日本の12球団の経営課題は何か。
大坪正則・帝京大経済学部教授に分析してもらった。
人口の多い中部圏で唯一の球団で、フランチャイズ制のメリットは大きい。恵まれた環境で本来は毎試合満員でもおかしくない。ファンサービスを向上させ収入増につなげるべきだ。巨人戦全国中継の減少で放映権料にはもう頼れない。親会社はナゴヤドームの運営会社にも出資するが、運営の一体化には課題が残る。
関西のファンにとって特別な存在であり、地域密着という点で他のチームとは別格。球団経営も熱狂的なファンに支えられている。逆に言えば経営として特に何もしなくても黒字になる日本で最も恵まれた球団だろう。阪神甲子園球場も親会社の阪神電鉄が所有しており、球場運営は実質的に一体化できている。
読売グループのテレビ事業拡大と表裏一体となった戦後の巨人人気がプロ野球を定着させたのは事実。だが90年代以降、資金力で巨人だけを強くしても、ファンも収入も増えないことははっきりした。12球団共同でのビジネスを伸ばした方が長期的には巨人のためにもなる。球界の改革をリードして欲しい。
全国に販売網を持つ親会社の広告宣伝にとっての意義は大きいだろう。ただ、巨人とのフランチャイズ地域の競合は問題。同じ日に東京で2試合開催して野球ファンを取り合うのは、経営の観点からはマイナスだ。本拠地の神宮球場は歴史的に大学野球を優先していて、球団との一体運営は難しい。
昨年の決算もわずかながら黒字で36年連続の黒字。企業ではなく個人(マツダの創業家)が持つ唯一の球団で赤字補填は難しく、「ケチケチ経営」に徹して黒字にせざるを得ないのが実態だろう。選手の平均年俸も12球団で最も低く、現阪神の金本、新井貴ら高年俸選手の相次ぐFA移籍にもつながっている。
キー局とはいえ、関東地方を放送エリアとするTBSが、全国向けの広告宣伝として球団保有を続ける意義は薄い。巨人戦中継などでのメリットを当て込んだのかも知れないが、視聴率低迷で思惑が外れた形。TBSが赤字なら身売り話が出るのは必然。本拠地球場との一体運営ができていないのも大きな問題だ。
※観客動員数は各リーグまとめ、カッコ内は前年比%、「▼」はマイナス。売上高は、巨人、広島、楽天は公表値、中日は愛知県が情報公開した決算資料、その他はGLOBEの取材・推定より。「―」は非公表。平均年俸は日本プロ野球選手会の調査結果より。外国人選手を含まない。
1947年生まれ。70年、伊藤忠商事入社。米国駐在を経て米プロバスケットボールNBAの事業にかかわり、プロスポーツ経営を学ぶ。2005年より現職。著書に「メジャー野球の経営学」(集英社新書)、「パ・リーグがプロ野球を変える」(朝日新書)など。
(笠井正基、琴寄辰男)
(文中敬称略)