東日本大震災で被災した東北の漁師を支援しようと、明石浦漁協(明石市岬町)の漁師らが底引き網の漁船など7隻を提供することを決めた。後継者不足など漁業を取り巻く環境は明石も厳しいが、同漁協は「同じ漁師として励ましたかった」と話し、明石の漁船が被災地の復興に一役買うことに期待を寄せる。兵庫県漁業協同組合連合会によると、県内では浜坂町漁協(新温泉町)や姫路、淡路市などの漁協で約20隻が名乗りを上げているという。
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は4月初旬から、都道府県各漁連を通じて「余剰」となっている漁船の寄付や売却を要請している。4月末までに約150隻の情報が集まり、用途や年式などのデータを被災地の漁協に開示している。
明石浦で代々漁業を営む伊藤芳一さん(76)は所有する2隻のうち、底引き網漁の「明石丸」の寄付を決めた。エビ漁に使っていたが、昼すぎに出港して深夜に戻る日程や網の引き揚げが負担となり、昼間に漁に出る釣りに一本化。船は昨年末から使っていなかった。
16年前に明石丸を中古で購入し苦楽をともにしてきた。進水は約30年前というが、手入れを重ねて大切に使ってきたと胸を張り、「まだまだ十分に現役。お金なんか要らないから、明石丸で元気に漁をしてくれたらいいな」と笑顔で話す。
全漁連によると、被災漁協で希望の船が見つかれば、提供する漁協と直接交渉することになっている。
(中務庸子)
【特集】東日本大震災
(2011/05/12 15:45)
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