高町家リビング
「は?異世界合宿?」
「うん、テスト明けの4日間を使って知り合いのいる無人世界まで」
煉は、なのは達から異世界合宿について聞いていた。
「赤点取ったらいけないけどね~」
「マジですか?」
「まじ、マジ、大真面目だよ、あれ、煉君は勉強ダメなの?」
『ダメじゃないが、相棒は面倒くさがりだからな』
「あえて言おう!………勉強などカスであると!!」
なのはの質問にダンテが答え煉は何処かのお偉いさんみたいな台詞を吐く。
「駄目だよ、煉!」
「おわ!」
「ふぇ!」
「にゃ! 急にどうしたの、フェイトちゃん?」
「煉、今から私と猛勉強だよ」
「は?」
そのままフェイトは煉を抱きかかえ部屋に連れて行こうとする。
「ちょ!? フェイトママ、急にどうしたの?」
「温泉だよ……煉とお風呂のチャンスだよ!!」
「「あ~~~!」」
なのはとヴィヴィオは合点がいった様だ。
「なっ!? フェイトさんの煩悩全開じゃないですか!? ヴィヴィオ、なのはさん助けて」
「ゴメン、こうなったフェイトママは止められないよ、頑張って」
「うん、無理なの、勉強頑張ってね」
「そんな、爽やかな笑顔で送り出さないで、ダンテお前も何とか言えよ」
『相棒、こんな良い女の裸体が見れるとは、俺は初めて相棒のデバイスで良かったと思ったぜ』
「この、色ボケがぁぁぁぁぁぁぁ」
煉の魂の叫びが高町家に木霊した。
第十話 ブランニュー・ハート
「じゃあフェイトママ」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「……………………」
今日もわたしと、なのはママは出掛けます。
煉くんは朝からぐったり……フェイトママそんなに厳しかったのかな?
と、なのはママが言いました。
「そういえばヴィヴィオ、新しいお友達、アインハルトちゃんだっけ?ママにも紹介してよ」
「んー、お友達っていうか、先輩だからねー…もっとお話したいんだけど、なかなか難しくて…」
そう。
出会ったのは少し年上の女の子。
「あ…アインハルトさん!」
「…………………」
中等科の一年生、アインハルト・ストラトスさん。
「はい」
「ごきげんようアインハルトさん!」
「ごきげんようヴィヴィオさん」
アインハルトさんはすごく強い格闘技者で、真正古流ベルカの格闘武術、覇王流の後継者。
それから、ベルカ諸王時代の王様、覇王イングヴァルト陛下の正統な子孫。
わたしもこないだ試合させてもらったけど、まだまだ全然かなわなくって…。
できれば、今よりもっと仲良くなって、一緒に練習したり、お話したりしたいんだけど…。
「…ヴィヴィオさん、あなたの校舎はあちらでは」
「あ!そ、そうでしたっ!」
「それでは」
「あ、ありがとうございます、アインハルトさん」
なかなかうまくいかなかったり、
「……遅刻をしないように、気をつけてくださいね」
「…はいっ!気をつけますッ!!」
なにげない一言が嬉しかったり、
そんな一喜一憂の日々だけど、今はもうなくなってしまった旧ベルカの出身同士、『強くなりたい』格闘技者同士、
触れあえる時は、きっとあるから。
「……ていうかー」
リオは教科書を見ながら、
「今日も試験だよー!大変だよー!」
と嘆いた。
「そうなんだよね~~!!」
ヴィヴィオも嘆いた。
現在初等科も中等科も、一学期前期試験の真っ只中である。
しかし、リオはすぐ持ち直す。
「でも試験が終われば、土日とあわせて四日間の試験休み!」
「うん!楽しい旅行が待ってるよー」
コロナも同意した。
「宿泊先も遊び場も、もう準備万端だって!」
「「おおー!」」
「……………………」
ヴィヴィオからの知らせに感嘆するリオ、コロナ、。
因みに煉はまだ生ける屍のままだった。
今回の休日は、なのは達の引率で、友人達と一緒に異世界旅行に行くのだ。
「よーし、じゃあ楽しい試験休みを笑顔で迎えるためにッ!」
「目指せ百点満点!」
「「おーっ!」」
ヴィヴィオとリオは拳を上げた。
そこでヴィヴィオは、リオにずっと気になっていることを訊く。
「ところでリオ、あれ、どうしたの?」
と言ってヴィヴィオが見た先には、全身から炎のようなオーラを立ち上らせて勉強に励む、リュウトの姿があった。
「知らない」
『何か覇王ガールに勉強を見てもらってるらしいぜ……後は大方、男の欲望だろ……覇王ガールの水着が見たいとか、ノーヴェが誘うって言ってたしな』
「「「…ああ…」」」
ヴィヴィオ達は物凄~く納得した。
そしてリオも聞いてくる。
