日本の12球団の経営課題は何か。 大坪正則・帝京大経済学部教授に分析してもらった。
フランチャイズ地域は福岡県だけでなく、実質的に九州7県に広がる。観客動員も年200万人を超えてリーグ首位。球場との一体運営も実現し、収入確保の態勢も整う。しかし、ダイエーからの球団買収時、本拠地球場に年48億円と高額な使用料を払う契約を締結。この支出が減らないと黒字化は難しい。
地域密着と球場の一体運営などで黒字化を目指す態勢は整った。ただ、埼玉県所沢市は人口約34万人と本拠地として小規模。さいたま市(人口約124万人)の球場でも一部試合を開催するが、ファン心理からは中途半端だ。赤字のまま、全国向けの広告宣伝として西武グループが球団を保有する意義は薄い。
2005年から外部人材を球団経営に登用して改革に乗り出し、翌年には、球場の指定管理者となって運営を一体化。勝ち試合の後にヒーローインタビューを球場内外で行うなど、観戦客がより長く球場周辺で過ごし、収益につなげる工夫をしている。改革の効果が一巡して出にくくなるこれからが正念場。
04年に北海道に本拠地を移転し、地域密着型の球団経営で成功している。親会社からの赤字穴埋めも定額の予算に切り替えて親会社をスポンサー企業と位置づけるなど、経営の意識改革も進んでいるようだ。最大の問題は本拠地・札幌ドームの営業権が持てないこと。札幌市などとの協力関係強化が必要だ。
破綻(はたん)した本拠地球場の運営会社を06年に親会社グループが買い取り、大阪で球場との一体運営を実現。ただ、阪神との競合は避けられない。ブルーウェーブ時代、阪神大震災後に「がんばろうKOBE」とユニホームに入れた神戸市民との一体感が、球界再編問題による混乱などで薄れたのは残念。
05年の参入時に本拠地球場の改修費全額負担と引き換えに、球場の営業権を獲得。初年度に営業黒字を達成して他球団に衝撃を与えた。球団保有による楽天本社への相乗効果も大きかったのではないか。課題は本拠地球場の収容人数が少ないこと。ただ、資金使途としては戦力強化が優先だろう。
※観客動員数は各リーグまとめ、カッコ内は前年比%、「▼」はマイナス。売上高は、巨人、広島、楽天は公表値、中日は愛知県が情報公開した決算資料、その他はGLOBEの取材・推定より。「―」は非公表。平均年俸は日本プロ野球選手会の調査結果より。外国人選手を含まない。
(笠井正基、琴寄辰男)
(文中敬称略)