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第五話 覇王
「質問すんなら、バイザー外して名を名乗れ」
「失礼しました、カイザーアーツ正統、ハイディ・E・S・イングヴァルト、【覇王】を名乗らせて頂いています」

ノーヴェに言われた通り、バイザーを外して名乗るイングヴァルト。

「噂の通り魔か」
「否定はしません」

イングヴァルトは街灯から降りる。

「伺いたいのは、あなたの知己である『王』達についてです、聖王オリヴィエのクローンと、冥府の炎王イクスヴェリア、あなたはその両方の所在を知っていると「知らねぇな」……」

ノーヴェはイングヴァルトの言葉を遮った。

「聖王のクローンだの冥王陛下だのなんて連中と、知り合いになった覚えはねぇ、あたしが知ってんのは、一生懸命生きてるだけの普通の子供達だ」

ウソではない。
ヴィヴィオもイクスも、実際にそうだ。

「…理解できました、その件については、他を当たるとします」

とりあえずこの事を保留にしたイングヴァルトは、もう一つ訊く。

「ではもう一つ確かめたい事は、あなたの拳と私の拳、いったいどちらが強いのかです」

要するに、自分と戦ってほしいという意味である。

「防護服と武装をお願いします」
「いらねぇよ」
「そうですか」
「よく見りゃまだガキじゃねーか、なんでこんな事をしてる?」
「…強さを知りたいんです」
「ハッ!馬鹿馬鹿しい」

次の瞬間、ノーヴェはイングヴァルトに膝蹴りを打ち込んだ。
イングヴァルトは腕を交差させてこれを受け止め、ノーヴェはそこへ右拳のスタンショットを食らわせる。
しかし、イングヴァルトはこれにも耐え抜き、衝撃で下がった。

(ガードの上からとはいえ、不意打ちとスタンショットをマトモに受けきった…)

ノーヴェは内心舌打ちする。

(言うだけの事ぁ、あるってか)

仕方がないと悟ったノーヴェは、自分のデバイス、ジェットエッジを起動させ、バリアジャケットを身に纏う。

「ありがとうございます」

イングヴァルトは、やっとその気になってくれた、と礼を言った。

「強さを知りたいって正気かよ?」
「正気です、そして、今よりもっと強くなりたい」
「ならこんな事してねーで、真面目に練習するなりプロ格闘家目指すなりしろよ!」

ノーヴェは言う。
単なる喧嘩馬鹿ならここでやめとけ、ジムなり道場なり、いい所紹介してやっからよ、と。

「ご厚意、痛み入ります、ですが、私の確かめたい強さは…生きる意味は…」

だがイングヴァルトは聞かず、

「表舞台にはないんです」

構えを取った。

(この距離で?空戦エリアル射砲撃ミドルレンジ?)

あれやこれやと思索するノーヴェ。

その間に、


イングヴァルトが目と鼻の先に来ていた。


「って!!」
突撃チャージ!!)

ノーヴェは慌てて回避するが、イングヴァルトの動きに翻弄される。

(速い!?違う、歩法ステップ!)

そして、ついにイングヴァルトの拳を食らってしまった。

「が……ッ!!」

倒れそうになるノーヴェだが、どうにか距離を取る。
直撃を受けたみぞおちを押さえるノーヴェへ、イングヴァルトは告げた。

「列強の王達全てを倒し、ベルカの天地に覇を成すこと、それが私の成すべき事です」
「寝惚けた事抜かしてんじゃねぇよッ!」

ダメージに耐えながら、イングヴァルトと打ち合うノーヴェ。

「昔の王様なんざみんな死んでる!生き残りや末裔達だって、みんな普通に生きてんだ!!」

二人は互いに距離を取った。

「弱い王なら、この手でただ屠るまで」

冷酷なイングヴァルトの言葉。

それを聞いてノーヴェの頭に浮かんだのは、ヴィヴィオとイクスの姿だった。








「このバカったれが!!」







怒りのノーヴェは光の道を生み出す魔法、エアライナーを発動し、

「ベルカの戦乱も聖王戦争もッ!」

イングヴァルトを撹乱。

「ベルカって国そのものも!!」

さらにイングヴァルトをバインド魔法で拘束。

「もうとっくに終わってんだよッ!!」

そのままエアライナーを使ってイングヴァルトに接近したノーヴェは、ローラー型のデバイス、ジェットエッジに魔力を乗せ、

「リボルバー・スパイク!!」

蹴りを叩き込んだ。

しかし、

「終わってないんです」

ノーヴェの蹴りは受け止められ、さらにバインドまでかけられている。
気付くと、ノーヴェ本人にもバインドがかけられていた。

(カウンターバインド!?どうかしてる…防御捨ててこのバインドを……ッ)

イングヴァルトはバインドを砕く。

「私にとっては、まだ何も」

そして、

「覇王…」

必殺の一撃を、

「断空拳!!」

打ち下ろした。

倒れるノーヴェ。

「弱さは罪です、弱い拳では……」

イングヴァルトはノーヴェに背を向ける。


「誰の事も守れないから」


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