「そうだ、そういえば煉は何でぐったりしてるの?」
「昨日、フェイトママと二人で勉強してたんだけど」
「どんな事をしてたんだろう……ダンテ教えてよ」
『悪りぃなR指定だ ここからは青年誌が読める歳になってから出直しな……お子様には大人の世界は刺激が強過ぎるぜ?』
「大人の……世界……////」
「え? 嘘?………もしかして、もしかするの!?」
「はぅ////」
ダンテはいつもの様にジョークを言っただけなのだがコロナは顔を真赤にし、リオは脳内での妄想でしているようだ。
ヴィヴィオも、二人のことは気になって仕方ないのだが、ダンテの言う【大人の世界】という単語に耳まで赤くしてしまっている。
なのはとフェイトは、エリオとキャロに連絡を取っていた。フェイトが尋ねる。
「エリオ、キャロ、そっちはどう?」
「はい、さっき無事に引き継ぎが終わりました」
「予定通り、週末からお休みです!」
「そう、よかった!」
「じゃあ予定通りにみんなで行けるね。春の大自然旅行ツアー&ルーテシアもいっしょにみんなでオフトレーニング!」
「みんなで旅行、あたしも行きたかったッス~~!」
ウェンディは駄々をこねている。
「ノーヴェとスバルとリュウだけってズルいっス~~!」
「あーうるせーな…あたしらだって別に遊びに行くわけじゃねー、スバルはオフトレだし、あたしはチビ達の引率だ」
「俺は赤点を取らない様に勉強してる」
否定するノーヴェに突き放すリュウト。
そんな彼女に、ディエチはある物を見せる。
「とかいって、通販で水着とか川遊びセットを買ってるのをおねーちゃんが知らないとでも?」
「なんだ、そうなのか」
納得するチンク。
ノーヴェは慌ててディエチが出した荷物を取り上げた。
「おまえヒトのもの勝手にッ!」
「いや、発送データに中身書いてあるし」
ディエチは思わず苦笑するが、チンクともに言う。
「まあいいじゃない、ノーヴェはバイトも、救助隊の研修も頑張ってるんだし」
「まったくだ」
「だから遊びじゃねーって」
しがみついて駄々をこねるウェンディを鬱陶しく思いながら、ノーヴェは言った。
チンクは訊く。
「そういえばあの子……アインハルトも誘うのか?」
「そのつもり、これから誘うんだけどね」
というわけで…。
「合宿…ですか?」
早速アインハルトに連絡するノーヴェ。
「すみません、私は練習がありますので」
「だから、その練習のために行くんだって、あたしや姉貴もいるし、ヴィヴィオも来る、練習相手には事欠かねー、しかも魔導師ランクAAから、オーバーSのトレーニングも見られる」
「はい…」
「ついでに、歴史に詳しくておまえの祖国のレアな伝記本とか持ってるお嬢もいる、まぁたった四日だ、だまされたと思って来てみろって、つまんなかったら走り込むなり、一人で練習するなりしてりゃいいんだし」
「あの……」
「いいから来い!絶対いい経験になる!後で詳しいことメールすっから、とりあえず今日の試験頑張れな」
「……はい……」
アインハルトは断れず、ノーヴェに強引に押し切られた。ディエチはそんなノーヴェを見て言う。
「ノーヴェのああいう強引さって、つくづくスバルと姉妹だよねぇ」
「ああ……そうだな」
同意するチンク。
「うう、あたしも行きたかったってス~」
ウェンディは、まだ駄々をこねていた。
そして、試験期間終了。
なのはとフェイトは訊く。
「試験終了おつかれさま」
「みんな、どうだった?」
それに対して、リオ、ヴィヴィオ、コロナ、リュウトの順番で答える。
「花丸評価いただきました!」
「五人そろって」
「優等生ですッ!」
「今回もふっ、見たか、俺の実力」
そんな中、煉は真っ白になりフェイトの抱き枕と化していた。
「何だ煉は赤点か?」
『お前と相棒を一緒にするなよ』
「何だよ、見せて見ろよ」
リュウト達が煉の答案を見ると
「は?」
「120点?」
「これ、全部だ」
「煉、凄~い」
答案に問題の間違ったところの修正などにより満点+αをもらっていた。
『これがフェイトの力さ』
何故かダンテが凄く威張る。
「わーみんなすごいすごーいっ」
「これなら、もう堂々とおでかけできるね!」
拍手で褒めるなのはとフェイト。
「じゃ、リオちゃん、コロナちゃんは、一旦お家に戻って準備しないとね」
「「はい」」
「わかりました」
「おうちの方にもご挨拶したいから、車出すね」
「あ、じゃあ準備すませてわたしも行く!」
「あーヴィヴィオは待ってて、お客様が来るから」
「おきゃくさま?」
