにこれらの重荷を負わせるのか?
今わたしは、惨めなアジアよ、おまえのことをいたく嘆いている。
さらにはイオニア人やカリア人や金に富むリュディア人の族のことをも。
おまえはわざわいだ、サルディスよ。またわざわいだ、愛らしいトラレスよ。
5.290
ああ、ああ、ラオデキアよ、美しい都市よ。このようにおまえたちは滅びる――
地震に破壊され、灰と化して。
暗きアジアによって[黄金に富むリリュディア人たち間で〔……〕。
5.292
.....................................................................
エペソスのアルテミスの聖所は、建立されていたのに、
いつの日か地割れと地震とによって、神々しき塩海の中に現れよう。
真っ逆さまに。まるで舟が疾風によって転覆するように。
エペソスは*その転落を嘆くだろう*、岸辺で泣きながら、
もう住む人のいない神殿を探し求めながら。
〔この1段は省略される〕
そしてそのとき、上天に住みたもう不滅の神が立腹して、
天より不浄の力に対して烈風を投じるだろう。
5.300
この日、冬の代わりに夏があろう。
そのときこそ、はかなき*男どもに**悔いが*あろう。
5.302
こういうのは、スミュルナも*リュクールゴス*を悼みつつ、
*エペソスの*城門に至り、みずからもいっそう〔無残に〕滅びるからである。
キューメー、愚かな女よ。神の霊を受けた河がありながら、
不敬、不義、不法な男たちの手に
5.310
おちいったので、もはや天に向かってあれほどの(ことばを吐く)ことはなく、 青い)河のほとりで死んだまま横たわっているだろう。
そのとき彼らはともどもに泣くだろう。悪しきことを予期しつつ。
キュメ人のかたくなな民と恥知らずな族とは印を受ける時、なんのために彼らが労苦したかを知るだろう。
こうして彼らがひどい様の灰燼に帰した大地を(見て)泣くとき、
レスボスはエリダノスによって永遠に破壊されるだろう。
おまえはわざわいだ(キビュラよ)、美しき町よ。宴会をやめよ。
またヒエラポリスよ、プルトンと交わったただひとりの地よ。
おまえは得ようと願っていたものを得るだろう。涙多き(金)を、
5.320
みずからがテルモドンの流れのほとりで地に埋められたのちに。
マイアンドロス川のほとりなる岩石に富んだトリポリスよ。
一夜の間の波浪によって岩壁の下へと定められているので、
いつの日か神の摂理がおまえをまったく滅ぼしてしまうだろう。
わたしがみずから進んでフォイボスの隣の地を選び取ることがないように。
華美なミレトスはいつの日か天からの雷光が滅ぼすだろう。
なぜなら彼女はフォイボスの欺きに満ちた歌を選んだからである。
また人間の知恵の学問や賢い思いを(選んだから)。
恵みたまえ、万物の父よ、優美にして実り多く、
大いなるユダヤの地を。それはわたしたちがあなたのみ心を知るためです。
5.330
神よ、あなたは第一にこの地を心にとめられました。それは恵みによって、
この地があなたの賜物であることがすべての人に現われ、
神がどのようなことを(ユダヤ人に)お与えになったかに彼らが注意するためです。
二重に惨めなわたしはトラキア人の業を見たく願う。
すなわち二つの海にまたがる壁を。これはアレスによって砂の中へ、
河のように引きずられて、魚をつつく鳥の所へ来た。
へレスボントスよ、惨めなおまえをいつの日かアッシリア人の子孫が醜につけ、
トラキア人の戦い(で)強大な力がおまえを滅ぼし尽くすであろう。
またマケドニアはエジプトの王が奪い、
異国の風土が支配者の力を倒すであろう。
5.340
リュディア人、ガラチア人、パンフリア人はピシディア人とともに
つらい戦いの備えをし、全民衆とともに治めるであろう。
三重に惨めなイタリアよ、おまえは荒れ果て、涙も出ないだろう。
花咲く地に住む毒獣が(おまえを滅ぼすだろう)。
