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第二話 セイクリッドハート
わたし高町ヴィヴィオは、ミッドチルダ在住の魔法学院初等科4年生。
公務員のママとふたり暮らしで、けっこう仲良し親子です。
たまにケンカもするけどね。
わたしのママ、高町なのはが、コンソールを打ちながら訊いてきます。

「ヴィヴィオ、今日は始業式だけでしょ?」
「そだよー、帰りにちょっと寄り道してくけど」
「今日はママもちょっと早めに帰ってこられるから、ばんごはんは4年生進級のお祝いモードにしよっか?」
「いいねー♪」

なのはママとそんな話をしていると

『へい、今日も美人だな、お二人さん』
「ふぁ~、お早うごさいまふぅ」
「およよう、煉君」
「おはよ~、ダンテ」

欠伸をしながら降りて来たのは高町
たかまち

れん
くんとデバイスのダンテ。
煉くんは、なのはママのお兄さんの息子で私の親戚…初めてあった時はフェイトママに凄く似てて驚いちゃった……ダンテは面白いデバイス。


「…さて、それじゃ…」
「うん」
「ふぁ~」

「「「いってきまーす!」」」

わたしとなのはママは、いつものようにハイタッチをしてから煉くは大きな欠伸をしてから出発しました。





St.ヒルデ魔法学院に着いたヴィヴィオは、煉と自分の教室を目指す。
と、

「ヴィヴィオ!」

彼女に声がかかった。
ヴィヴィオは振り向く。
そこにいたのは彼女の友人、コロナ・ティミルとリオ・ウェズリーだ。

「コロナ!リオ!」
「クラス分け、もう見た?」
「見た見た!!」
「三人一緒のクラス!!」
「「「いえーい♪」」」

嬉しくて三人でハイタッチする彼女達。

そこへ、

『へい、楽しそうだな、ヴィヴィオ、お友達も綺麗どころか…煉が羨ましいぜ』

ダンテがヴィヴィオに話かけてきた。

「「誰?」」

リオとコロナは煉を見て首を傾げた。

「私の親戚の高町煉くん…因みに今のは煉くんのデバイスの」
『ダンテだ…可愛い子ちゃん達、相棒共々よろしく頼むぜ』

ダンテはコロナとリオに挨拶する。

「あたしはリオ・ウェズリー宜しくね、煉、ダンテ」
「わたしはコロナ・ティミル、よろしくね、煉くん、ダンテ」
「よろしく、あと気持ちはわからなくもないけど、もう少し人目を気にした方が良いよ」
「「「え?」」」

言われて周りを見るヴィヴィオ達。
見ると、何人かの生徒が彼女達を見て笑っていた。
ヴィヴィオ達は顔を赤くする。

「そういえば、煉のクラスは?」

リオに尋ねられ、煉は答えた。

「君らと一緒だよ」
「ほんと!?」
「すごい!」
「四人一緒のクラスだ!!」

再びはしゃぐヴィヴィオ達。

「だから人目を気にしなって」
「そういえばさ、あいつも一緒なんだよ」
「あいつ?」
「「もしかして…」」

煉はあいつが誰だか分からず首を傾げた。
ヴィヴィオとコロナはすぐに察しがついたようだが………。

「ヴィヴィオーっ!!」

黒髪をポニーテールにした少年が走ってきた。
彼の名はリュウト・ナカジマ。
ヴィヴィオがお世話になっているナカジマ家の長男でヴィヴィオの幼馴染でもある。

「リュウくん!」

リュウトと同じように彼の名を呼ぶヴィヴィオ。

「おお、ヴィヴィオ!クラス分け見た!? 俺達、一緒のクラスだよ!!」
「そうなんだ!すごい!五人一緒のクラス!!」

再びはしゃぐヴィヴィオ。

「だから、人目を気にしろって…行くか」
『おい、相棒』
「俺は騒がしいのが苦手だ」

煉は呆れ気味に言った。





「はー終わった終わった!」

始業式を終え、リオは解放感から背伸びをする。

「それにしても、これからどんな授業があるか、楽しみだね!」
「…煩い」

実は、煉はよく喋る人間が苦手だ……本来マイペースで生きてる彼にとっては寡黙な奴の方が落ち着くらしい……何故かダンテは大丈夫らしいが。

それはそうと、コロナはヴィヴィオに尋ねる。

「寄り道してく?」
「もちろーん!」

ならばとリオは進言した。

「また図書館寄ってこーよ!借りたい本あるし」
「あ、でもその前に、教室で記念写真撮りたいな、お世話になってるみなさんに送りたいんだ、みなさんのおかげで、ヴィヴィオは今日も元気ですよ……って」
「マジマジ!ヴィヴィオ、俺も一緒に写って良いか!?」
「もちろんだよ、リュウくん!」
「じゃあ煉も一緒に…!」
「いや…俺は帰『へい、当然だぜ』ダンテ!?」
『人生は楽しんだもん勝ちだぜ、相棒』
「わかったよ……はぁ」
こうして五人は、教室で記念写真を撮った。





