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第四話 ストライクアーツ
聖王教会本部。
ここに来客があった。

「いよーっスオットー、ディード♪」
「久し振り」

現在聖王教会にて職務に勤しむ執事オットーとシスターディードに挨拶するウェンディとディエチ。

「ウェンディ姉様、ディエチ姉様」
「ふたりともごぶさた」

ちょうどお茶の準備をしていたオットーとディエチは、二人を椅子に座らせ、ディードが尋ねる。

「他の皆さんは?」
「チンク姉とリュウは騎士カリムとシスターシャッハんとこ、なんかお話だって」
「ヴィヴィオとノーヴェはイクスのお見舞い」
「イクス、元気っスか?」

ウェンディに訊かれ、

「健康状態には異常無し、静かにお休みだよ」

お茶をカップに淹れながら答えるオットー。

「陛下やスバルさんもよくお見舞いに来て下さいますし、きっと楽しい夢を見ておいでなのかと」

ディードも茶菓子を用意しながら言う。



その頃、ヴィヴィオとノーヴェは、とある一室にいる少女、イクスの元へお見舞いに来ていた。

イクスヴェリア。
ガレア王国の君主であり、冥王と呼ばれた少女。
彼女はマリアージュという生体兵器を無限に生み出す力があり、その力ゆえ、ずっと苦悩してきたのだが、とある事件の最中、スバルに救出され、彼女にとって望む世界を見た後、機能不全によって眠りについた。
その機能不全は現代の技術による修理ができないらしく、現在聖王教会の保護を受けた彼女は、いつ覚めるともわからない眠りについている。

ヴィヴィオはイクスが眠りにつく前に彼女と対話しており、それから友人になった。
以来、スバル達とともに、よくお見舞いに来ている。

「ごきげんようイクス、お加減良さそうだね?」

ノーヴェとセインが見守る前で、イクスの手を握って話しかけるヴィヴィオ。
イクスは依然として目覚めないが、その寝顔は、安らかなものだった…。





チンクとリュウトはカリム・グラシアの執務室で、騎士カリム、シスターシャッハに話をしていた。

「お話っていうのは……例の傷害事件の事よね?」
「ええ、我ながら要らぬ心配かとは思ったのですが…」

言いながらコンソールを操作して、写真を出すチンク。
写っていたのはイングヴァルト。

「件の格闘戦技の実力者を狙う襲撃犯、彼女が自称している『覇王』イングヴァルトと言えば…」
「ベルカ戦乱期…諸王時代の王の名ですね」
「はい、時代は異なりますがこちらで保護されているイクスヴェリア陛下や、ヴィヴィオのオリジナルである『最後のゆりかごの聖王』オリヴィエ聖王女殿下とも無縁ではありません」

そこまで言われて、カリムはチンクの言いたいことに気付いた。

「ヴィヴィオやイクスに危険が及ぶ可能性が?」
「無くはないかと、聖王家のオリヴィエ聖王女、シュトゥラの覇王イングヴァルト、ガレアの冥王イクスヴェリア、いずれも優れた『王』達でしたから…ああもちろん、かつての王達と今の二人は、別人ではあるのですが…」

慌てて両手を振るチンク。
が、

「ええ」
「それを理解しない者もいるという事ですよね」

カリムとシャッハは全てわかっていた。
シャッハは言う。

「とはいえ、『覇王イングヴァルト』は物語にも現れる英傑です、単なる喧嘩好きが、気分で名乗っているだけという可能性も大きいですよ」
「ですね」
「でも犯人が捕まるまで、イクスの警戒は強化するわ、ヴィヴィオについては……」
「それはこちらで、私と妹達が、それとなく」
「ああ、俺がヴィヴィオを守るよ」