さて上なる広い天が(晴れ渡っている時に)、
雷のようにとどろく音、すなわち神の声が聞こえるだろう。
太陽さえももはやその不滅の炎を失い、
八月の輝く光も、終わりの時、神が支配する時にはふたたび現われないであろう。
すべては暗くなり、閤が全地を蔽うだろう。
5.350
人々は盲目となり、獣は悪しくなるだろう。そして悲嘆が(全地を蔽うだろう)。
その日は長い期間に渡るだろう。こうして人々は
主なる神、天から万物をみそなわしたもうかた自身を悟るのである。
その時には神は敵意をいだく者らを憐れまれないだろう。
なぜなら彼らは子羊や羊や大声で鳴く牛や裏金の角をした大きな若牛の群れを犠牲にして、
命なきヘルメスや石の神々に捧げたからである。
掟、知恵、誉れをして義しい者らを治めさせよ。
いつの日か不滅の神が立腹して、
全人類と恥知らずな旅とを滅ばしたまわぬよう。
5.360
父なる神、知恵あるかた、永遠にいますかたを愛さな止りればならない。
終わりの時には夜のさ中に
世界を狂気にする戦争、しかも欺きの.策略に満ちたそれが起こるだろう。
そして地の果てから母殺しがやってくるだろう。
彼は逃れているのだ。そして心の中で鋭いことを思慮している。
彼は全地を滅ぼし、すべてのものを支配し、
すべての人間よりも、思慮深い事柄をなんであれ理解するだろう。
それによって彼が滅びたであろうことはただちに取り除き、
多くの力ある人々や君主を殺し、
かつてだれもしたことがないほどにすべての人を焼き尽くすであろう。
5.370
他方倒れた者を、彼は(これとは逆の)熱心さから引き起こすだろう。
人々の間に西から大規模な戦争が起こり、
血は深くうねる川の堤にまで(あふれて)流れるだろう。
(神の)憤激はマケドニアの野に降りそそぎ、〔 助けを、王には滅亡を(下すであろう)。
そしてそのとき冬の風が全地に吹きすさび、
野はふたたび悪しき戦争に満たされるであろう。
と言うのは天の床から人々に火が降れそそぎ、
火、血、水、稲妻、暗闇、天の夜、
戦争による衰滅、殺りくを蔽う霧が、
5.380
すべての王と高官とをもろともに滅ぼすからである。
それからこうして戟争の悲しむべき破壊は終わり、
もうだれも剣によっても刀によっても矢によっても戦わないだろう。
なぜならそれはもう彼らのなすべきことではないからである。
残された、知恵ある民は平和を得るだろう。
彼らはあとに喜ぶために、悪によって試されたからである。
母殺しの者らよ、過信と有害な無謀とから離れよ。
おまえたちはかつて汚れた思いで少年との床を備え、
暴圧と罰と苦心の破廉恥とによってかつて聖かつた女たちを遊女として窓に立たせた。〔
5.390
なぜならおまえのうちではふらちにも母が子と交わり、
娘が花嫁としてその父と醜をともにしたからである。
おまえのうちでは王たちもその凶しき定めのロを汚し、
おまえのうちでは悪しき者らが家畜との床さえ作り出した。
口を閉じよ、悲しむべき者、悪しき町よ、宴会(など)を開いて
と言うのももはや、(おまえのもとで、喜び燃えるくべ物の薪によって)、
乙女子らは聖なる火を守りはしないだろうからである。
かつておまえのもとで慕われた杜は消え去った。
宮が地に打ち倒され、
汚れた手により、火に包まれるのを二回わたしが見た時に。
5.400
いつの世にも栄えた社、神の守護神殿、
聖徒らから生まれたもの、永遠不滅の(官)、
全身全霊の望みをかけられていたものが。
なぜならこれらのものの中で賢い工匠は、無思慮にも、限にそれと見えぬ土や岩から(心の無い)神を作らず、
魂の欺きたる金の装飾を拝まず、
すべて神の息を受けたものの大いなる父、神を、
聖なる犠牲と冒頭牛とによって尊んだからである。
しかし今や、名もない、汚れた王が昇ってきて
5.410
この地を倒し、大群集と名ある兵士らとともに、住む者なき所と変えて去ったのである。
