大宮−名古屋 試合終了の瞬間ガッツポーズして喜ぶストイコビッチ監督=NACK5スタジアム大宮で(隈崎稔樹撮影)
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名古屋グランパスが逆転で大宮を下し、連覇に望みをつないだ。後半21分に一度はリードを許したが、同32分にFW玉田圭司(31)のゴールで追いつき、同39分にFWジョシュア・ケネディ(29)が決勝PKを決めた。首位・柏、2位・G大阪も勝ち差は変わらなかったが、残り4試合勝ち続けて吉報を待つだけだ。
怒りのあまりスーツを脱ぎ捨てたストイコビッチ監督が、いつの間にか元の姿に戻っていた。
後半32分、玉田の同点ゴールが決まると、ベンチ前で体を折り曲げ両手を握りしめ、絶叫した。地獄の一歩手前で踏みとどまった喜びと、次の1点を求める叫びだった。
「2点目が取れずに自分たちで試合を難しくしてしまった」という玉田が、ケネディのポストプレーから自身に渡ったボールを金崎とのパス交換後、起死回生のゴールを決めると、決勝点も背番号「11」の左足から。右からのクロスが、ケネディのPKを呼び、熱いバトルを決着させた。
昨年の13得点に並ぶシーズン自己タイ記録をマークした玉田は「常にゴールを狙っているけど、勝ってこそのゴールだからね」と胸をなで下ろす。
優勝争いの佳境に、下位に低迷する相手との試合を落とすところだった。闘莉王が頭で先制点を決めた後も、多くのチャンスをつくりながら、大宮を諦めさせることができなかった。
後半19分、21分に連続失点。同点のきっかけがケネディへの反則気味のプレーだったことから、ストイコビッチ監督は取り乱し、後半31分にケネディが絶好機にヘッドを外すと、ついに上着を脱いで暴れ、ぶち切れた。
ついに脱落か。そんなムードはわずか1分後の同点弾で消えた。「何があっても驚かないし、動じない」と闘莉王が言えば、中村も「アウェーで逆転されて、今までなら気持ちもなえがちだけど、今は全くない。残り15分だろうと何分だろうと、(ゴールを)決めようという気持ちは一緒」と、強い意志を、劇的な結果に結びつけた。
前後半1度ずつ好機を逃した玉田で追いつき、敗因になりかけたケネデイが締めくくる。フラフラしながら、終わってみれば、役者がしっかり仕事をした。「最後まで信じて戦った結果だ」。途中で崩れそうだった指揮官は、勝利をつかむと、スタンドにいる妻と娘に向かって誇らしげに両手を突き上げた。 (木本邦彦)
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