「みんな、ごきげんよう~♪」

お見舞いを終えてきたヴィヴィオは、オットー達に挨拶する。

「ああ、これは陛下」
「陛下、イクス様のお見舞いはもう?」
「うんディード、いっぱい話したよ」
「あたしらはもう戻るけどお前らは?」

ウェンディとディエチに訊くノーヴェ。

「あーあたしも」
「私はもう少し」

ウェンディが同行し、ディエチは残ることになった。

「待ってくれ、俺も行くから~」

リュウトが走りながら合流する。

「陛下、よろしければこれを、自信作のビスケットです」
「わ♪ありがとオットー♪」
「んじゃ、あたしは三人を送ってくるなー」

セインに送られ、ヴィヴィオ、ノーヴェ、ウェンディは、オットー、ディードと別れた。





ノーヴェはヴィヴィオに尋ねた。

「しかしいいのかヴィヴィオ、双子からの陛下呼ばわりは」
「え?」
「前は、『もーっ、陛下って言うの禁止ーっ』……とか言ってたろ」
「あー…まあ、もう慣れちゃったし、あれもふたりなりの敬意と好意の表現だと思うし」
「あいつら、なんかズレてっからなぁ」


ヴィヴィオとノーヴェがそんなやり取りをしている間、セインはウェンディに言う。

「この後はいつもの『アレ』か、ん?ウェンディもやるんだっけ?」
「ま、ふたりにお付き合いっス」





ミッドチルダ中央市街地。
リオとコロナと煉は、待ち合わせをしていた。
「リオ!コロナ!煉くん!おまたせー!」
『そんな事ないぜ…俺らも今、来たとこだ……何処ぞの引篭りが中々動かなくてな』
「あははは、煉くんとリオノーヴェと初対面だよね?」
「うん、はじめまして!去年の学期末にヴィヴィオさんと友達になりました、リオ・ウェズリーです!」

元気よく挨拶するリオ。

「高町 煉だ…宜しく」
『相変わらず……挨拶のレパートリーの少ない奴だ…俺はデバイスのダンテだ…宜しく」
「ああ、ノーヴェ・ナカジマと、」
「その妹のウェンディっス♪」