『いらっしゃったようです』
レイジングハートが来訪を告げた。
そしてやって来たのは…。
「こんにちは」
「アインハルトさん!?…とノーヴェ!」
だった。
「異世界での訓練合宿とのことで、ノーヴェさんにお誘い頂きました、同行させていただいても宜しいでしょうか?」
「はいッッ!もー大歓迎ですッ!」
ヴィヴィオはアインハルトの手を握り、何度も振って喜ぶ。
「ほらヴィヴィオ、上がってもらって」
「あ、うん!」
フェイトの言葉で我に返るヴィヴィオ。
「アインハルトさんどーぞ!」
「お邪魔します」
「お邪魔されます」
『リュウトの家じゃない』
『クレアの言う通りだぜ、純情男子、パニくり過ぎだろ?』
ヴィヴィオはアインハルトを招き何故か緊張してるリュウトはデバイス二機に突っ込みを食らう。
フェイトはノーヴェに耳打ちする。
「あの子が同行するって教えなかったの、正解だったね、ノーヴェ」
「はい」
「「こんにちはー」」
「はい!」
挨拶するリオとコロナ。
ヴィヴィオはアインハルトが座る席をはたいている。
「はじめまして…アインハルトちゃん。ヴィヴィオの母です、娘がいつもお世話になっています」
「いえ…あの、こちらこそ」
なのはも挨拶した。
「格闘技強いんだよね?凄いねぇ」
「は…はい…」
「ちょ、ママ!アインハルトさん物静かな方だから!」
「えー?」
「しゃ~、俺、復活………およ、アインハルトさん? 何故にここに?」
『帰って来るのが遅いぜ、相棒』
「は? 何の話だよ?」
リオがノーヴェに訊く。
「そういえば、スバルさんたちは別行動なんですか?」
「スバルとは次元港で待ち合わせ、ちょうど仕事終えてるころじゃねーかな」
湾岸警備隊隊舎にて。
「それでは司令!」
スバルはヴォルツ・スターンに報告する。
「スバル・ナカジマ防災士長、本日只今より四日間の訓練休暇に入ります!」
「おう、頑張ってこいや、今回の訓練は例の執務官殿も一緒だったか?」
「はい、ランスター執務官と一緒に、いろいろ鍛え直してきます」
本局、次元航行部第三オフィスにて。
ティアナは自分のデバイス、クロスミラージュに話しかける。
「オフトレとはいえ、本格的な戦闘訓練はちょっと久しぶりよね、気合い入れなきゃ!ヴィヴィオやアインハルト達にダメなところは見せられないし!」
『はい、マスター』
「でもその前に、このデータ整理を終わらせなきゃ」
『がんばりましょう』
場所は再び高町家に。
ダンテは煉にアインハルトの説明をする。
「ふうん、な~るほどね~」
『相棒…淡白だな』
「…………」
「何だよ、アインハルトさん?」
「い、いや、あ、あの、初めてお会いした時と随分違う方だなと」
ポン
ビクッ
煉はアインハルトの両肩に手をおく。
そして、
「忘れてくれ、頼むから」
アインハルトに頭を下げるのだった。
無人世界カルナージ、アルピーノ家。
なのはは人数が決まったので、連絡を入れた。
メガーヌ・アルピーノが応対する。
「じゃ、それで人数確定ね」
「はい!お世話になります、メガーヌさん」
「いいえ~♪じゃ待ってるわね~」
「ふふ…うふふ…」
ルーテシア・アルピーノは微笑んでいた。
そのまま、自分の相棒たる召喚獣に言う。
「ねぇ、ガリュー、わたし自分の才能がちょっと怖いかも」
その理由は、
「なんといっても今回のおもてなしは最高!」
らしい。
「レイヤー建造物で組んだ訓練場は陸戦魔導師の練習に!わたしとガリューの手作りアスレチックフィールドはみんなのフィジカルトレーニングに!」
ルーテシアの力説は、まだ続く。
「我が家の横に建築した宿泊ロッジも内外ともパワーアップ!」
設計は勿論ルーテシア。
「掘ったら出てきた天然温泉も癒しの空間にノリノリで改造ッ!!」
掘ったのか……一体何の為に?
「完璧!」
ルーテシアは自宅の屋根の上に立つ。
「元六課のみなさんもヴィヴィオ達も!我が家にどーんとおいでませーー!!」
大笑いするルーテシア。
そこへメガーヌが登場。
「ルーテシア~、スープの味見手伝ってー」
「はーいママ」
みんなで一緒のトレーニング&ツアー。
クリスとの遠出も初めてだし。
アインハルトさんが一緒だし。
「アインハルトさん、四日間よろしくお願いしますね」
「はい、軽い手合わせの機会などあれば、お願いできればと」
「はい!!こちらこそぜひッッ!」
これから四日間、素敵なイベントがはじまります!
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