仕事上のストレスが原因でうつ病などになる人が増えるなか、厚生労働省は事業者に対し、すべての従業員にストレスに関する検査を受けさせるなどのメンタルヘルス対策を義務づけることを決め、今の臨時国会に法律の改正案を提出することになりました。
24日は厚生労働省の審議会が開かれ、法律の改正案が示されました。それによりますと、事業者はメンタルヘルス対策が義務づけられ、医師や保健師が行うストレスに関する検査をすべての従業員に受けさせることになります。さらに、従業員が希望すれば専門の医師の診察を受けさせるほか、医師の助言を受けたうえで勤務時間の短縮や部署を変えるなどの改善策を取ることも求められています。過剰なノルマや上司の厳しい叱責など、仕事上のストレスでうつ病などになり、労災を申請する人は年々増加し、昨年度、労災を申請した人は過去最多の1181人と、10年前のおよそ6倍に上っています。一方で、厚生労働省によりますと、従業員がうつ病などにかかるのを防いだり、重症化を食い止めるため何らかの対策をとっていたのは、去年の時点で調査した企業の半数にとどまっていて、企業のメンタルヘルス対策が課題となっていました。厚生労働省は、今の臨時国会に労働安全衛生法の改正案を提出し、早ければ来年の秋から実施したいとしています。
過剰なノルマや上司の嫌がらせといった仕事上のストレスが原因でうつ病などになり労災を申請する人は年々増加し、昨年度は過去最多となる1181人と、10年前のおよそ6倍に上っています。労災と認定された人も、昨年度はこれまでで最も多い308人となっています。厚生労働省が所管する労働政策研究・研修機構が去年、全国の5000余りの事業所を対象に行った調査では、うつ病などを患っている従業員がいる事業所は全体の57%に上る一方、専用の相談窓口を設けるなど何らかのメンタルヘルス対策をとっているのは半数にとどまっていました。このうちストレスに関する検査を行い、うつ病などにかかるのを防いだり重症化を食い止める対策を実施しているのは僅か21%でした。厚生労働省は「規模の小さな会社ほど専門的なスタッフがいないなどといった理由からメンタルヘルス対策が遅れている。今回の法改正によって、精神的な不調に陥る労働者の増加に歯止めをかけたい」としています。
従業員のストレスに関する検査について、厚生労働省は具体的な検査方法の例を示しています。最近1か月の心の状態や職場の人間関係などについての質問に答えてもらい、医師や保健師がストレスの強さを判断します。例えば心の状態を検査する項目では「何をするのも面倒」、「気分が晴れない」といった質問について4段階で評価していきます。そして、項目ごとの点数の合計が一定の基準を超えると、強いストレスがかかっていると判断されます。結果は従業員本人に通知され、希望すれば精神科医など専門の医師の診察を受けることができます。また、事業者側は、医師の助言を受け勤務時間の短縮や部署を変えるなど、必要な改善策を行うことになります。