二人も挨拶する。
さらに、コロナが紹介した。

「ウェンディさんはヴィヴィオのお友達で、ノーヴェさんは私達の先生!」
「よ、お師匠様!」

茶化すウェンディ。

「コロナ、先生じゃないっつーの!」

ノーヴェは否定するが、

「先生だよねー?」
「教えてもらってるもん」
「先生って伺ってます!」

三人に言われ、

「ホラ」
「…うっせ」

照れるしかなかった。

『照れた顔もキュートだな』
「お前、馬鹿だろ?」

ノーヴェをキュートと言うダンテに対して煉は突っ込んだ。



中央第四区公民館。

ヴィヴィオ達はストライクアーツという格闘技の練習をするため、練習着に着替えていた。

「でもやっぱ意外~!ヴィヴィオもコロナも文系のイメージだったんだけどなぁ、人は見かけによらないよね」

言ったのはリオ。

「文系だけど、こっちも好きなの」
「わたしは全然、エクササイズレベルだしね」
「ほんと~?」

着替えながら談笑するヴィヴィオ、コロナ、リオ。
そこへ、ノーヴェが来た。

「さ、いくぞー」
「「「はーいっ!」」」

元気よく返事をし、早速練習に入る。
ヴィヴィオ達。

「へー!なかなかいっちょまえっスねぇ」
「だろ?」

ストライクアーツはミッドチルダで最も競技人口の多い格闘技であり、広義では『打撃による徒手格闘技術』総称でもある。

「でもヴィヴィオ、勉強も運動もなんでもできてすごいよねぇー」

ヴィヴィオに拳を放つリオ。

「ぜーんぜん!まだなんにもできないよ」

言いながら受け止めるヴィヴィオ。

「自分が何をしたいのか、何ができるのかもよくわからないし」

そのまま、ヴィヴィオはリオと軽く打ち合う。

「だから今はいろいろやってみてるの」
「そっか」

リオはヴィヴィオの蹴りをかわす。
ヴィヴィオは一度打ち込みをやめ、言った。

「リオとコロナと、リュウくんに煉くんといろんな事、一緒にできたら嬉しいな」
「いいね!一緒にやってこう!」

同意するリオ。
コロナも柔らかな笑みを浮かべた。

その時、声援が上がった……ヴィヴィオ達が見ると煉とリュウトがいた。






ヴィヴィオたちが二人に気づくちょっと前。

「本当にやるのか?」
「ああ、行くぜ!」


そう言ってリュウトは高速で後ろに回り込み煉の足もとに水面蹴りを放つ。

「気が進まないな!」

煉はそれを軽々と前に一歩だけ素早く進み避ける…そして目の前から消えた…

「なっ!!」

さすがに目の前で姿を消されたのは初めての体験だったのかリュウトは驚いた… 
そして…

「がっ……」

リュウトはその場で倒されていた。
そしてリュウトは先ほど自分がやろうとしていたことをそのまま煉にやり返されていたことに気付いた。

「つぅ……いやらしい真似してくれるじゃねぇか、煉!」

「リュウトは油断しすぎだろ?
てか何で俺が……ああ、面倒だ」

そういって面倒くさがる……煉。

「いや、お前はヴィヴィオの事をどう思ってるのかと思ってさ?」

リュウトは構え直して煉の言葉に答える。

「どうって……ただの親戚だろ?」
「いや、俺が聞きたいのは可愛いとか、そう言うので……」

リュウトは煉に今度は真正面から突っ込む! 

「安心しろ、お前と違ってよく分からん!」
「そりゃ、威張る事じゃねえだろ!?」

リュウトは拳を超高速で煉を連打する。

「だろ?」
「俺さ、お前の事が嫌いじゃないぜ?」
「いきなり何の話だよ?」

煉はそれを手刀で、拳で、手のひらで打ち払い・打ち合い・受け止める。
………この二人は話してる事はほのぼのしてるが試合は真剣マジだった。

「だからさ、お前とも仲良くなってお互いを高めて行けたらって思ってる」
「何だ? ライバル宣言と受け取ってもいいのか? ふんっ」

煉がリュウトの両手を掴み……強烈な蹴りを腹に放ってきた。

「ぐがっ……」

壁まで突き飛ばされるリュウト。

「良いぜ、その宣言、受けてやるよ」

煉はリュウトの目の前に行きそう言った。



「信じられねえ、うちのリュウとまともに試合してやがる」
「尋常じゃないッス」

ノーヴェとウェンディは煉がリュウトと試合してるのを見て驚いてる。

「すご~い、煉くん、あのリュウトくんと戦ってる」
「煉、強~い、ヴィヴィオ、煉は何かやってるの?」

コロナは感激しリオはヴィヴィオに尋ねる。

「なのはママが言うには御神流って言う流派を体得した剣士って言ってたけど」

などとヴィヴィオ達が話していると

「痛え」
「これでも加減したんだがな」

リュウトと煉が帰って来た。

「凄いね、煉くん、強かったんだね」
「本当に凄いな、私にも教えてよ」
『オイオイ、お嬢ちゃん達そいつはチョット違うぜ』
「ダンテの言う通りだ……リュウトは本気を出してない……てか、出されたら今頃はミンチだ」
「「えっ!?」」

煉の言葉に驚くコロナとリオ

「良くわかったな、煉……でもお前も本気じゃねえだろ?」
「俺はあくまで、刀を使った剣術が主体だ…拳なんて余程の事がないと使わないさ」
「良いね~、剣士か……試合ってみたいな」
「そうだな……その時はお前の技の一つも見せて貰うとするか」
「ああ、望むところだ!」

何故か煉とリュウトは男の友情に目覚めた。


「さてヴィヴィオ、あたし等もぼちぼちやっか?」

ノーヴェがヴィヴィオに声をかける。

「うん!さー出番だよクリス!」

右手を上げて応えるクリス。

「セイクリッド・ハート!セット・アップ!」

ヴィヴィオは大人モードになった。

「すみません、ここ使わせてもらいまーす」
「失礼しまーす」

お願いして周囲の人々に場所を空けてもらう二人。

「なんかふたりとも注目されてない?」
「ふたりの組み手凄いからねー、リオもきっと、ちょっとびっくりするよ」
「いくよ、ノーヴェ」
「おうよ!」

静まりかえる練習場。

先に仕掛けたのはノーヴェだった。
繰り出されるハイキックとアッパー。
ヴィヴィオはこれをかわして右ストレート。

「ふたりとも、やるもんっスなぁ」
「はい!」

ヴィヴィオとノーヴェ、互いの蹴りがぶつかり合った。






時刻は夜。

ヴィヴィオ達は練習を終え、公民館から出た。

「今日も楽しかったねー」
「てゆーか、びっくりの連続だよー」

楽しげに話すヴィヴィオとリオ。
と、ノーヴェがウェンディに頼む。

「悪ィ、チビ達送ってってやってくれるか?」
「あ、了解っス、なんかご用事?」
「いや、救助隊、装備調整だって、じゃ、またな」
「「「「「おつかれさまでしたー!」」」」」