図書館。

「あ、メール返ってきたー」

ヴィヴィオの携帯端末から音が鳴り響く。
リオとコロナは言う。

「そういえば、ヴィヴィオって自分専用のデバイス持ってないんだよね」
「それフツーの端末でしょ?」
「そーなんだよー、うち、ママとレイジングハートがけっこー厳しくって…」

ヴィヴィオは、なのはとそのデバイス、レイジングハートが言っていたことを言う。

〔基礎を勉強し終えるまでは自分専用のデバイスとかいりません〕
〔それまでは私が代役を〕

「だって」
「そーかー」

コロナは苦笑した。

「リオはいーなー、自分用のインテリ型で」
「あははー」
『すみません』

リオも苦笑し、彼女のデバイス、ソルフェージュは謝る。

「リュウくんはアームドだっけ、それもいーなー…」

ヴィヴィオはリュウトを羨ましがる。

「…デバイスねぇ…」

リュウトは自分のデバイスを見る。

『何? 私を見つめても何も出ないよ?』
「ああ、気にするな…クレア」

リュウトとクレアの間に沈黙が流れるが……

『んだよ、会話が続かねえな、お前等』
「ダンテ、煩いぞ」

ダンテが茶々を入れる。

「あははは、ところでダンテは何型なの、煉くん?」
「知らん」
「えっ、知らない?」
『ああ、相棒は一昨日初めてミッドに来たからな……デバイスの種類からしてまだベイビーたからな……因みに俺はアームドだせ』
「相変わらず……よく喋るな」
『根暗よりマシだろ?」
「「………………」」

二人はそのまま黙ってしまった。

(…重い!)
(空気が…!)
(あー…)

ヴィヴィオ達はなんとか話題を変えようと頭を捻る。
と、ヴィヴィオの端末から音が鳴り響いた。

「あ…丁度ママからのメールだ」
「なにかご用事とか?」
「あーへいきへいき、早めに帰ってくると、ちょっといいことがあるかもよ…だって」
「そっか」
「じゃ、借りる本決めちゃお!」
「うん!」

本を探しに入るヴィヴィオ達。
だが、リュウトと煉は黙ったままだった。

「リュウトくん!煉くん!」

コロナの言葉で、二人はようやく我に返る。

「ごめんコロナ…」
「悪い」

(何を考えてたんだろう…)
コロナはそう思った。





帰り。
校門で一人の女性が待っていた。

「あっ、ウェンディ」
「ヴィヴィオ、久しぶりッス」

彼女の名前はウェンディ・ナカジマ…リュウトの姉である。

「リュウ、迎えに、来たッス」
「一体どうしたんだウェンディ?今まで迎えなんてしなかったろ?」
「最近はこの辺りも物騒になってきたから万が一のことが無いようにッス」
「…わかった、じゃあ帰ろうぜ」
「あっ!買い物してからッスよ?」
「あいよ、つーわけだ、ヴィヴィオ、俺はもう帰る」
「うん、また明日ね!」
「ああ、また明日」

リュウトはウェンディとともに帰宅した。

「…じゃあ、わたし達も帰ろっか!」
「ああ」
「そーだね!」
「じゃ、また明日!」

ヴィヴィオ達は別れた。





実は、わたしはその昔、生まれ方関係でいろいろあったりした。
煉くんと同じで、なのはママとも血の繋がった親子ではないし、今は仲良しのみんなとも、ほんの数年前には本当に、本当にいろいろな事があった。

助けてくれたいろんな人たち。

わたしがわたしのまま、高町ヴィヴィオとして生きる事を許してくれた人たちのおかげで、

わたしは今、なんだかすごく幸せだったりします。

「たっだいまーっ!」
「おかえりーヴィヴィオ」
「あれ?フェイトママ!?」
「うん」
「バルディッシュも!」
『お久しぶりです』
「フェイトママ、艦の整備で明日の午後までお休みなんだ、だから、ヴィヴィオのお祝いしようかなって」
「そっか…ありがと、フェイトママ」
「お茶いれるから、着替えてくるといいよって…………私!?」
「俺?」

フェイトママと煉くんはお互い向き合って同じ動きをしてた。

「「似てる………」」
「ぷっ」
「フェイトママも煉くんも何をしてるの、可笑しい~」
「いや」
「だって」
「「ソックリだから」」
『お二人さん、言ってる事が一緒だぜ』




