韓国は、経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、電力消費全体に占める産業用電力の割合が50%を超える唯一の国だ。従って、停電は国家経済に真っ暗闇を招くわけだが、今回の事態における電力当局の対応を見ると(限り)、開いた口が塞がらない。「(断電および復旧)対象選路基準」という韓電のマニュアルには「大企業の生産基地の電力は切ってもいいが、観光ホテルや炭鉱の電力は切ってはならない」と書いてある。年間数十兆ウォン(約数兆円)に上る売り上げや輸出実績をはじき出し、数秒の停電でも数百億ウォン(約数十億円)の大損失を被るサムスン電子などの国家の重要生産施設が、観光ホテルよりも価値が低いという論理を、国民が納得するとでも思っているのか。さらに情けないことは、この時代錯誤的な「選路基準マニュアル」がいつ作られたのか正確に把握している当局者がいないという点だ。これについては「韓電が設立された50年前のもので、これまでそのまま放置されてきた」という信じられないうわさまでも出回っている。
指揮系統は空白で、関係機関は生き残りを掛けた責任回避に血眼だ。当局間の主張に食い違いが見られる上、正確なマニュアルさえもなく、国の経済を担う大企業の生産基地への電力供給は電力当局者の気分によっていつでも左右されるといった状態だ。こうした現実こそ、むしろ9月15日の大停電よりも恐ろしい内容ではないのか。今後いつ、またこのような停電が再発するか分からないからだ。
政府の発電供給量の推移を見ると、電力設備予備率は2013年に3.7%まで低下し、16年になってようやく10%を超える。つまり5年後にようやく電力不足から解放されるというわけだが、それまでわれわれは夏を4回、冬を5回と計9回の電力ピークを迎えなければならない。個人であれ、組職、政府、あるいは国営企業であれ、恐怖の火種を断ち切らない限り、少なくとも今後迎える9回の夏と冬は恐怖の季節として認識されることだろう。