けれども彼みずからは(永遠の地から不毛の地(イタリア)に足を踏み入れた時)滅んだ。
そして他の人々が大いなる町を滅ぼそうと考えるに至るような、そのようなしるしは、人々の問になされなかった。
なぜなら天の面から祝福された人が来たからである。
彼は手に第を携えていたが、それは神が彼に与えられたのである。
彼はすべての者を正しく治め、すべての善き者には、以前の人々が奪った富を返してやったのである。
また彼は強い火によってすべての町を礎から荒らし、
かつて悪を行なっていた者らの群れを焦がした。
5.420
神が慕いたもうた町、その町を彼(メシア)は
星や太陽や月よりも輝かせ、
またこれを飾りとし、聖く、姿があり、善く、はなはだ美しい〔住まい〕とされた。また彼(メシア)は(この町に)
非常な高さの、果ての見えぬ櫓を建造された。
これは雲にまで達し、すべてのものの限に見え、
こうしてすべて信仰ある者、義しい者は
永久の神の栄光と慕わしい姿とを見たのであった。
東(の人々)も西(の人々)も神の栄光を讃美した。
なぜならもう哀れな人間に恐ろしいことが臨むことはなく、
5.430
姦淫も不時な少年愛も
殺人も騒乱もなく、義しい競争がすべての人の間にあるからである。
終わりに聖徒らの時が来るだろう。これらのことを完成なさるのは、
高きに雷霆を轟かす神、最大の神殿の建築者なるかた。
ああ、ああ、汝バビロン、黄金の御座に坐し、黄金の鞋履く〔バビロン〕よ、
ただひとり、長い年月、世界を統治せる女王、
古より大いなる、あらゆる都市に冠たる都市〔であるおまえ〕も、もはや
黄金の山やエウフラテスの流れのほとりにたたずんではいないだろう。
おまえは地震の震動によって低くされるだろう。恐ろしいパルティア人がおまえを、
何かにつけて征伐させたからである。ロにくつわをつけよ、不浄なる
5.440
カルディアの族民よ、問うなかれ、思い煩うなかれ。
いかにペルシア人を支配し、*また*いかにメーディア人を統治しようかと。
なぜなら、おまえが握ってきた支配のゆえに、おまえは、人質と、
かつてアジアのために賃働きしてきた者たちを、ローマに送り、
*このゆえに倣慢な女王たるおまえみずから、訴訟相手の
裁判にやってくるであろう。その敵のためにおまえは身代金を送り届けたのだが*。
そしておまえは数々の曲った勘定の代償として、つらい勘定を敵に支払うだろう。
さて終わりの時には海が乾き、
もうイタリアに航海する船もないだろう。
またその時には(すべてを産する)大いなるアジアが水となり、
5.450
クレタは野となるだろう。キプロスは大いなる悲しみを抱き、
パフオスは恐ろしい運命を嘆き、こうして、
大な町サラミスさえ自分が大いなる悲しみを受けたことを知るであろう。
今や不毛の乾燥地がふたたび海辺にまで至るだろう。
小さくはない蛙がキプロスの地を荒らし尽くすだろう。
ツロを見て、哀れな定めの者よ、おまえたちは泣き悲しむだろう。
フェニキアよ、恐ろしい憤激がおまえを待ち受けている。そしておまえはついに 激しく崩壊するだろう。するとセイレソたちはいたく泣き悲しむだろう。
第五の世代に至ってエジプトの破壊が終わり、
恥知らずな王らが〔互いに〕交わる時が来るだろう。
5.460
またパンフリアの語族はエジプトに下って住むだろう。
ケドニアとアジアと(リビヤ人)の間では、
世界を狂気にする、血で砂を浸すほどの戦争が(起きるだろう)。
この戦争はローマの王と西の君主たちが鎮めるだろう。
雪の湿った冬の嵐が吹きすさぶ時、
大きな川も広大な湖も凍結すると、
たちまち夷狭の群れがアジアの地をみまい、
トラキア人の恐ろしい部族を赤子の手をひねるように滅ぼすだろう。
そしてその時には、心くじかれた人々が飢えのゆえに
憮倖しつつなお親を食い、その肉をむさぼるだろう。
5.470
すると屋根という屋根から野の獣が食卓を荒らし、
猛禽がありとあらゆる人間を食い散らすだろう。