フェイトママは、なのはママの大親友。
9歳の頃からだって。
わたしがなのはママと親子になる時後見人になってくれて、その時なんだかわたしはフェイトママの事もママって思っちゃったらしくて…覚えてないよ!
ちっちゃい頃の事だもん。

以来ずっと、わたしには二人のママがいる状態。

まぁ、ちょっと変わってるけど、ふたりともわたしの大切なママです。





「ごちそうさまー!」

ヴィヴィオは夕食を終えた。

「さて!今夜も魔法の練習しとこーっと」
「あーヴィヴィオ、ちょっと待ってー」

なのはがヴィヴィオを呼び止める。

「ヴィヴィオももう4年生だよね」
「そーですが」
「魔法の基礎も大分できてきた、だから、そろそろ自分のデバイスを持ってもいいんじゃないかなって」
「ほ…ほんとっっ!?」

思わず自分の耳を疑うヴィヴィオ。
そんな彼女に、フェイトは箱を渡す。

「じつは今日、私がマリーさんから受け取ってきました」
「あけてみてー」
「うん!」

ヴィヴィオは期待を膨らませ、箱を開ける。
中に入っていたのは…

「うさぎ…?」

だった。

「あ、そのうさぎは外装というか、アクセサリーね」
「中の本体は、普通のクリスタルタイプだよ」

交互に説明するなのはとフェイト。
その間にうさぎは浮かび上がり、挨拶するように手を上げた。

「とっ…ととと飛んだよっ!?動いたよっっ!?」

驚いてママ達の後ろに隠れるヴィヴィオ。

「それはおまけ機能だってマリーさんが」
「あ…」

フェイトが説明して、うさぎはヴィヴィオの腕の中に収まる。

「色々とリサーチもしてヴィヴィオのデータにあわせた最新式ではあるんだけど、中身はまだほとんどまっさらの状態なんだ」
「名前もまだないからつけてあげてって」
「えへへ…実は名前も愛称ももう決まってたりして」

再びなのはとフェイトから説明を受けて顔をほころばせるヴィヴィオ。
と、ヴィヴィオはあることが気になった。

「そうだママ!リサーチしてくれたってことはアレできる!?アレ!!」
「もちろんできるよー」
「……?」
なのはは何のことかわかっているようだが、フェイトはわからないらしい。





その後、庭にて。
ヴィヴィオは新しいデバイスの登録を行う。
「マスター認証、高町ヴィヴィオ、術式はベルカ主体の混合ハイブリッド、わたしのデバイスに個体名称を登録、マスコットネームは【クリス】、正式名称【セイクリッド・ハート】」

ヴィヴィオは登録を終えた。
次はいよいよ初起動だ。

「いくよクリス」

ヴィヴィオの呼びかけに応えて、彼女の新たなデバイス、クリスが力強く右手を上げる。
そして、

「セイクリッド・ハート!セーーットアーーーップ!」

ヴィヴィオはクリスを掴み、起動させた。
眩いばかりの光に包まれるヴィヴィオ。
光が消えた時、
ヴィヴィオの姿はバリアジャケットを纏った大人の女性へと変わっていた。

『おう、やっぱ成長するとイイ女だな、煉、今から落としとけよ』
「黙れ色ボケ、スクラップにすんぞ」

ヴィヴィオの成長ぶりに茶々を入れるダンテと突っ込む煉。

「やったぁー!ママありがとー!」
「あー上手くいったねー」

無事に初起動が成功し、喜ぶヴィヴィオとなのは。
しかし、フェイトだけが喜んでおらず、そのままへたり込んでしまった。

「フェイトママ?」
「……あ」

なのはは重要なことを思い出す。だが、もう遅かった。

「なのは…ヴィヴィオが…ヴィヴィオがぁぁー!!」
『おわっ、いきなり何だ?』
「情緒不安定なのか…あの人は?」
「いや、あの、落ち着いてフェイトちゃん、これはね?」
「ちょ…!なのはママ!なんでフェイトママに説明してないのー!」
「いやその…ついうっかり」
「うっかりってー!」

こうして初起動は、大騒動に終わった。









「連続傷害事件?」

リュウトはウェンディから、今日、迎えに来た理由を聞いていた。

「そうッス被害届が出てないから、まだ事件扱いじゃないってチンク姉が…」

ウェンディの話では、最近格闘系の実力者が何人も街頭試合を挑まれ、完膚なきまでに叩きのめされているらしい。
ウェンディはリュウトが襲われることを心配して迎えに来たのだ。

「で、どこのどいつなんだ?」
「それがッスね…覇王…イングヴァルトって相手はそう名乗ってるらしいッス」
「覇王イングヴァルトといえば、古代ベルカ、聖王戦争時代にシュトゥラの国を治めていたっていう英傑…何でそんなやつの名前を…」
「チンク姉もわからないって言ってたッス」


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