日本HP、オープンソースの次世代仮想化エンジン「Xen」に関する取り組みを明らかに
日本ヒューレット・パッカード(HP)は今年10月28日、オープンソースの仮想化エンジン「Xen」に関する取り組みについて発表した。米国HP研究所のISSL(Internet Server & Storage Lab)仮想化プラットフォーム担当主席研究員、トム・クリスティン氏が明らかにしたもの。
Xenは、英国ケンブリッジ大学で開発がスタートしたオープンソースの仮想化エンジン。x86プロセッサ搭載のマシン1台で複数のOSを稼働させる仮想マシン実行環境を構築できることから、ハードウェアの運用効率を高める仮想化技術として注目を集めており、現在、HPをはじめ、IBM、デル、サン・マイクロシステムズ、インテル、AMD、ノベル、レッドハットなどのベンダーが活動を支援している。
HPでは、同社が現在、提唱するユーティリティ・コンピューティング構想「アダプティブ・エンタープライズ」戦略を支える基礎技術の1つとして仮想化技術を位置づけており、将来的には、Xenを採用した製品の投入を見据えている。同社は、XenのソースコードのIA-64化を支援するなど、Xenの開発当初からケンブリッジ大学と共同で研究・開発のサポートを行ってきたという。
クリスティン氏は、「仮想化は、ユーティリティ・コンピューティングを実現するために不可欠な技術。そのため、サポートされるOSやサービスの種類の多さが重要なポイントとなる。Xenの最大の特徴は、ヴイエムウェアやマイクロソフトの製品に見られるプロプライエタリな仮想化技術とは異なり、オープンソースとして幅広いサポートが得られること。その点、当社が推進する仮想化とXenが目指す仮想化のアプローチはきわめて似ている」と説明した。
Xenの現行バージョンは「2.0」で、2006年半ばまでに次期バージョンの「3.0/3.1」がリリースされる予定となっている。現行バージョンでは、ネイティブに近いパフォーマンスの実現や、リアルタイムでのドメイン・マイグレーション機能などを提供しているが、次期バージョンでは、64ビットCPU(EM64T、AMD64、IA-64、PowerPC)のサポートをはじめ、インテルとAMDが進めるハードウェア仮想化技術(「Vanderpool」および「Pacifica」)の採用によるWindowsのサポート、制御/管理ソフトウェアの強化、VM(Virtual Machine)間のネットワーキングの最適化などが図られる予定だとしている。
さらに、クリスティン氏は、将来、ユーティリティ・コンピューティング以外にI/Oの仮想化、ネットワークの仮想化、ストレージの仮想化、自動的なリソース管理などにもXenの仮想化技術が適用されるだろうと予測した。
同氏は、「Xenの仮想化技術は、オープンソースとして中立的な機関によって管理される必要がある。OSの一部として統合されてしまうと、ライセンスや流通上の問題を引き起こす可能性が出てくるからだ。Linuxでさえこの問題は免れていない」と指摘したうえで、HPは、Xen向けの開発とサポートを目的にXenのロードマップを管理する動きを見せている営利企業のXenSourceとは相反する立場にあることを強調した。
一方、日本HPのマーケティング統括本部インフラストラクチュアマーケティング本部で本部長を務める清水博氏は、「Xenの由来は、ギリシャ語の“Xenos”(客、外国人、身内以外の人)の接頭辞で、guest OS、host OSという概念が込められている。しかし、何もない仮想の世界にリアルな物を作り出すというXenのアプローチは、形に意味はなく、その奥底に真理があるとする日本の禅の精神世界にも通ずるところがある。Xenに関する取り組みを日本で明らかにしたのは今回が初めてだが、今後はより多くの国内ユーザーにXenの“思想”を理解してもらいたいと考えている」と述べた。
(大川 亮/Computerworld.jp)