年間ヨウ素(甲状腺)の実効線量2msv/yと年間セシウム実効線量5msv/yについての考え方を教えてください。
政府発表を信じて、三月中マスクなしで毎日外出や基準値超えの水道水を飲み、特に食材にも気にせずに暮らしてしまいました。
最近になり、家が関東のホットスポット地域にある事や福島県の方の尿から放射性物質が検出されて内部被爆を危惧する記事を読んで後悔しています。

ヨウ素の年間実効線量2mSvは、甲状腺の組織荷重(加重)係数0.04で割り算して、甲状腺の年間等価線量50 mSvに直します。この50 mSvとセシウム年間実効線量5mSvは、原子力安全委員会が定める指針「原子力発電所等周辺の防災対策について」の中で、飲料水、牛乳、野菜類等の中に含まれる放射性物質の濃度指標を決めるときに用いられた線量です。この指標は、飲食物中の放射性物質が健康に悪影響を及ぼすか否かを示す濃度基準ではなく、緊急事態が発生した時に防護対策として出す飲食物摂取制限措置を導入する際の目安と位置付けられているので、したがって、基準値や制限値ではないとしています。この指標算出ではICRPやIAEA等の考え方に準拠しています。つまり、これから導出された濃度を守れば、ヨウ素に対する甲状腺の年間等価線量50mSv(実効線量では2mSv)とセシウムに対する年間実効線量5mSvは守られることになり、予想される被ばく線量(予測線量)から回避できることになります。なお、甲状腺等価線量50mSvは、歴史的に放射線業務従事者の甲状腺の線量限度が500mSvであり、公衆の線量限度はその1/10とされてきたことに由来しているのではないかと思われます。甲状腺が障害を起こすとされる250mSvの1/5に配慮したとも考えられますが、その場合1/5の意味がが不明です。また、セシウムの5mSvは、通常運転時におけるICRPの公衆に対する年間線量限度1mSvを基準にしながら、生涯にわたる平均の実効線量が1mSvを超えない限りにおいて、特別な事情がある場合(今回のような事故)に年間5mSvという補助的な限度を数年間にわたって用いることが許される、という事に準拠していると回答者は考えていますが、確認したわけではありません。また、この「指標」が食品安全委員会の審議で暫定基準値として採用されたところは、ご承知のところかと思います。

市民団体の調査で、福島市の子どもたちの尿から0.41~1.3Bq(記事にはありませんが/Kg、でしょう)のセシウムが出たと報道されました。
この数字から内部被ばくの実効線量を逆算することはできないのでしょうか。
検査は連休に行った、と言うことですので、福島市への放射性物質の大量降下から20日後、と言うことになります。

7月2日の毎日新聞によれば、福島県内の市民団体などによる尿検査で、6~16歳の男女10人からセシウムが検出され、1リットル当たりの最大値はセシウム134(半減期2年)が1.13ベクレル、セシウム137(同30年)が1.30ベクレルとされています。ご質問の内部被ばくの実効線量への逆算ですが、放射線医学総合研究所が試算しており、子供が70歳までに受ける線量は、セシウム134が7.8マイクロシーベルト、セシウム137が8.9マイクロシーベルトとされています。

尿中濃度から預託実効線量の計算が下記にも記されています。

http://trustrad.sixcore.jp/bio-assay.html

チェルノブイリ原発事故に対する科学的論文を読むと子供の小児甲状腺癌と作業員の白血病以外は健康影響がないようにまとめてあります。
しかし例えば長野県松本市長の菅谷医師のような現地で医療活動した医師は子供の免疫力の低下など論文では検討されていない健康被害を訴えております。
またNHKのドキュメンタリーを見ますと公的なレポート以上の癌の増加や奇形の発生を現地の医師らは訴えております。どちらが真実なのでしょうか。
日本の子供たちを守る上で大切なことだと思います。

放射線が人体に及ぼす影響には、現時点で解らないことや不明確な事がまだまだ多くあります。個々のレポートはよく分析しないと判断できません。また、マイナーな意見や見解を排除するのもよくありません。その中には真実が述べられていることもあり得るからです。チェルノブイリ事故では、日本からも多くの研究者、医者、技術者などが行きましたが、彼らの接した範囲はそれぞれ限られており、従って、そこから得られた知見にも、一致したものやそうでないことも含まれています。したがって、世界中の学者が集まって議論した結果、学者の意見が分かれて一致が得られず、まだこれからの調査・研究を待つべきとされた事項については、研究の進展を待って判断するという態度がベターと思います。様々な意見・見解が流れる今の状況では、まず第1には公的なレポートを採用するが、しかし他の情報にも注意を怠らないようにする、というのが取り得る姿勢と考えます。

回答のなかで空間線量からセシウムの土壌汚染の予測をされておりますが、セシウム137だけの回答ですが、これはだいたいセシウム134とセシウム137の合計になるのでしょうか。
またチェルノブイリではセシウム137の土壌汚染や空間線量により避難区域が定められておりましたが、これは適正なのでしょうか。
適正だとすれば例えば空間線量が年間3ミリシーベルト以上では子供が避難、5ミリシーベルト以上では強制避難になっていたようですので、福島県や周囲でこれにあてはまる地域があるように思います。

このサイトでは、簡易的にセシウム137に着目して色々な計算をしていますが、おっしゃられるとおり、セシウム134からの影響もあります。

これまでのご質問の大部分は基準値を大幅に下回るところの線量評価であるため、セシウム137でお示しすれば十分納得いただけると考えております。(大雑把ではありますが、セシウム134による影響はセシウム137と同程度と判断してください。)

なお、今回の事故対応をチェルノブイリ事故時の対応と比較されておりますが、日本の行政ではこれまでのさまざま知見を基準にして判断がなされているものと考えます。

茨城県北在住です。今回の原発事故ではヨウ素、セシウム以外に、ストロンチウム、プルトニウム、キュリウムやアメリシウムが出ていますが、これらの健康影響はどのように考えれば良いでしょうか。
またプルトニウムなどの重金属はセシウムなどに比べて生物濃縮が起こりやすいように思われますがいかがでしょうか。
汚染水が海に漏れ出しており、魚での生物濃縮が心配です。

いくつかの放射性物質を取り上げられましたが、人体への健康影響を評価するには、放射能量(ベクレル)から放射線量(シーベルト)に換算する必要があります。ベクレルからシーベルトに換算する線量換算係数について数核種を挙げると、ストロンチウム-90:0.000028 mSv/Bq(1ベクレル当り0.000028ミリシーベルト、以下同じ表現)、ヨウ素-131:0.000022 mSv/Bq、Cs-137:0.000013 mSv/Bq、プルトニウム-239:0.00025 mSv/Bq、アメリシウム-241:0.00020 mSv/Bq、キュリウム-244:0.00012 mSv/Bqとなっていて、超ウラン核種のプルトニウム、アメリシウム、キュリウムの換算係数が他に比べて1桁大きくなっています。このことは同じベクレル数であれば、線量が1桁上がることになりますから、摂取基準値の方ではそれを考慮して厳しくなっています。いずれにしても人体への影響はシ-ベルトで表わされますので、それで判断することになります。生物の濃縮係数は、元素の種類、対象物(植物、軟体動物、甲殻類、魚)によって違います。1例として、魚の濃縮係数では、コバルトが650、亜鉛が3400、セシウムが48、プルトニウム2.55等が報告されていて、重金属が必ずしも濃縮係数が大きくはなっていません。

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