ノーヴェと別れる五人。
そこに、煉にメールが来た。
メールを見た煉は青ざめて

「俺、ジョギングしてから帰る」

それだけ言って猛スピードで何処かに消えた。

「あっ、これノーヴェ姉の携帯、俺、届けて来る」

リュウトはノーヴェを追いかけて行った


「ただいまー」

ヴィヴィオは帰宅した。

「おかえりーヴィヴィオ」

なのはが迎える。

「ママ、これからお風呂?」
「うん、いまフェイトママが入ってるから、そのあとにね」
「ほんと!?それじゃあ……」

ヴィヴィオの顔が輝いた。





フェイトはシャワーを浴びながら、通信でシャーリーことシャリオ・フィニーノと、明日の打ち合わせをしていた。

「フェイトさん、今日も会議と臨検お疲れ様でした、明日も早朝からで申し訳ないんですが」
「ん、大丈夫」
「いつもの所までお迎えにあがりますので!」
「うん、お願いねシャーリー」

フェイトは通信を終わる。

「フェイトママ~♪一緒に入っていいー?」

今度はヴィヴィオの声が聞こえてきた。

「いいよー、いらっしゃーい」

フェイトは当然許可する。

「それじゃあ~……」
「「おじゃましまーす」」

ヴィヴィオとなのはが入ってきた。

「な……なのはもッ!?」

真っ赤になって慌てるフェイト。

「ヴィヴィオが一緒がいいって」
「フェイトママ、明日も早いんでしょ?一緒にいられる間は一緒にいようよー」
「…うん、そうだね……ってあれ? 煉は?」

ヴィヴィオの言葉に折れたフェイトは、ヴィヴィオの頭を撫でながらヴィヴィオに尋ねる。

「えっと、ジョギングしてから帰るって言ってたけど…どうしたのフェイトママ?」
「え~、一緒にお風呂に入ろうってメールしたのに!」
「あ~~!」

ヴィヴィオは何で煉が青ざめたのか……わかった気がした。

「フェイトちゃん、久し振りに髪の毛洗ってあげようか?」

なのはの発言に、フェイトは思わず胸を高鳴らせた。

「あー!わたしもー!」

ヴィヴィオも一緒に洗いたがった。





「それで、クリスみんなに大人気、かわいいって!」
「ほんと?」

ヴィヴィオ二人のママと一緒に湯船につかりながら、今日の事を話した。
フェイトはヴィヴィオに顔を近付け、こっそり訊く。

「みんな、クリスの正式名称については何か言ってた?」
「やっぱりねーとか、いい名前だねって」

すると、

「なーに、ふたりでナイショ話!」

なのはが水鉄砲を撃ってきた。

「やーん」

思わず顔をそむけるヴィヴィオとフェイト。

「あ…そういえばノーヴェ達が、今度ママ達にお礼したいって、こないだ本局を案内してもらったお礼だって」
「なんだ、そんなこと」
「気にしないでって言っといて」

それから、なのはは考える。

「でもほんと、ノーヴェ達もまっすぐ育ってくれてるよね」
「うん……ほんと」

フェイトも同意した。
少し前までは、ノーヴェ達とも敵同士だったのだから、それを思うと、今の状況は、まるで奇跡だ。





一方ノーヴェは、一人夜道を歩いている。

その時、


「ストライクアーツ有段者、ノーヴェ・ナカジマさんとお見受けします。」


突然彼女に声がかかった。
ノーヴェが驚いて振り返ると、すぐ近くの街灯の上に、

「貴方にいくつか伺いたい事と、確かめさせて頂きたい事が。」

イングヴァルトが立っていた……。


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