また血に染んだ海はひどい戦争によって、
愚かな者らの肉と血で満ちるだろう。
その後、地にはかくも脱力感が広がり、
男の数も女の数も知ることができるだろう。
数知れぬほどの哀れな語族は地の果てにまで泣き叫ぶだろう。
七日がもうふたたび上らぬために沈み、
大洋の水に浸されるのを待っている時に。
なぜなら日ほ多くの人々の汚れた悪事を見たからである。
5.480
そして広い天にも闇夜があり、
浅くはない晴闇が世界のひだをふたたび覆うだろう。
そののち神の光が、
神を讃えた善き人々を導くだろう。
イシス、三重に惨めな女神よ。おまえはナイルのほとりに、
ただひとりでとどまるだろう。アケロンの砂浜に〔立つ〕、ことばもなく狂える女よ。
もういかなる地にもおまえの記憶はとどめられないだろう。
また汝、多くの削られていない石を負わせられたサラピスよ、
三重に惨めなエジプトにおけるもっとも激しい災疫が(おまえのために)備えられるだろう。
エジプトの着でおまえへの恋慕を抱いていた者は皆、
5.490
おまえのことをいたく泣き悲しむだろう。その時彼らは不滅の神を胸に受ける。
神を讃えた者らはおまえが無であることを知るだろう。
それからある日、祭司の中のひとりで麻をまとった者が言うだろう。
「さあ真の神の美しい神殿を建てよう。
さあ先祖から伝わる恐ろしいならわしを変えよう。
そのならわしによって石や陶器の神々に勤めと儀式とを行なっていた者らは〔何も〕理解していなかったのだ。
不滅の神をたたえつつ心を改めようではないか。
父なるかた、永遠から在るかた、
万物の主なるかた、真理なるかた、王なるかた、
5.500
すなわち命をささえる父、永遠にいます大いなる神を〔たたえつつ〕」と。
その日にはエジプトに荘大な、聖い神殿が立つだろう。
また神から生まれた民はそこへと犠牲を携えて行くだろう。
不滅の神は彼らに生きることを許されるだろう。
しかしトリバリ人の恥知らずな族を捨てて、悪玉エチオピア人が〔エジプトの地を〕耕すために〔とどまる〕時、
彼らは、残りのすべてのことが起こるために、悪を始めるだろう。
なぜなら彼らはエジプトの地にある大いなる神殿を略奪するであろうからである。
すると神は彼らに対し、地に向かって恐ろしい怒りの雨を降らせられ、
こうしてすべての悪しき者とすべての不法な者とを滅ぼされるであろう。
5.510
そしてもはやかの地には絶対にいかなる手控えもされないだろう。
なぜなら彼らは神が自分たちに与えてくださったものを守らなかったからである。
わたしは星の中に、輝く太陽の脅しを見、
また雷光の中に、月の恐ろしい怒りを見た。
星々は苦しみながら戦っていた。神は〔星々の〕戦うにまかせられた。
すなわち太陽に代わって長い火焔が反逆を起こし、
また月の両角は〔円輪〕に変じた。
明けの明星は「獅子」に乗って戦いを起こした。
「山羊」は若い「牡牛」の脛を打った。
すると「牡牛」は「山羊」の帰還の日を奪った。
5.520
「オリオン」は「天秤」がそれ以上とどまらぬように取り除いた。
「乙女」は「雄羊」にある「双子」の領分を変ぜしめた。
「スバル」はもう現われなかった。「竜」は「帯」を拒否した。
「魚」は「獅子」の帯の中にはいった。
「蟹」は耐えられなかった。なぜなら「オリオン」を恐れたからである。
「蠍」は〔一層倍荒々しい〕「獅子」の〔尾に〕登った。
また「犬」は太陽の炎によって滅んだ。
力ある明けの明星の勢いが「水瓶」を焼いた。
ウラノスみずから、兵士らを震わせるほど〔の勢いで〕騒ぎ立った。
彼は立腹して兵士らをまっさかさまに地に投げつけた。
5.530
すると〔今度は〕彼らはたちまちオケアノスの水槽に叩き込まれ、
全地に火をつけた。天空はいつまでも星の出ないままであった。
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