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[2011年10月15日(土)]

【MLB】松井秀喜インタビュー「これだけ負けたのは野球人生ではじめて」

  • 阿部珠樹●文 text by Abe Tamaki
  • 西山和明(T&t)●写真 photo by Nishiyama Kazuaki(T&t)

今シーズン、日米通算500本塁打を達成した松井 日米通算500本塁打。二塁打日本人最多。今シーズンもさまざまな記録を作った松井。だが、記録に対して松井はいつもそっけない対応しか見せてこなかった。これだけのキャリアの選手になると、個人記録がプレイのモチベーションになることも少なくないのに、松井はむしろ、話題に触れられるのさえ好まないように思える。松井は記録についてどう考えているのだろう。

―― 日米通算の二塁打が日本人最多になりました。本塁打も500本を超えた。ともに素晴らしい数字だと思うのですが、あまり関心は持っていないのでしょうか。

「個人記録というのは全く考えませんね。皆さんが話題にされるのは分かりますが、自分が関心を持つことはない。なぜかって? うーん、僕は野球の個人記録についてひとつの考えを持っているんです。野球の個人記録は、公平性というものがないように思うんです。球場や対戦相手など、さまざまな条件が違う中で、選手ひとりひとりが記録を争うというのは公平性にかけるような気がするし、あまり意味もないように思える。もともとチームが勝つためにやっているのに、個人の記録を比べたって仕方ないでしょう」

―― でも、数字が語る事実というものもあります。たとえば、二塁打はメジャーに来てかえって増えている。それは、変化を意識しないという話と矛盾するようですが、意図的にメジャーに対応した結果ではないですか。

「ハッハッハッ。意識して二塁打を狙いにいくなんてことはしていませんよ。単純に、日本でホームランになっていたものが二塁打で終わっているということでしょう。意識の変化ということはありません。まあ、フェンスを越えなくなったなあという実感はありますが……」

―― では年齢などによる衰えを意識するようなことはあるのですか

「結果がそれを示しているということはあるかもしれませんが、自分では実感していません。だから、衰えを食い止めるためにこうするとか、こんなことをはじめてみたなんていうのはないですね」

―― 今年は松井選手にとって、はじめて経験するような苦しいことも多かったと思います。でも、そうした経験の中で、新たに野球の魅力を発見したなんていうことはありませんか。

「どうだろう、魅力というのが新たに見つかったということはないですね。ただ、ひとつ、今年になって発見したことがあります。それは負けると疲れるってこと(笑)。今まで負け越したシーズンは一度もなかったんです。これだけ負けたのは野球人生ではじめて。負けると疲れがたまっていくのが分かった。だからすごく疲れたシーズンでしたね」