「東日本大震災の被災地に希望を与える完全試合だ」--。九回表、仙台市・JR東日本東北の森内寿春投手が最後の打者を空振り三振に打ち取り偉業を達成すると、3塁側スタンドは総立ちになって互いに抱き合った。
応援していた同社社員、滝沢享生さん(42)は「勝っただけでもうれしいのに、最高のプレゼントが付いてきた。東北の人たちも元気になると思う」。JRグループ会社社員で宮城県亘理町から来た葛西浩文さん(50)も「私も震災で自宅を津波に流された。完全試合を見せてもらって勇気づけられた。つらいことを忘れられた」と涙を流した。
チームは震災に伴う2カ月間の活動中止中、JR本塩釜駅(宮城県塩釜市)での駅舎清掃や、石巻市や利府町での給水活動など復興支援に取り組んだ。
野球部OBで、入社当時から森内投手を知る佐藤英俊さん(38)は「普段は純朴でまじめなタイプ。まさか完全試合をするとは予想もしていなかった。復興作業をした選手たちが練習不足のなかでよく頑張った」とたたえた。
開会式の選手宣誓で、野球ができる感謝を胸にプレーすることを誓った長谷部純主将は「東北に明るいニュースを届けることができた。みんなでつかんだ勝利」と話した。
完全試合を達成した森内投手は「うれしい。百点満点の投球ができたと思う」と笑顔。「応援ありがとうございました」の言葉にスタンドがまた沸いた。
毎日新聞 2011年10月24日 13時25分(最終更新 10月24日 13時35分)